注目のサステナブル素材とは?種類や特徴・ナイキなどの商品も紹介
事例 サステナビリティ入門
昨今、商品の製造や販売において世界中で注目されている「サステナブルな素材」。 日本においても店頭やオンラインショップなどで「サステナブル」の表記を目にすることも増えてきました。
サステナブルな素材とは、具体的にどのような素材を指すのでしょう?ただ「環境にやさしい」というイメージを持つだけでなく、私たちの生活と密着している素材だからこそ、種類やまつわる環境問題などに目を向けてみましょう。
そこで今回はサステナブル素材の種類や、環境問題、商品事例を紹介していきます。サステナブルな素材で作られた商品を購入したい方、サステナブルな商品を開発をしたい方も、環境問題とファッションに興味のある方はぜひ参考にしてみてください。
サステナブルな素材とは
環境や社会課題に配慮した素材のこと
サステナブル素材とは、環境や社会課題に配慮された素材のことです。
天然素材やリサイクル素材、アニマルフリー素材やフェアトレード素材など、さまざまな種類があります。 環境問題や社会問題への意識が高まりと共に、素材に注目しながら商品を選ぶ消費者が増えてきており、持続可能な商品開発をする際には、サステナブル素材の利用も考慮に入れると良いでしょう。
※サステナブルな商品を詳しく知りたい場合は以下の記事も参考にしてみてください。

衣類・繊維の環境問題と社会問題
サステナブルな素材が注目されるようになった背景の1つに、環境への影響があります。
国連貿易開発会議(UNCTAD)の調査では、アパレル業界は世界第2位の環境汚染業界だと指摘されました。衣服の生産には毎年、930億立法メートル (500万人の生存を可能にする量)の水を使用し、約50万トンのマイクロファイバー(石油300万バレル相当)を海洋に投棄しています。また二酸化炭素の排出量は国際航空業界と海運業界を足したものより多く、アパレル業界は環境汚染という課題を抱えています。
さらにアパレル業界で指摘されている問題は、環境にまつわるものだけではありません。2013年にバングラデシュの商業ビル「ラナプラザ」が崩壊し、多数の犠牲者を生む事件がありました。安い人件費を求め、バングラディシュには多くのファストファッションの縫製工場が置かれており、ビル内でも多くの人が縫製工場で働いていtなおです。中国の新疆ウイグル自治区で綿製品が強制労働で生産された疑いがあるなど、アパレル業界は社会問題とも密接に関わってしまっている現状もあります。

サステナブル素材の種類と特徴
次に、サステナブルな素材の種類とそれぞれの特徴を見ていきましょう。
オーガニックコットン
コットンはすべての農作物の中で最も水を使う作物です。コットン1kgの生産に必要な水は2万リットルと言われており、環境負荷が高い素材の1つです。また、栽培時の農薬による健康被害も問題です。コットンの生産には殺虫剤、枯葉剤など多くの農薬を使用します。世界自然保護基金(WWF)によると、コットンの栽培には世界で最も多く殺虫剤が使用されており、農業部門全体で毎年約 2 万人が殺虫剤中毒に関連して死亡していると報告されています。
一方で「オーガニックットン」は、農薬や追肥などの化学薬品を使用せず生産された素材です。また2017年のテキスタイル・エクスチェンジによる調査では、オーガニックコットンは従来のコットンより水の使用量を91%削減できると報告されています。
バイオマス素材
「バイオマス素材」は、生物の皮革や農産物などの動植物を原料とする素材です。トウモロコシのでんぷんやサトウキビのグルコース、トウゴマ等の植物油などが原料になります。原材料である植物は成長過程でCO2を吸収することでカーボンニュートラルとなるため、焼却時に排出するCO2が実質ゼロとみなされています。土の中で分解されることによって、環境中に残留して悪影響を与えないことからも、サステナナブルであるといえます。
バイオマス素材はジャケットなどの衣類以外にも、ブランド名の書かれたタグや洗濯タグ、ワッペンなどにも使われます。
再生セルロース繊維
「再生セルロース繊維」とは、植物を原料とした人工の化学繊維です。木材パルプのセルロース部分を薬品で溶かし、再度繊維にして作られたものです。
合成繊維の多くは、石油を原料に作られています。しかし石油は枯渇する可能性があるだけでなく、石油由来の繊維は焼却した際にCO2が発生する問題もあります。一方、再生セルロース繊維は植物から作られるため、サステナブルな素材といえるでしょう。
再生セルロース衣類は独特の光沢感、吸湿性・放湿性に優れているなどの特徴を持ちます。肌触りが良いことから、肌着やパジャマ、布団など直接肌に触れるものに使われることが多い素材です。
リサイクル素材
リサイクル素材とは、本来廃棄されるものを再生素材として活用した素材のこと。廃棄されるはずだったものを新たな製品の原料にすることができる点で、サステナブルであるといえます。
リサイクルポリエステル
リサイクル素材の代表には「リサイクルポリエステル」があります。リサイクルポリエステルは廃棄されるはずだったポリエステル製品(PETボトル、フィルムくず等)が原料です。
特にペットボトルは、衣類に使われるポリエステル繊維とほぼ同じ原料で作られる点などから、原料として使用されることが多いのが特徴です。
アニマルフリーな素材
非動物性で作られた素材を「アニマルフリーな素材」といいます。製品開発における動物実験をおこなっていないことも特徴です。ここ最近は毛皮や皮、ダウンを使わず、人工的な素材を使用するアパレルブランドも増加傾向にあります。
ヴィーガンレザー
「ヴィーガンレザー」とは、動物の皮を使用せずに皮の手触りや見た目を再現した素材です。従来の合成皮革などは石油を原料としていますが、ヴィーガンレザーは植物性原料が使われる特徴もあります。例えば、以下のような原料があります。
- りんご
- きのこ
- バナナ
- サボテン
- パイナップル
HERMESやadidasなど世界的ブランドでは、きのこレザーを使った商品を販売し、注目を集めました。動物愛護や環境保護などの理由で、ヴィーガンレザーを選ぶ消費者が増えています。
フェアトレードの素材
社会問題を解決するための取り組みの一つに、フェアトレードがあげられます。フェアトレードとは、発展途上国で作られた原料や製品を適切な価格で購入すること。立場の弱い生産者や労働者の生活水準の向上と自立を目的とする貿易方法です。
フェアトレードの素材には、オーガニックコットンをはじめ、手織りや刺繍などがあります。フェアトレードの取り組みは、食品だけでなく素材や衣類の分野でも増えています。
無水染色素材
「無水染色素材」とは、水を使わず染色された素材です。顔料インクをプリントし、乾燥させて染色を行います。ほかにも二酸化炭素を使った染色、綿花などを脱色せずに使う方法も「無水染色素材」といえます。
通常、繊維の染色には以下の過程で大量の水が使用されています。
- 生地の汚れ落とし(精錬)
- 染料を生地に定着させるスキーム
- 余分な染料・薬品の洗い流し など
またこれらの染色過程を通じて大量の廃液も排出されます。排水が適切に処理されない場合、そのまま海や河川に流れ出て環境に悪影響を与えてしまうことも問題として指摘されていますが、無水染色を用いることによってこれらの問題を解決することができます。
サステナブル素材を取り入れている商品例
環境や社会問題への関心から、サステナブルな素材を選ぶ消費者は増えているようです。その人気に伴い、大手アパレルブランドもサステナブル素材を積極的に使用するようになりました。
ここでは、実際にサステナブルな素材を取り入れているブランド・商品を紹介します。
ユニクロ:ダウンジャケット
ユニクロでは、今まで生地の30〜75%に再生ポリエステル素材を使った商品を販売していました。そして2020年12月からは、ダウンとフェザーを100%再利用した「リサイクル ダウンジャケット」を販売しています。
「リサイクル ダウンジャケット」は、2019年に店舗で回収した62万着のダウン商品から抽出されたダウンとフェザーを再利用して作られた製品。ユニクロは、日本を含めた世界21の国・地域で順次、回収キャンペーンを進めるとしています。
公式HP>ユニクロ

NIKE:シューズ
出典:NIKE「ナイキ史上最もサステナブル志向の高いパフォーマンスシューズナイキ エア ズーム アルファフライ ネクスト ネイチャー登場」(最終アクセス 2022/12/9)
NIKEは既存のプラスチックや糸、繊維を再利用することで、廃棄処分の際に排出されるはずだった二酸化炭素や、製品製造の際に消費されるはずだった資源を削減する取り組みを行っています。「Nike Flyleather」は見た目や手触り、香りまで天然革そっくりのフェイクレザーです。廃棄物として処理されるはずだったレザーを活用する再生レザー繊維を50%以上使用し、従来の革製法よりも二酸化炭素排出量も削減することができます。
また「Nike Air」のソール部分には、製造廃棄物のリサイクル素材が50%以上使用されています。加えて製造過程で使用するエネルギーは、100%再生可能エネルギーを使用しているため製造のサプライチェーンを通じて排出する二酸化炭素を大幅に削減することができます。
公式HP>NIKE
patagonia:アウトドアウェア
出典:Patagonia「メンズ・ジャクソン・グレイシャー・ジャケット」(最終アクセス 2022/12/9)
Patagoniaは「地球を救うためにビジネスを営む」を企業理念とするアウトドアブランドです。Patagoniaでは以下のようなサステナビリティに取り組んでいます。
- 製造ラインの72%でリサイクル素材を使用
- トレーサブル・ダウンを100%使用
- オーガニックコットンを100%使用 など
「トレーサブル・ダウン」とは、強制給餌やライブ・プラッキング(生きたまま羽毛を取ること)をしていないことを証明できるダウンのこと。Patagoniaがトレーサブル・ダウンを取り入れたのは、2007年からです。
公式HP>Patagonia
grünBAG:バッグ
出典:grünBAG JAPAN「BackPack」(最終アクセス 2022/12/9)
デンマークのバッグブランド「grünBAG」は、100%リサイクル素材を使用したバッグを販売しています。
grünBAGのメイン素材は、テントやトレーラーに使われていた防水シートです。廃棄されたシートベルトやペットボトル、救命胴衣なども素材として利用されており、素材そのものが持つ頑丈さとカラーリングを活かした商品であると言えます。
公式HP>grünBAG
まとめ
サステナブル素材は、環境や社会に配慮した素材のことです。環境問題や社会問題への意識が高まりとともに、素材に注目して商品を選ぶ消費者が増えています。
商品開発を行う際は、サステナブル素材の種類や特徴を理解し、自社で取り入れられる素材を探してみましょう。