企業に求められるサステナビリティとは?意味や取り組みまで解説
企業×サステナビリティ サステナビリティ入門
近年、よく耳にすることが増えた言葉の一つでもある「サステナビリティ」。
なんとなく言葉は知っているものの、あまり意味を理解していない方も多いのではないでしょうか。今回はサステナビリティの意味や現状と課題、企業が取り組むべき理由までを解説。実際の事例も踏まえて紹介します。
サステナビリティとは
「サステナビリティ」の意味
サステナビリティ(持続可能性)とは、英語の「sustain(支える、持続させる)」と「-bility(可能性)」を組み合わせた言葉で、環境・社会・経済が持続的に発展する社会の実現を目指す考え方のことです。
特に現代は環境問題や貧困などの社会問題が深刻化しており、地球環境と人類を守るためには、短期的な行動ではなく中長期的な視点で発展することが必要不可欠です。「サステナビリティ」の言葉の広がりとともに、世界各国で持続可能な社会の実現に向けた動きが広がっています。
サステナビリティの3つの柱
サステナビリティが注目されたきっかけの一つに、2005年に行われた世界社会開発サミットがあります。サミットでは、「経済開発(Economic Development)」「社会開発(Social Development)」そして「環境保護(Environmental Protection)」の3つの方針が採択されました。
持続可能な社会の実現には、「経済活動」の推進だけでなく、経済活動で生じる「環境」や「社会」への影響も踏まえた行動が必要とされています。
サステナビリティとSDGs、CSRとの違い
サステナビリティと混同されやすい「SDGs」や「CSR」について、違いを説明できる方は少ないのではないでしょうか。ここからは、サステナビリティと混同されがちな用語についてその違いを解説します。
SDGsとの違い
SDGsは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の頭文字を取ったもので、持続可能な世界を実現するための国際目標のことです。目標とターゲットはすべての国、人々を対象としており「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを原則としていることが特徴です。
サステナビリティは持続可能な社会の実現を目指す考え方であるのに対し、SDGsは2030年を達成期限とする目標です。
両者の違いに興味のある方は、以下の記事も参考にしてみてください。

CSRとの違い
CSRとは、Corporate Social Responsibilityの略で企業が果たすべき社会的責任のことです。企業は大規模になるにつれ顧客や株主、従業員などステークホルダーが増え、社会におよぼす影響も増大します。CSRは、これらの社会的責任を社会貢献活動で埋め合わせる、という企業側の意味合いが強く、サステナビリティとは異なる意味で使われています。
【業種別】事例で見るサステナビリティ
各業界・業種でサステナビリティの実現に向けた取り組みが広がっています。ここからは、3つの業界のサステナビリティの事例を紹介します。
ファッション業界
「ユニクロ」や「GU」などのブランドを展開し、日本のファッション業界を牽引するファーストリテイリング。同社は、2017年の2月28日に「ユニクロ」の衣料品を生産している主要工場のリストを公開し話題となりました。公開のきっかけは、2013年に起きたバングラデシュの縫製工場の崩壊事件でした。1000人以上の従業員が死亡したこの事故をきっかけに、欧米アパレルブランドを中心に労働環境の改善を目指した業界団体が設立されました。ファーストリテイリングはこれらの動きに合わせて主要工場のリストを公開し、労働環境の改善をアピールしたのです。
同社は、2022年1月31日に公開した「サステナビリティレポート2022」において、重点領域の1つに「サプライチェーンの人権・労働環境の尊重」を掲げています。工場リストの公開は、大企業が率先してサステナビリティな社会の実現に寄与していることを示した好事例と言えるでしょう。
ファッション業界における「繊維リサイクル」については、こちらの関連記事をご覧ください。

食品業界
食品業界は長年、フードロスや中間業者の介在による生産者の低収入が問題として取り沙汰されてきました。例えばコーヒー業界は、原産国で取引されるコーヒー豆の値段と販売される国でのコーヒー豆の価格の開きが大きく、一説には生産者に支払われる金額は消費者が支払う金額の1%とも言われ、残りの99%は加工業者や小売業者に支払われています。
コーヒー原産国の多くはアフリカや中南米の発展途上国が多く、生活のために児童労働や劣悪な環境での労働が問題になっています。これらの問題を解決する手段として取り組まれているのが「認証コーヒー」です。認証コーヒーは、サステナビリティや生産者支援を目的に非営利団体や第三者機関によって認証されたコーヒーのことを指します。
認証コーヒーを代表するものに「国際フェアトレード認証」があります。生産者の生活を改善したり、自立を支援したりする上で必要不可欠な取り組みとして、認証コーヒーの拡充が広がっているのです。
食品業界におけるサステナビリティへの取り組みは、こちらの関連記事をご覧ください。

観光業界
観光業界でも持続可能な観光を実現する動きが広がっています。日本政府観光局は2021年、「SDGsへの貢献と持続可能な観光(サステナブル・ツーリズム)の推進に係る取組方針」を策定しました。地域の「環境」「文化」「経済」を守る・育むことを目的に、プラスチック使用量の削減や紙の宣伝印刷物等の削減、観光コンテンツの収集、責任ある観光の推進などが進められています。
北海道ニセコ町は、国際機関グリーン・デスティネイションズによる「持続可能な観光地 TOP100選」を2年連続で受賞しており、町全体で持続可能な観光の取り組みを進めています。自然エネルギーの活用やフードロス削減に向けた取り組みを進めています。また気候変動対策に関するグラスゴー宣言に署名するなど、観光分野における気候変動対策にも力を入れています。
なぜ企業はサステナビリティへ取り組むのか
とはいえ、企業がサステナビリティに取り組むには、まだハードルが高いと感じる方もいるかもしれません。企業がサステナビリティに取り組むべき理由を紹介します。
事業規模・範囲の拡大
企業がサステナビリティに取り組む理由の一つに、事業規模や事業範囲の拡大が見込めることが挙げられます。例えば、既存のビジネスモデルをサステナビリティにあわせて転換したり、新規事業を実施したりすることで、事業の成長につながることは少なくありません。

ブランドイメージの向上
企業としてサステナビリティに取り組むことによって、ブランドのイメージが向上する可能性もあります。社会でサステナビリティへの関心が高まる中、率先して持続可能性を模索する姿は多くのステークホルダーの目に留まります。
単に収益が生まれるだけでなく、その事業や企業そのものが存続することに価値がある、と見なされれば、ブランドイメージは大きく向上し、企業価値がより高まることが考えられます。また、持続可能性を基準に商品を選ぶ消費者も増加傾向にあるため、売上増加にもつながります。
従業員のエンゲージメント
サステナビリティの取り組みには、働く環境の改善も含まれます。そのため企業がサステナビリティの意識を高める取り組みを進めることで、自社で働く環境の整備も進むでしょう。また労働環境が快適になることで従業員のエンゲージメントが高まり、企業理念の定着や企業に対する愛着、所属感の強化も見込めます。こうした理由からも、近年サステナビリティに取組む企業が増加傾向にあります。
企業のサステナビリティ委員会設置について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

サステナビリティにはこんな課題も
一方でサステナビリティの取り組みには、まだまだ課題も山積みです。ここからは、日本におけるサステナビリティの課題を解説します。
2023年版世界のSDGsランキングで日本は21位
持続可能な開発ソリューション・ネットワークとベルステルマン財団によって発行されたSustainable Development Report2023のレポートでは「SDGsで掲げる17目標をどれだけ達成できているか」という視点で、国連加盟国全193カ国がランク付けされています。
レポート内で日本は193ヵ国中21位(2021年レポートでは165カ国の中で18位)に位置づけられています。アジア諸国の中では1位ではあるものの、欧州諸国に比べると低い順位に留まっています。その要因は、欧州諸国と比較すると取り組みが遅れている課題が多く、課題解決の法整備や行政主導の取り組みが行き渡っていないことが考えられます。
例えば「相対的貧困」や「女性国会議員の人数」「男女の賃金差」などは目標が達成されていない段階にあります。SDGsの期限である2030年までに着手すべき問題は多く残っており、官民連携での早急な問題解決が求められています。
サステナビリティは環境問題だけではない
サステナビリティは環境問題だけに焦点を当てたものではなく、ダイバーシティやインクルージョンの問題も包括して、持続可能な社会にしていくための概念です。
地球環境を持続させるという意味にとどまらず、私たちが誰も取り残されないための「平等」や「多様性」といった意味も含まれています。視野を広げて包括的にサステナビリティを捉えてみると、取り組める内容が明らかになってくるでしょう。
例えば、子育て世帯の負担を軽減するための福利厚生や労働環境を整備する取り組みもその一環と言えます。カーボンニュートラルを実現する新規事業に取り組んだり、投資したりといった取り組みもサステナビリティを実現するために重要なものです。
まとめ
企業でサステナビリティを推進するには、まずサステナビリティの本質を把握することが大切です。サステナビリティは環境問題だけに焦点を当てたものではなく、ダイバーシティやインクルージョンの問題も包括して、持続可能な社会にしていくための概念であることはおさえておきたいポイントです。
企業がサステナビリティに取り組むことは今や不可欠となりました。企業として持続的に成長していくためにも、サステナビリティの実現を企業の重要課題として取り入れることが必要なのです。