サステナビリティ委員会とは?役割や体制、取り組み内容を解説
企業×サステナビリティ サステナビリティ入門
SDGsなどを背景に「持続可能な社会の実現」が社会全体の課題として認識されるようになり、サステナビリティを意識した経営戦略を打ち出す企業が増えています。企業としてサステナビリティを推進するために、社内に「サステナビリティ委員会」を設置するケースも少なくありません。
今回はサステナビリティ委員会について、主な役割から体制、具体的な取り組み内容まで詳しく解説します。
サステナビリティ委員会とは
はじめに、サステナビリティ委員会の基礎知識を紹介します。企業によって異なる部分もありますが、一例として参考にしてみてください。
サステナビリティ委員会の役割
サステナビリティ委員会とは、一般に「企業」と「社会」の持続可能性の両立を目指し、サステナビリティ推進活動に取り組む専任組織として設置されるものです。これまで社内の部署や事業単位で取り組んできた施策や啓発活動を企業・グループ全体に展開し、更に取り組みを “強化・加速” させるための、中枢となる役割を持ちます。
社内での位置づけ・体制
経営判断にサステナビリティの視点を取り入れるために、多くの場合サステナビリティ委員会は、経営の中枢に密接にかかわる下部組織として位置づけられます。
例えば、サステナビリティ委員会で審議された事項が取締役会や経営会議などに定期的に付議・報告され、ディスカッションの場が持たれることも。また代表取締役(社長)がサステナビリティ委員会の委員長を兼任することで、幅広い組織が連携できる体制を構築しているところもあります。
更に、これらの中枢組織と現場をつなぐ役割として、サステナビリティ委員会の配下に「推進部」や「推進室」といった部署を設置している企業もあります。推進部が現場から吸い上げた実務レベルの現状や課題をふまえ、サステナビリティ委員会と経営層が連携して意思決定を実施することが一般的です。
国内外のサステナビリティ委員会の設置状況
サステナビリティ委員会を設置している企業は、どの程度あるのでしょうか。国内外の設置状況を見てみましょう。
日本の状況
2021年に、日経ESGが東証第一部等上場企業3,715社に対して実施したアンケートによると、取締役が参加するサステナビリティ委員会を「既に設置している」と回答した企業は、回答企業数948社のうち29.7%、「設置するかどうかを検討している」と回答した企業は39.9%におよびました。
出典:日経ESG「緊急調査 プライム希望8割超」(最終アクセス 2023/8/23)
両者を合わせると、約7割の企業がサステナビリティ委員会の設置に対して前向きな姿勢を示していることが分かります。また約4割の企業が検討段階にあることからも、今後更に設置企業が増えていくと考えられます。
一方サステナビリティ委員会を「設置する予定はない」と回答した企業は全体の29.5%でした。
同アンケートの問い「ESGの取り組みの課題」に対しては、「どのように情報開示すべきか知識・ノウハウがない」「必要な人員・予算が確保できない」などの回答も。企業の利益だけでなく環境や社会に目を向けた経営が “当たり前” のものとして根付くには、経営層のノウハウや知見の蓄積など課題が残るでしょう。
世界の状況
一方、アメリカではS&P100を構成する企業98社中33社(約33.7%)が、イギリスではFTSE100を構成する77社中33社(約42.9%)がサステナビリティ関連の委員会を既に設置しています。
出典:日本総研「【コーポレート・ガバナンス改革の展望】第6回」(最終アクセス 2023/8/23)
企業ではサステナビリティ委員会以外にも、財務やリスクマネジメントといった様々な目的に応じた委員会が設置されますが、サステナビリティ関連の委員会が増設の上位を占めており、注目度が高まっていると言えます。
サステナビリティ委員会の設置が進む理由
国内外の多くの企業で、サステナビリティ委員会の設置が進んでいるのはなぜでしょうか。主な理由として2つのポイントを解説します。
サステナビリティ推進にむけた社内体制の構築
多くの企業では役割に応じて部署やチームが設置されており、仕事内容や責任範囲が明確にされています。このような縦割り型の組織には、役割が明確化されるメリットがある反面、他部署の仕事に当事者意識をもちにくいという課題があることも事実です。
企業全体でサステナビリティ推進の方針を掲げても、各部署が独立していると活動が思うように進まないこともあるでしょう。そこで組織内での連携不足を解消するためにも、サステナビリティ委員会を中心に部署横断的な連携を生む体制が作られているのです。
さらに社内におけるサステナビリティ推進活動として、ハラスメント対策をはじめとした「多様性を認める、働きやすい職場づくり」も不可欠であることから、サステナビリティ委員会を設置し社内体制を整える企業も少なくありません。

ESG経営を実行するため
昨今、環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)の3要素を投資の判断材料として考えるESG投資が世界的に注目される中、これらを重視した「ESG経営」に取り組む企業が増えています。また、ESGと企業の稼ぐ力を両立するSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)とよばれる戦略も登場しました。
企業が環境や社会に目を向けた取り組みを推進することは、社会的信頼を得るためにも、持続的に事業を発展させるためにも不可欠となっているのです。
取締役が参加するサステナビリティ委員会を設置することで、ESG経営やSXへの取り組みについて対外的なアピールができるほか、経営の中核にサステナビリティの視点を入れられることも重要なポイントといえるでしょう。

サステナビリティ委員会の取り組み
サステナビリティ委員会の取り組み内容は企業によっても異なりますが、主に次のような取り組みが行われています。
サステナビリティ推進のための基本方針立案
サステナビリティ推進活動として取り組む、大まかな方針や戦略を検討し立案します。主なテーマとしては、気候変動や資源循環、環境汚染などをはじめとした環境問題や、人権・労働問題、地域社会への貢献などが挙げられます。
立案した方針を報告・付議し議論を行ったり、また経営方針や事業活動戦略に対してサステナビリティ観点からの提言を行ったりと、経営層との連携が重要なポイントとなります。
基本方針に沿った施策の推進
続いて「サステナビリティ推進のための基本方針を、自社の事業へどのように落とし込んでいくか」を検討し、実行していきます。例えば環境問題への取り組みとしては「事業で消費する電力を再生可能エネルギーへ移行する」、人権・労働問題への取り組みでは「ハラスメント対策の一環として研修を実施する」などが考えられます。
これらの施策を推進するにあたって、施策について現場のメンバーに説明し理解を得ること、必要に応じて方針や計画を修正することなども、サステナビリティ委員会の業務の1つです。
また既存の事業活動に対して、サステナビリティの観点からリスクを指摘したり、改善の提言を行ったりする場合もあります。
サステナビリティに関連する情報の開示
サステナビリティ推進のための基本方針および事業の推進内容を、ステークホルダーへ開示します。社内イントラや社内報へ情報を掲載するほかに、自社のホームページやパンフレットなどへの掲載、報告書の作成をおこないます。
開示した情報に対するフィードバックを、取り組みに適切に反映し改善・推進していくことも求められます。
外部有識者との対話
企業に対する社会的な要請を正しく理解し、サステナビリティ推進やESGの最新の動向を取り入れるために、投資家やNGO、大学教授といった多様な外部有識者と対話をおこなったり、国際団体に加入して連携を図ったりする場合もあります。
まとめ
サステナビリティ委員会は「企業」と「社会」の持続可能性の両立を目指し、サステナビリティ推進活動を強化・加速させることを目的とした組織のことです。国内外の企業で設置の動きが広がっています。
サステナビリティ委員会は、社内のサステナビリティ推進活動にまつわる意思決定機関として、基本方針や戦略策定、目標の進捗管理、施策の審議などを担うのが主なミッションといえます。サステナビリティ推進を企業の長期成長戦略の1つとし、目標達成に責任を持つ機関として委員会を機能させてみてはいかがでしょうか。