2026.10.16
「企業の森」とは?森林保全の取り組み事例と日本の森林の現状を解説 0
目次
国土の約3分の2を森林が占める日本。しかし近年、人工林の高齢化などを背景に、森林のCO₂吸収量は減少傾向にあります。こうしたなか注目されているのが、企業が自治体や国、NPOなどと協力して森林を整備する「企業の森」の取り組みです。植林や間伐に継続的に関わることで、脱炭素や地域貢献にもつながります。
本記事では、日本の森林の現状とCO₂吸収量の推移、「企業の森」の仕組みを解説し、森林保全に取り組む企業の事例を3つ紹介します。
日本の森林の割合とCO2吸収量
はじめに、日本の森林の現状を見ていきましょう。
世界の森林面積が減少し続けているなか、国内の森林面積は過去50年以上にわたり、ほぼ横ばいで推移しています。

一方で、「森林のCO₂吸収量」は減少傾向にあり、2024年度は約4,368万t-CO₂(2015年度比で約24%減)となっています。

| グラフ補足:HWPと温室効果ガス量 HWP(Harvested Wood Products)とは、森林から伐採されて搬出された木材や製品のことです。 日本では木材利用の推進を通して、森林と木材の持つ気候変動の緩和便益を最大化すべきとの観点から、各国の温室効果ガス吸収量または排出量として、搬出後の木材(HWP)における炭素量の変化を計上するべきだと主張されてきました。 2011年、COP17ではその主張が反映され、第二約束期間において、各国が、住宅等に使用されている国産木材に貯蔵されている炭素量の変化を温室効果ガスの吸収量または排出量として計上できることになりました。 参照:林野庁「第二約束期間(2013~2020年)のルール」 |
「森林の面積が減っていないのであれば、CO₂吸収量も減少しないのではないか?」と考える人も多いかもしれませんが、実はそうではありません。「木のCO₂吸収量(成長量)」にはピークがあり、樹齢が高くなるにつれて木のCO₂吸収量は減少していく特徴があるからです。
国内の森林面積の約4割(1,009万ha)を占める人工林を例に挙げると、年間の成長量は「4〜5齢級*前後(林齢16~25年)」がピークとなります。
*齢級:林齢を5年単位でくくって森林の年齢を表現したもの。4齢級は林齢16~20年を、5齢級は21~25年を表します。
次のグラフが示すように、現在、日本の人工林の約6割(64%)が一般的な主伐期である50年生を超え、木材としての利用期を迎えています(2022年3月末時点)。

しかし森林(特に人工林)の循環として必要な「伐って、使って、植える」という作業が進んでおらず、高齢の樹木がそのまま森林に残っているため、森林のCO₂吸収量が減少傾向にあるのが現状です。
「企業の森」とは?森林保全への企業の取り組み事例
森林のCO₂吸収量の減少を食い止め、気候変動を抑えるために、各企業は様々な取り組みをおこなっています。そのひとつが、「企業の森」です。
「企業の森」とは、企業が自治体や国、NPOなどと協力して、植林や間伐、下草刈りといった森林整備に継続的に取り組む森林、またはその活動の総称です。法律で定められた用語ではなく、「企業の森づくり」「法人の森」「〇〇(社名)の森」など、制度や地域によって呼び方はさまざまです。

林野庁によると、企業による森林づくり活動の実施箇所数は増加傾向にあり、2024年度には2,002か所にのぼります。社会貢献や社員教育、顧客との交流の場として、また脱炭素や生物多様性保全への取り組みとして、森林づくりに関わる企業が増えています。
企業の森のおもな仕組み
企業が森林づくりに参加する方法には、おもに次のようなものがあります。
| 仕組み | 概要 |
|---|---|
| 都道府県等との協定 | 自治体が用意した森林で、企業が資金や人手を出して整備する。企業と都道府県等が協定を結ぶ例が多い。 |
| 国有林の「法人の森林」 | 国有林の分収林制度を使い、国と企業が契約して森林づくりをおこなう。 |
| 国有林の「社会貢献の森」 | CSR活動などを目的とした森林づくりの場として、国有林のフィールドを提供する制度。 |
| 緑の募金(企業募金) | 使い道を選んで寄付し、社名を冠した「企業の森」として森林整備を支援する。 |
| J-クレジット制度 | 森林整備で生まれたCO₂吸収量をクレジットとして購入・創出し、排出量のオフセットに使う。 |
自治体によっては、企業の支援で整備された森林のCO₂吸収量を算定し、証書などの形で企業に交付する制度もあります。森林づくりの成果を数値で示せるため、企業にとっては環境報告や情報開示に活用しやすい点も特徴です。
企業の取り組み事例
1.損保ジャパン:植林活動
損保ジャパンは、千葉県が東京オリンピックサーフィン競技開催地(千葉県長生郡一宮町東浪見)に造成した植林地で、 社会貢献活動の一環とする植林活動『SOMPOの森林「損保ジャパン九十九里浜の森」』をおこないました。
千葉県内の5部支店の社員とその家族および代理店の約150人が参加し、植樹した苗木の合計本数は1960本にのぼります。(クロマツ1000本・マサキ480本・トベラ480本)

さらに千葉県を含む全国7カ所で自治体と森林整備の協定を結び、「SOMPOの森林」として、地域の方々やグループの社員、代理店、その家族とともに森林整備活動や環境教育を展開しています(2026年2月時点)。
2.イオン:森づくり
イオンは環境活動を代表する取り組みの1つとして、1991年から「ふるさとの森づくり」をおこなっています。「ふるさとの森づくり」では、 イオンの店舗周辺に古くからある神社や寺、屋敷林に残る樹木を調べ、その土地の本来の植生を推定したのち、店舗ごとに植える樹木の種類や割合を決めています。またその量だけでなく質にもこだわった、店舗ごとのオーダーメイドの森をつくっています。
東北地方では、津波によって失われた被災地域の緑を取り戻すために自治体やNPOと協力し、2012年3月から10年間、自治体などと協力して被災地域で植樹をおこない、約32万本を植えました。

イオンの植樹活動は日本だけでなく、中国、マレーシア、タイなどアジア各国でも展開されており、全国・世界各地で進めてきたイオンの植樹は、 約1,288万本になりました(2026年2月末現在)。
参照:イオン「イオンの植樹活動」(最終アクセス 2026/10/16)
3.日揮グループ:森林環境整備事業

日揮グループは、2008年より神奈川県の「水源林パートナー」(2013年から「森林再生パートナー」)企業として、神奈川県の水源地域の森林環境整備事業に協力しています。持続可能な自然を守るためにおこなわれている当取り組みは、神奈川県民への安全・安定な水道水供給においても欠かせない重要な事業です。
神奈川県からは日揮グループの支援によって整備された森林の標準的なCO₂吸収量を示す「森林CO₂吸収量算定書」も発行されました。2013年度から2022年度までの10年間で、日揮グループが貢献した標準CO₂吸収量は494t-CO₂と算出されており、今後も積極的に支援を進めていく予定です。
さらに日揮グループでは神奈川県の事業への資金的な支援と共に、水源林や人と自然が共存する大切さを知る「やどりき水源林活動」もおこなっています。コロナ禍前には、社員やその家族、友人など毎年延べ120名余りの参加がありました。 またおよそ月1回のペースで、関連協力会社の社員も参加できる企画も開催しており、ここでも水源林や人と自然の共存の大切さを多くの人が体感しました。
塚原水源林「日揮グループ癒しの森」

日揮グループは2021年3月、森林再生パートナー企業の活動場所として神奈川県から約0.5haの植林地(神奈川県南足柄市)を貸与いただき、「日揮グループ癒しの森」と名付けました。

同年4月には13種、約100本の植栽を完了しています。植栽が完了した主な樹木としては、ケヤキ、コナラ、イロハモミジ、ヤマボウシ、カツラ、マメザクラ、ヤマツツジ、イタヤカエデ、アセビ、モミなどが挙げられます。
植林を適切に管理するために

植林地の管理において重要なのは、植栽した苗木が健やかに育つよう、下層部に生える雑草や雑木を除去する「下刈り」作業です。この作業を怠ってしまうと、植えたばかりの幼い苗木は雑草や雑木に負け、日光を遮られたり水分を奪われたりして健全に育たなくなります。
下刈りの方法は、苗木以外の雑草や雑木を全て除去する「全刈り」が基本ですが、風害などの心配がある場合は残すこともあります。 また同時に、広葉樹の幼木はつるによる被害を受けやすいため、つるの除去もおこなっています。

「日揮グループ癒しの森」では2022年6月、2回目となる下刈りを実施しました(その後、2026年度まで継続的に実施)。 作業当日は神奈川県水源環境保全課職員の立ち合いのもと、参加者9名は、「NPO法人かながわ森林インストラクターの会」のスタッフ2名に安全および技術指導をしていただきました。
開会式や準備運動、作業手順と安全注意事項の確認をおこなった後は、下刈り作業を実施し、下刈りの方法として「横移動しながら斜面上方へ刈り込んでいく手法」の手ほどきをうけ、約2時間にわたり作業が進められました。植栽した苗木が健やかに育つための手助けになったことを願っています。
まとめ
今回は、日本の森林の現状や森林分野における企業の取組事例をご紹介しました。参考にしていただければ幸いです。

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