廃食用油を持続可能な航空燃料SAFに!――2025年の実用化を目指す

廃食用油を持続可能な航空燃料SAFに!――2025年の実用化を目指す

目次

    近年、持続可能な航空燃料「SAF」が、脱炭素化を実現する燃料として注目を集めています。2022年11月には、収集した廃食用油を原料としてSAFを製造・販売する取り組みが、実現に向けて動き出しました。プロジェクトをリードする日揮ホールディングス サステナビリティ協創部の西村勇毅氏が、YouTubeチャンネル「SDGs Biz」にて、その概要を紹介しました。

    (本文の最後に動画のリンクがありますので、ぜひご視聴ください)

    黒田さん西村さん対談シーン

    (写真右)日揮ホールディングス サステナビリティ協創部 プログラムマネージャー 西村勇毅氏 
    (写真左)揚羽 SXコミュニケーションプランニンググループ グループ長 黒田天兵氏

    航空業界の脱炭素化を実現する「SAF」

    食用油・航空機

    「SAF」とは、Sustainable Aviation Fuelの略で、「持続可能な航空燃料」のことをいいます。従来の航空燃料が化石燃料(原油)を原料としているのに対し、SAFは廃食用油・獣油や、サトウキビ・トウモロコシなどの非可食部分、間伐材、都市ごみ、微細藻類といった生物資源を原料としています。そのため、「従来の航空燃料と比べて、新たなCO2排出量を抑えることができる」と西村氏。

    同氏はSAFに注目が集まっている理由について、

    • 「航空燃料の脱炭素化の難しさ」
    • 「従来の航空燃料と見た目や品質が同じであること」
    • 「国際的な需要の高まり」

    の3つを挙げて以下のように説明しました。

    「航空機を自動車のように電気や水素で動かそうとすると、客席がなくなるほどの巨大なバッテリーを積む必要があるうえ、飛行距離も極めて制限されます。そのため航空業界は、脱炭素化を実現できる液体燃料を必要としているというわけです」。また「SAFは従来の航空燃料と見た目や品質が同じであることから、航空機、給油設備、空港などの既存のインフラを何も変えずにそのまま使用できるのが最大のメリット」だと強調します。さらに「欧州ではSAFの使用を義務化した国や義務化を予定している国が増えていることから、世界各国でSAFの需要が高まっているのです」。

    SAF実装にむけ、3社協創でサプライチェーン構築へ

    葉の上の飛行機2022年11月、廃食用油を原料とした国産SAFの製造や供給事業をおこなうための新会社「合同会社SAFFAIRE SKY ENERGY(サファイヤ スカイ エナジー)」が、日揮ホールディングス、コスモ石油株式会社、株式会社レボインターナショナルの3社により設立されました。

    原料となる廃食用油の調達をレボインターナショナルおよび日揮ホールディングス、SAF製造および販売をコスモエネルギーグループ(コスモ石油並びにコスモ石油マーケティング株式会社)、SAF製造設備に係る設計・調達・建設役務を日揮が担います。

    “3社協創によるサプライチェーン構築“という試みについて、西村氏は「全く違う業界のステークホルダーの方々をまとめ上げ、ともに同じ方向を目指す形をつくりあげていくプロジェクトマネジメントが一番苦労した点でもあり、自分たちの力を活かせたところでもあると思っています」と自信をのぞかせました。

    国産SAFの普及に向け「ACT FOR SKY」を設立

    出典:ACT FOR SKY

    2022年3月には、国産SAFの導入や普及・拡大を目的として「ACT FOR SKY(アクト・フォー・スカイ)」という団体を設立しました。航空会社、空港会社、石油元売り会社、食品会社、鉄道会社など、サプライチェーンを構成する24社が参画しています。主な活動として、国産SAFについての発信や啓蒙活動、メンバー間での情報共有や意見交換などをおこなう予定です。

    西村氏は「ACT FOR SKY」設立の目的について、「一括で大量に調達する石油などと違い、SAFの原料となる廃食用油は、色々な方々から集める形になります。ですから、なるべく多くの人に、SAFを知ってもらう必要があるわけです。そのため、サプライチェーンを構成する会社が集まり、発信力の最大化を目指しました」。

    “FRY to FLY Project”――資源循環と脱炭素社会の実現に向けて

    西村さんインタビューシーン

    「我々の目指すゴールは、資源循環しながら『脱炭素』を本当に社会実装していくことです」と西村氏は力を込めます。「その実現には、市民一人ひとりや、1店舗レベルでの取り組みが欠かせません。そこで現在企画をしているのが「FRY to FLY Project(フライ・トゥー・フライ・プロジェクト)です」。

    「プロジェクト名には『揚げ物を食べて空を飛ぼう!』という意味を込めました。廃食用油は家庭や店舗において、一定量は出てくるものです。まずは皆さんに関心を持っていただき、次に『廃食用油を提供することで脱炭素に貢献できる』ことを実感していただく。そして最終的に脱炭素・資源循環社会をつくっていければ」と展望を話しました。

    FRY to FLY Project | 持続可能な社会の実現に向けて (日揮HDホームページ内)

    2025年のSAF実用化を目指して

    新会社「SAFFIRE SKY ENERGY」では、国内初となる国産SAFの大規模生産を目指し、100%廃食用油を原料とした、年間約3万キロリットルのSAFの国内供給を実施します。 プラントの設計はすでに開始しており、2025年完工の予定です。

    「2025年には大阪・関西万博があり、プラントの場所は万博会場のすぐ近くです。このシナジーを発揮できるように、万博が開催される2025年までに『廃食用油から空を飛べる社会』の実現を目指しています」と西村氏は締めくくりました。

    ※バイオマス燃料の基本情報はこちらの記事をご覧ください。


    ※動画は下記リンクからご視聴ください。


    サステナビリティハブ編集部

    サステナビリティハブ編集部

    サステナビリティに関する情報を、日本から世界に発信していきます。