【2022年4月】FIT制度に加えFIP制度も|二つの制度の違いとは

【2022年4月】FIT制度に加えFIP制度も|二つの制度の違いとは

目次

    太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギーへの注目が高まるなか、新たに発電事業に参入する事業者も増えています。また近年ではSDGsやESG経営の観点から、事業用として再生可能エネルギーを導入する企業も少なくありません。

    今回は、このような再生可能エネルギー普及の背景にあった「FIT制度」について改めておさらいするとともに、2022年4月に始まった「FIP制度」の概要や変更点について解説します。再生可能エネルギーの発電事業へ新たに参入を検討している方は、是非参考にしてください。

    FIT制度とは

    FIT制度の仕組み出典:資源エネルギー庁「固定価格買取制度」 (最終アクセス 2023/8/23)

    FIT制度は「固定価格買取制度(Feed-in Tariff)」ともよばれる、再生可能エネルギーで発電された電力を、電力会社があらかじめ決められた価格で買い取る制度を指します。

    「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(通称:FIT法)」の施行にともない、2012年7月から運用が開始されました。制度の対象となる再生可能エネルギーは以下の5つです。

    1. 太陽光発電
    2. 風力発電
    3. 水力発電
    4. 地熱発電
    5. バイオマス発電

    再生可能エネルギーの買取価格の原資は、毎月の電気料金に上乗せされる形で国民が負担する仕組みになっています。

    FIT制度が導入された背景

    地球温暖化の問題が深刻化し、世界中で「脱炭素」に向けた動きが加速したことを背景に、発電時に二酸化炭素を排出しない再生可能エネルギーへの注目が高まっています。

    しかし再生可能エネルギーは設備導入や発電のコストが比較的高いため、導入がなかなか進まないという問題がありました。事業者を増やして普及を促進するためには、民間事業者が新たに参入できるよう障壁を引き下げなければいけません。 

    そこで、一定期間にわたってほかの電力よりも高値での買取を保証することで、事業者にとって収益の見込みが立てやすい状況をつくり、再生可能エネルギー発電事業への参入を後押しすることになったのです。FIT制度の導入によって、再生可能エネルギーが急速に普及し、2016年には2012年と比較して導入量が約2.5倍に達しました。


    2022年4月、FIT制度からFIP制度へ

    再生可能エネルギー

    これまで運用されてきたFIT制度に加えて、2022年4月に「FIP制度」とよばれる新たな制度がスタートしました。FIP制度とはどのような制度なのか、従来のFIT制度と何が変わるのか、詳しく解説していきます。

    FIP制度とは

    FIPとは「Feed-in Premium」の略称で、再生可能エネルギーの売電価格に一定の補助額(プレミアム)を加算することで、再生可能エネルギー市場の活性化を促進する制度です。 

    基準となる価格は「再生可能エネルギー由来の電力が効率的に供給される場合に必要となる費用」の見込みをベースに、あらかじめ定められます。あわせて、市場取引価格などに応じて期待される収入を「参照価格」として設定。この二つの価格の差「プレミアム」を電力を売った価格に上乗せした合計が、再生可能エネルギー発電事業者の収入となる仕組みです。

    FIP制度の仕組み出典:資源エネルギー庁「再エネを日本の主力エネルギーに!「FIP制度」が2022年4月スタート」 (最終アクセス 2023/8/23)

    参照価格は市場の動向などをもとに、1か月ごとに更新されます。

    FIP制度で変わること

    FIP制度が始まることにより、再生可能エネルギーの取引は大きく変わると予想されます。

    特に大きなポイントは、市場価格に連動して基準価格が変わるということ。これまでのFIT制度では売電単価が固定されているため、発電した電力をいつ売っても収入は同じでした。一方FIP制度では、売電価格が市場価格に連動するため、売電のタイミングによっては利益を拡大できる可能性もあるのです。

    FIT制度とFIP制度の違い出典:資源エネルギー庁「再エネを日本の主力エネルギーに!「FIP制度」が2022年月スタート」

     FIP制度の運用開始を背景に、再生可能エネルギー発電事業者には「発電した電力を一時的に蓄電池へ確保しておき、需要が高まるタイミングで売電する」など、季節や時間帯ごとの需給バランスを意識した供給の工夫が求められるようになります。

    蓄電池システムをはじめとした設備の導入はもちろんのこと、電力需要の予測精度を向上させることも必要になってくるでしょう。

    FIP制度に変わる理由

    再生可能エネルギー電力

    FIT制度は長年にわたって運用されてきた実績があるにもかかわらず、なぜこのタイミングでFIP制度が始まったのでしょうか。そこには大きく2つの理由があります。

    国民の負担軽減になる

    FIT制度では、電力会社が再生可能エネルギー由来の電力を買い取るコストの一部は「賦課金」とよばれる形で、電気料金に加算されていました。再生可能エネルギーの普及に大きな役割を果たしたこの仕組みでしたが、2021年度には制度による家計負担が1世帯あたり1万円を超えるなど、国民の負担が大きな課題となっていたのです。

    この課題を早急に改善するために、FIP制度導入は不可欠でした。FIP制度でもプレミアム額が国民負担によってまかなわれることになりますが、市場と連動することで入札による事業者間の競争が進み、コスト低減による国民負担の抑制につながることが期待されています。 

    電力システムの最適化・新ビジネスの促進

    再生可能エネルギー発電事業者は、電力需要を予測して売電のタイミングをうかがうことで、利益を最大化できる可能性があります。これにともない、市場価格や需給バランスに応じた売電・発電予測の精度が向上したり、電力システム全体のコスト低減につながったりと、電力の需給システムが最適化されることが期待されます。

    また小規模な再生可能エネルギー電源をたばねて需給管理を行い、市場取引を代行する「アグリゲーションビジネス」など、新たなビジネスが生まれ市場全体が活性化することも望めるでしょう。アグリゲーションビジネスを行う事業者を「アグリゲーター」と呼びます。

    電力システムの最適化・新ビジネス促進の仕組み出典:資源エネルギー庁「再エネを日本の主力エネルギーに!「FIP制度」が2022年4月スタート

    再生可能エネルギーの自立に向けた第一歩として、FIP制度によって新たなビジネスの創出やさらなる再エネ導入が進むことが期待されています。

    まとめ

    電力供給

    FIT制度とは「再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定期間固定の価格で買い取ること」を国が約束する制度です。

    2022年4月からは、再生可能エネルギー発電事業者が市場価格で電気を売る際に補助金を上乗せする「FIP制度」がスタートすることが決定しています。FIP制度によって、再生可能エネルギー導入の動きが更に進んでいくことが期待されています。

    サステナビリティハブ編集部

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