再生可能エネルギーとは?メリットと課題、推進の取り組みを解説
再生可能エネルギー サステナビリティ入門
環境に優しくクリーンなエネルギー源として期待されている「再生可能エネルギー」。
では、再生可能エネルギーとは具体的にどんなものを指すのでしょうか。今回は、再生可能エネルギーの基礎知識からメリットと課題、推進するための取り組みまで解説します。
再生可能エネルギーとは
そもそも再生可能エネルギーとはどのようなエネルギーなのでしょうか。具体例を交えつつ基礎知識を紹介します。
環境への負荷が小さく資源が枯渇しないエネルギーのこと
再生可能エネルギーとは、自然界に存在し繰り返し利用できるエネルギーのことです。発電時に地球温暖化の原因となるCO₂を排出しないため、環境に優しいエネルギーとして注目されています。
再生可能エネルギーの例
2016年に施行された「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用および化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律(エネルギー供給構造高度化法)」において、再生可能エネルギーは、以下の7項目が定義されています。
- 太陽光
- 風力
- 水力
- 地熱
- 太陽熱
- 大気中の熱その他の自然界に存在する熱
- バイオマス(動植物に由来する有機物)
それぞれの特徴、メリットと課題については以下の記事で詳しく解説しています。ご興味のある方は是非、ご覧ください。

再生可能エネルギーのメリット
再生可能エネルギーの導入にはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここからは再生可能エネルギーの主なメリットをご紹介します。
二酸化炭素を排出しない
二酸化炭素を排出しないのも再生可能エネルギーならではの特長です。
地球温暖化が進み、気候の変化による生態系への影響が問題になっています。再生可能エネルギーの導入が進むことで、温暖化の原因になる温室効果ガスの排出量を減らし、温暖化を食い止める効果も期待できます。
国内でも生産できる
再生可能エネルギーは、輸入に頼らざるを得ない石油や石炭、天然ガスなどと違って、国内で生産できることもメリットです。
出典:資源エネルギー庁「再生可能エネルギーとは」(最終アクセス 2022/12/9)
地域の特性に合わせて設備を作ることができる
再生可能エネルギーの発電設備は、自然環境を生かして地域の特性に合わせて建設できます。日照時間が長い場所であれば、太陽光発電が適しています。また、豊富な水量があれば水力発電に向いている環境と一般的には言えるでしょう。
欧州のような遠浅で一定の風が吹く広い海域には、洋上風力発電が向いていますが、日本においては同じような条件の海域は限られています。
また、大型の水力発電にはダムの建設が必要ですが、大型ダムの建設に適した立地は多くないため、「包蔵水力量」といってエネルギー利用可能なだけの水量を利用した「小水力発電」なども、岐阜県や富山県、長野県や新潟県で利用が進められています。このように各地域の特長を活かせるのも、再生可能エネルギーのメリットの1つと言えるでしょう。
再生可能エネルギーの課題
CO₂排出量を減らし、資源枯渇の心配がない再生可能エネルギー。とはいえ、再生可能エネルギーには、知っておくべき課題もあります。
自然状況に左右されるため発電量が不安定
自然界に存在する資源を利用するため、再生可能エネルギーの発電量は自然状況に左右されてしまいます。例えば、風力発電量は風の強さに依存し、太陽光発電量は太陽からの光の強さに依存します。風が吹かなければ風力発電はできず、雨が降れば太陽光発電はできず、エネルギー変換率も一定ではありません。
最小需要日(5月の晴天日など)の需給イメージ
出典:資源エネルギー庁「 日本のエネルギー 2020年度版 『エネルギーの今を知る10の質問』 」(最終アクセス 2022/12/9)
そのため、再生可能エネルギーだけで発電量をすべてまかなうのではなく、火力発電や原子力発電などを組み合わせて使い、発電量と消費量のバランスをとる必要があります。
発電コストが割高
発電コストが割高である点も課題です。例えば、非住宅向け太陽光発電システムを設置する際の費用を比較すると、太陽光パネルそのものや人件費などにより日本と欧州では約2倍の差があります。
さらに、日本の年間日照時間は平均で1,500〜2,500時間程度とされています。世界平均の約2,500時間程度とくらべ、日本は日照時間が短く発電設備の設置場所が限られています。こうした点も、発電コストに影響を与えています。

日本のエネルギー供給の現状と課題
資源エネルギー庁のデータによれば、2020年の段階で日本における再生可能エネルギーの発電電力量は、全体の18%にとどまっています。カナダでの割合は66.3%、ドイツやスペイン、イタリアなどでは30%超えであることを考えると、かなり低い数値です。
主要国の発電電力量に占める再エネ比率の比較
出典:資源エネルギー庁「日本のエネルギー 2020年度版 『エネルギーの今を知る10の質問」(最終アクセス 2022/12/9)
さらに、日本のエネルギー自給率は11.8%とエネルギー資源に乏しく、エネルギー供給を海外からの化石燃料に依存しています。
また、化石燃料は燃焼時に温室効果ガスを排出するため、化石燃料だけに頼らないエネルギー安定供給に向けた改善が求められています。
再生可能エネルギーを推進する取り組み
エネルギーの安定供給を目指すうえで重要な「再生可能エネルギー」。ここからは再生可能エネルギーを推進するための様々な取り組み事例を紹介します。
電力システムの改革
電力システムの改革とは、電力の完全自由化に向けて政府主導で進められている改革のことです。2013年4月2日に閣議決定され、主に「電力の安定共有」「電気料金の最大限の抑制」「需要家の選択肢や事業者の事業機会の創出」の目的で2013年4月2日に決定されました。
こうした取り組みによって、これまで地域ごとに独占的事業者が電力を供給していた仕組みを見直し、様々な事業者の参入や競争による電力の安定供給システムの構築が進んでいます。
再生可能エネルギーに関する制度変更
再生可能エネルギーの固定買取制度
再生可能エネルギーの導入コストを下げるため、普及を支援する制度が打ち出されています。例えば、「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」では、再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する制度です。この制度では「太陽光」「風力」「水力」「地熱」「バイオマス」の5つのいずれかを使って発電された電力が買取対象になります。
このほかにも、新しい制度も順次導入されています。
FIP制度の導入
2020年から新たにスタートするFIP制度がそのうちの一つです。FIP制度では、市場価格に対して一定の補助額を上乗せします。これにより、市場価格に連動して買取価格が上がるため、より安定した収益が得られるようになるメリットがあります。

開発効率化のための技術研究
再生可能エネルギーを効率的に利用するための技術研究も進んでいます。
たとえば、日本に多い火山地帯を利用した地熱発電は、ポテンシャルが高い分野として研究が進んでいます。井戸の掘削の速度を早めたり、成功確率をあげたりするための技術開発に取り組んでいるのがその一例です。
将来的に事業者が再生可能エネルギーを導入しやすくなるように、日夜技術の開発や研究が進んでいます。
まとめ
再生可能エネルギーは環境負荷が小さく資源が枯渇しないことから、社会を維持し発展させていくために重要な電源として注目されています。一方で、発電コストが高い、供給が安定しないなどの課題もまだ残っています。
これらの課題に関して国は政策を順次打ち出しており、これからも再生可能エネルギーの推進は加速するでしょう。環境を守るため、各企業の対応の必要性も高まってきています。