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サーキュラーエコノミーとは?企業ができることから事例まで解説

事例 企業×サステナビリティ サステナビリティ入門
目次

かつて日本を含む先進国では、大量生産・大量消費・大量廃棄の経済モデルが長く続いてきました。しかし昨今では、環境問題への意識の高まりから「サーキュラーエコノミーに転換する」という考え方に注目が集まっています。 

今回の記事では、そもそもサーキュラーエコノミーとはどのような概念か、基礎知識を解説するとともに、サーキュラーエコノミーの実現に向けて企業が出来ることを、取組事例を含めて詳しく紹介します。

サーキュラーエコノミーとは

まずは「サーキュラーエコノミー」の意味と、その実現が求められる背景から解説します。 

持続可能な形で資源を利用する「循環経済」のこと

サーキュラーエコノミーとは、一言で表すと、持続可能な形で資源を利用する「循環経済」のこと。エレン・マッカーサー財団とよばれる国際的な団体が推進するもので、次の3つの原則が掲げられています。

  1. Design out waste and pollution:廃棄物・汚染などを出さない設計
  2. Keep products and materials in use:製品や資源を使い続ける
  3. Regenerate natural systems:自然のシステムを再生する 

(これらのうち1つ以上の項目に該当し、かつそれ以外の2項目に逆行しないことが、企業の“循環性”を評価するにあたっての条件とされます。)  

循環経済というと、サステナビリティへの着目から新たに生まれた概念のように受け取られがちですが、初めて「循環経済ビジョン」が策定されたのは今から20年以上前、1999年のことでした。1999年循環経済ビジョンでは、最終処分場のひっ迫などの課題に対応するために3R(Reduce・Reuse・Recycle)が本格導入され、廃棄物の削減とリサイクル率向上が進展してきたという歴史があるのです。 

サーキュラーエコノミーでは、これまでの3Rの取り組みに加えて、生産活動における新たな資源の投入量および消費量を抑えながら、サービス化などを通じて付加価値を生み出すことを目指しています。 

ちなみに、資源を循環するサーキュラーエコノミーとは対照的に、原料をもとに生産し消費した後、廃棄物を生み出すという従来型の経済活動は「リニアエコノミー」とよばれます。

サーキュラーエコノミーの実現が求められる理由

サーキュラーエコノミーの実現が求められるようになった背景には、世界的な人口増加や経済成長に伴う、さまざまな資源・環境問題があります。 

 ●エネルギーや資源、食料の需要増

 ●廃棄物量の増加

 ●地球温暖化をはじめとする環境問題の深刻化など 

これらの問題は臨界点に達しつつあり、持続可能な経済成長や社会を実現するためには、大量生産・大量消費・大量廃棄を前提とするこれまでの経済活動を変化させる必要があります。また、2050年までに「カーボンニュートラル」を達成するためには、これまで以上の環境負荷軽減が不可欠といえるでしょう。

こうした状況と、国や企業に対する環境配慮要請の高まり、デジタル技術の発展などを背景として、3Rの取り組みだけでなく「新たな資源の投入・消費を抑える」「廃棄を前提としない」という新しい経済成長のあり方が求められるようになったのです。 

またサーキュラーエコノミーの実現、及びプラスチックの資源循環促進のための法律として、2022年4月には「プラスチックに係る資源循環の促進に関する法律」が施行されました。この法律では、市区町村において製品プラの回収・再資源化は従来オプションであったものが、実質義務付けられた形となりました。法規制対応の観点からもサーキュラーエコノミー実現が求められるようになった例と言えます。 

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どこが変わった?プラ新法|プラスチックはえらんで減らしてリサイクル|サスティナビリティハブ

2022年4月1日から「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」、略して「プラ新法」が施行されました。 プラスチックのリサイクルに関しては、これまでも事業者・行政含めて既に様々な取り組みがなされており、各家庭からの分別収集も既に行われています。このプラ新法の施行によって、何が変わるのでしょうか。一緒に考えてみましょう。

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サーキュラーエコノミー実現に向けて企業ができること

サーキュラーエコノミーを実現するためには、企業にこれまで以上の“企業努力”が求められることになります。サーキュラーエコノミーの3原則を見据えた企業活動は、結果として企業の持続可能性を高めることにも直結します。 

例えば、「ユーザーがモノを所有する」という考え方から「共有する」ことを前提とした、シェアリング型のビジネスモデルへ転換した場合、比較的薄利となる場合が多いものの、安定的・継続的な収益の確保が見込めます。

また自動車やバイク、家電製品などのように生産活動に膨大な資源を必要とするものは、カーシェアリングのようなシェアリングプラットフォームを構築し大勢で有効に共用することで、生産の総量を抑えるとともにコスト削減や在庫を抱えることによるリスク低減などにもつながり得るのです。

このように、従来型のリニアエコノミーからビジネスモデルの転換を図ることが、SDGsの実現が求められる社会における「中長期的な競争力の確保」につながるほか、ポストコロナ時代における新たな競争力にもなり得ると捉えられています。

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近年、よく耳にすることが増えた言葉の一つでもある「サステナビリティ」。今回はサステナビリティの意味や現状と課題、企業が取り組むべき理由までを解説。実際の事例も踏まえて紹介します。

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なお、自社のビジネスに対して以下のような問いかけをすることで、サーキュラーエコノミーへの貢献のヒントが得られるかもしれません。 

  1. 自社の製品の一部をシェアすることで、利益が出せるビジネスにならないか?
  2. 現在、廃棄している資源をリサイクルに回すことで、利益が出せるビジネスにならないか?
  3. 製品の製造過程で資源やエネルギーの無駄はないか?それを回収して再利用することで利益が出せないか?
  4. 製品の寿命を伸ばす取り組みが十分なされているか?その取り組みで利益が出せないか? 

サーキュラーエコノミー実現に向けた企業事例

循環型の事業活動は範囲が広く、業界・業種ごとにさまざまな事例があります。そこで、今回は主に経済産業省の資料「サーキュラー・エコノミー及びプラスチック資源循環分野の取組について」に取り上げられた企業のサーキュラーエコノミーに対する取組事例を紹介します。 

トヨタ自動車:再生材の利活用に向けた開発をおこなう

出典:トヨタ自動車「6つのチャレンジ」(最終アクセス2022/12/9)

 トヨタ自動車では、「トヨタ環境チャレンジ2050」として日本で培われた廃棄物の適正処理方法やリサイクル技術をグローバルに展開し、循環型社会・システムの構築を目指しています。

また、樹脂をはじめとした再生材の利活用に向けた取り組みも実施。低CO2再生材の使いこなしと、供給量拡大のための技術開発などを推進しています。  

パナソニック:再生プラスチックの利用・工場廃棄物リサイクル率の向上に向けた取り組み


出典:Panasonic「パナソニック環境ビジョン2050」(最終アクセス2022/12/9) 

パナソニックでは2017年に「パナソニック環境ビジョン2050」を策定。ビジョン実現のため「グリーンプラン2021」とよばれる環境行動計画を定め、既存事業を循環経済と関連づけるマッピングをおこなうほか、工場から排出される廃棄物のリサイクル率99%以上を目指すなど、具体的な目標を掲げています。

取り組みの一環として、使用済み家電からプラスチック、鉄、銅などの資源を回収する取り組みなどをおこなっています。

サントリー:化石由来原料の新規使用ゼロの実現を目指す  

サントリーでは、「プラスチック基本方針」を策定し、「Recycle & Renewable」および「Reduce & Replacement」に取り組んでいます。 

具体的には、Recycle & Renewableとして、2030年までにペットボトル素材をリサイクル素材および植物由来の素材に100%切り替えること、リサイクルシステムの構築に政府や業界、各種団体と取り組むことを策定。 

Reduce & Replacementとしては、容器および包装の変更によってプラスチック使用量を削減することを策定しています。 

日揮グループ:廃プラスチック、廃繊維のリサイクル、次世代航空燃料SAFの取り組み

 

日揮グループでは、廃プラスチックのガス化リサイクルや油化リサイクル、繊維リサイクル、持続可能な航空燃料である「SAF」の製造といった幅広い事業を通じて、サーキュラーエコノミーの実現に向けて具体的な取り組みを進めています。

詳しい日揮グループの資源循環の取り組みはこちら  

これらの事例については当メディアに詳細を多く掲載しているため、ご興味がある方はぜひご一読ください。  

まとめ

サーキュラーエコノミーへの対応は、もはや単なる環境問題への対応ではなく、自社が今後生き残っていくための新たなビジネスモデルの構築ともいえます。まずは「サーキュラーエコノミー実現に向けて企業ができること」でご紹介した4つの問いから、自社のビジネスを循環経済に結びつける糸口を見つけてみてはいかがでしょうか。

日揮グループのサーキュラーエコノミーの取り組みについて興味があるお客さまは、ぜひ気軽にお問い合わせください。 

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サステナビリティハブ編集部
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