サステナビリティレポートとは?役割や企業で作成するステップを解説

サステナビリティレポートとは?役割や企業で作成するステップを解説

目次

    多くの企業がサステナビリティに対する意識を高めており、現在さまざまな取り組みが進んでいる社会。そのような中で企業の取組みをステークホルダーに対して活動内容を開示するための「サステナビリティレポート」の重要性が高まっています。

    そこで今回はサステナビリティレポートの役割や事例、作成方法について解説します。

    サステナビリティレポートとは

    サステナビリティレポート

    サステナビリティレポートとは、持続可能な社会の実現に向けた企業の取り組みを開示する報告書のことです。基本的にGRIスタンダードなどのガイドラインに沿って情報開示をおこないますが、内容や構成は企業によって様々です。

    中には、気象関連財務情報開示タスクフォース (TCFD) の提言に基づいて、気候変動に関する情報を開示する場合もあります。

    サステナビリティレポートの役割とは

    企業は株主や従業員、顧客や地域とのつながりなど、多くのステークホルダーによって支えられていることから、企業が社会に対して果たすべき責任は大きいと考えられています。

    サステナビリティレポートにより「自社の取り組み」を説明することで、社会的責任を負っている姿勢を示すだけでなく、ステークホルダーに対し、企業が目指している方向性を示すことができます。そのため企業は、社会問題やステークホルダーの関心をふまえて、ステークホルダーが求める情報を適切に開示する必要があります。

    サステナビリティレポートが生まれた背景

    サステナビリティレポートの歴史は、1990年代にさかのぼります。

    1990年代は大企業が「環境報告書」を発行して、自社の事業が社会へ与える影響や、それによって生じる責任を公開していました。しかし、この時点では環境問題のみに焦点が当てられており、その他の社会問題や、持続可能な社会の実現に向けた取り組みには触れられていませんでした。

    その後、海外では1990年代後半から「CSRレポート」という名前で企業による情報開示が進むようになりました。日本では2000年代以降から作られ始めましたが、これには企業が、環境問題だけでなく社会問題も視野に入れた「社会的責任」に注目し始めたことが背景にあったといわれています。

    こうした意識変化が起こった理由は何なのでしょうか?

    その1つには企業の考え方の変化が関与しており、「経済成長を追い求めるだけでは、環境問題や貧富の差の拡大といった社会問題は解決できず、社会が不安定になり、さらには経済にも悪影響が及ぶ」という新たな考えが普及したからです。

    新たな考え方の代表的な例としては、ジョン・エルキントン氏が提唱した「トリプルボトムライン」という概念があります。トリプルボトムラインは企業を財務状況だけで評価するのではなく、それに環境的側面や社会的側面もあわせた3つの側面から評価する考え方です。


    CSRレポート・統合報告書との違い

    サステナビリティレポート

    サステナビリティレポートは、CSRレポートや統合報告書とよく混同されがちですが、本章ではそれぞれの違いを詳しく見ていきましょう。

    CSRレポートとは

    CSRレポートは、社会的責任を企業がどれくらい果たしているのかを判断するための報告書です。サステナビリティレポートが社会からみた企業に対しての視点であるのに対し、CSRレポートは主に、企業からの視点で取り組み内容を報告する点で異なっています。

    CSRレポートでは、企業が具体的にどのような責任を感じ、どのような活動で責任を果たしているのか開示することが重要です。

    近年は非財務情報(経営理念・経営戦略やコーポレートガバナンス、環境や社会へのコミットメント状況など)を活用した企業評価が一般的になり、CSRレポートの内容を基準とした出資「ESG投資」も浸透しました。上場企業だけでなく、中小企業に対しても「社会的責任を果たしているのか」という視点が強まるなか、より一層CSRレポートの重要性は高まっています。

    統合報告書とは

    次に、統合報告書とは、先述した「トリプルボトムライン」を実際の決算報告に組み込んだ報告書です。売上や利益、負債といった開示が定められている財務情報だけでなく、開示が定められていない非財務情報も含めたものを指します。

    統合報告書は投資家視点であり、財務情報や強みといった情報も踏まえて「投資価値があるかどうか」を判断させるための発信物でもあります。つまり、サステナビリティレポートとは、意味合いや用途、発信先が大きく異なるのです。

    統合報告書は、海外の投資家を中心に「企業の社会的責任」も投資条件として重視し始めたことを受けて広まり、財務情報と非財務情報を一緒に開示するスタイルが増加しています。

    日本でも、東京証券取引所が「コーポレートガバナンス・コード」を策定し、企業に対して非財務情報の開示や統合報告書の作成を促しています。また金融庁は「投資家と企業の対話ガイドライン」を策定し、投資家と企業の対話において重点的に議論することが期待される事項を取りまとめています。

    評価の高いサステナビリティレポート事例

    サステナビリティレポート

    日本でもサステナビリティレポートを発行する企業は増加しており、様々な事例があります。

    今回は、東洋経済新報社が2022年に実施した「CSR企業ランキング」で、上位にランクインした3つの企業のサステナビリティレポートを詳しく見ていきましょう。

    8つの社会課題領域を設定している「KDDI」

    通信事業を展開するKDDIは、大きく「命をつなぐ」「暮らしをつなぐ」「心をつなぐ」といったKDDIらしいサスティナブルアクションを3つ策定し、サステナビリティレポートの中で、事業戦略と一緒に社会課題の解決に向けた計画を策定しています。 

    この3つのアクションによってもたらされる社会への貢献は大きく8つに分類されます。

    • 災害対策・通信基盤の強靭化
    • 地球環境の保全
    • 途上国の基盤整備
    • 地方・都市の持続的発展
    • 次世代の育成
    • 安心で豊かなデジタル社会構築
    • 多様性の尊重
    • 健康・生きがいづくり

    いずれも大きな社会課題となっており、早急な対策が求められる分野です。KDDIはサステナビリティレポートの中で、自社の事業戦略と共に課題解決への糸口を示しているため、課題の明確化や実行へのプランニングに厚みがあります。

    公式HP>KDDI「サステナビリティ統合レポート2022」

    SDGsを参照しながらESG経営を進める「NTT」

    NTTグループのサステナビリティレポートは、「これまで」の歩みの中でどのような取り組みをしてきたのかを解説し、「これから」は新たなサステナビリティ憲章に沿って9つのチャレンジと30のアクティビティに取り組むことを明示しています。

    サステナビリティ憲章には3つの大テーマが掲げられ、「自然(地球)との共生」「文化(集団・社会~国)の共栄」「Well-being(幸せ)の最大化」を重視しながら、持続可能な社会に向けて取り組むと明記されました。

    2040年のカーボンニュートラル実現も含め、ESG投資にも目を向けたバランスの良いサステナビリティレポートだといえそうです。これまでの歩みも含めて語られる言葉には重みがあり、未来を見据えた計画が織り込まれているので、メッセージ性だけでなく期待感もあわせ持ったレポートです。

    公式HP>NTTグループ「サステナビリティレポート2022」 

    サステナビリティのシナリオを紹介する「富士フイルム」

    富士フイルムのサステナビリティレポートには、イノベーションや事業によって持続可能な社会を実現し、社会に好影響を与えることを目指すと明記されています。 

    同社の2030年のあり方を示した「SVP2030」に基づき、事業によってどのような社会課題が生まれるのか、その影響への配慮はどうするのか、事業を通して社会課題を解決できないか、といった視点が盛り込まれ、中長期を見据えたシナリオが描かれています。

    単に「この問題を解消します」と示すのではなく、自社の事業で生じる影響も踏まえて客観的に観測し、配慮の方法を策定したり、事業を通して持続可能な社会を実現できないか検討したりする点が大きな特徴です。 

    また、それらがシナリオとして「2023年にはこうなっている」というかたちで描かれるため、説得力や期待感が高まります。顧客や株主、取引先といった全ての関係者に未来を見せられる好事例の一つです。

    公式HP>富士フイルムホールディングス「サステナビリティレポート2023」

    サステナビリティレポートを作成するステップ

    サステナビリティに取り組むビジネスパーソン

    サステナビリティレポートを作成するには、以下のようなステップが必要です。はじめてサステナビリティレポートを作る方は、まず流れを把握しておきましょう。

    レポートを作成する目的・ゴールを明確にする

    レポートを作り始める前に、作成の目的やゴールの明確化が必要です。その際、「誰に向けてまとめるのか」「どんなことを伝えるのか」「どのように伝えるのか」を考えます。適切な情報を盛り込むために、ステークホルダーの動向も事前にチェックしておくと良いでしょう。

    全体のスケジュールを決めて見通しを立てる

    次にサステナビリティレポートを作成・公開するまでのスケジュールを定めます。一般的なレポートの制作には6ヶ月程度の期間がかかるため、事前にスケジュールを定め、中間地点(マイルストーン)を区切ります。内容によっては収集するデータの量が膨大であったり、関係者への聞き取りをしたりするなど、事前の想定を越えたタスクが発生することがあります。

    そのため、スケジュールには余裕をもたせ、確実に進められるようにしましょう。

    ガイドラインを参照して情報を集める

    目的やゴールが定まり、スケジュールの見通しが建てられたら、次はガイドラインを参照して全体の構成を検討します。サステナビリティレポートには、「ガイドライン」と呼ばれるテンプレートのようなものが用意されています。

    ガイドラインは何種類か存在しますが、多くの日本企業で使用されているのはGRIスタンダードです。GRIスタンダードは、オランダはアムステルダムに本拠地を構えるGRI(Global Reporting Initiative)が発行するサステナビリティ報告書のガイドラインです。

    企業のガバナンス構造やマネジメント手法の方針、そして経済・環境・社会に関する開示項目などが定められています。開示する情報の区分を明確化することで、組織や企業が行った活動の透明性や説明責任を担保できるため、日本をはじめとする世界中の国々の組織、企業でGRIスタンダードが使用されています。基本的な制作の方針は、このガイドラインに沿って策定すると良いでしょう。

    また、ガイドラインに沿った内容を盛り込むだけでなく自社事業の取り組みも積極的に紹介しましょう。取組の内容によって投資家の意欲を刺激し、社内外の関係者が事業や企業に抱くイメージも考えられます。

    レポートを発行して社内外で活用する

    サステナビリティレポートの作成が完了したら、発行して社内外へ発表します。発行する前に第三者保証を受けるか否かは企業の判断に任されています。

    一般的には、サステナビリティレポートの発行時期は株主総会が開催される6月頃が最も多く、上半期に属する7〜9月も多い傾向にあります。定められた発行時期はありませんが、なるべく多くの人の目に留めてもらいレポートを有効活用することで、自社の取り組みを世の中に広くアピールできるでしょう。

    まとめ

    サステナビリティレポートは株主や取引先などの幅広いステークホルダーに対し、自社が持続可能な社会の実現に向けてどんな取り組みをしているのか、分かりやすくまとめた報告書のことです。

    自社の取り組みを開示することでステークホルダーの信頼獲得につながるだけでなく、自社の取り組みの振り返りとして機能します。ぜひ自社の取り組みをレポートとして公表し、サステナビリティの推進に役立ててみてはいかがでしょうか。

    企業におけるサステナビリティの取り組みについては、こちらの記事も参考にしてみてください。




    サステナビリティハブ編集部

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