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気候変動に対応したVOC回収設備用シミュレータの紹介|日揮グループのシミュレーション技術

事例 企業×サステナビリティ
目次

大気を汚染する物質のひとつ、「VOC」をご存知でしょうか。塗装や印刷・自動車への給油など身の回りのさまざまな場所から排出されるVOCは、光化学スモッグなどの原因になるため、世界でさまざまな対策が取られています。 

今回はVOCの特徴やVOC排出の原因、また、最適なVOC回収設備のためのシミュレーション技術についてご紹介します。

VOCとは

VOC(Volatile Organic Compounds=揮発性有機化合物)とは、「揮発性を持ち、大気中で気体となる有機化合物の総称」です。具体的にはシンナーなどの有機溶剤や、石油・化学製品の軽質な炭化水素など(トルエン、キシレン、酢酸エチルなど)が該当し、主な種類は200ほどあるといわれています。

VOCの排出源

VOCは、建物や車の塗装に使われる塗料や燃料・化学品・印刷インキ・接着剤など、さまざまな場面から大気中に排出されていますが、排出源の主な構成はどのようなものなのでしょうか。 

出典:環境省「VOC排出インベントリ報告書」(最終アクセス 2023/4/11) 上図は、2020年度の国内における「VOC排出量の発生源別構成比」を表しています。内訳は燃料(蒸発ガス)や塗料からの排出が多くを占めていることが分かります。同年の東京都環境局による調査では、年間6万トンのVOC排出量のうち、約70%が工業および事業所からの排出でした。

また2006年4月から、工場や事業者からのVOC排出量を規制するため、「大気汚染防止法」が改訂され、外形裾切り基準(法規制対象施設の判断基準となる数値)以上の排出事業者には「VOC排出の削減」が義務付けられました。経済産業省が、裾切り基準未満の中小の事業者に対しても「自主的取組」の実施を求めた背景もあり、2020年度のVOCの排出量は、20年前の2000年度比で59%減になっています。

VOC回収設備の現状

VOC排出量の削減のため、印刷用乾燥施設や吹付塗装施設・揮発性有機化合物(ガソリン、原油、ナフサそのほかの、温度37.8℃において蒸気圧20kPaを超えるもの)の貯蔵タンクなど、「VOCを排出する可能性のある設備」を新たに建設する際は、さまざまな環境規制に従う必要があります。

そのような設備を国内ではなく海外に建設する場合には、建設地によっては大気に放出された排出ガス中のVOCを液化して回収するための「VOC回収設備*」の設置を義務付けられることもあります。 (*VOC回収には活性炭吸着法、溶剤吸収法、フレア焼却法のいずれかが用いられます。) 

VOC回収設備の課題 

「VOC回収設備」の設置において必要なことは、タンクからのVOC発生量(ベントガス量)を正確に予測することであり、API (米国石油学会)が世界的に定めた方法を使うことが一般的です。しかし気候条件は国によって異なるため、日本と海外では「VOC発生量の予測値と実測値」が一致しないことも明らかになっています。APIが仮定しているタンク内べーパースペースの温度変化が、100°F(55.6℃)/hrという数値に設定されていることは、予測値と実測値に差が出る原因だといえます。日本やアジア諸国は、他国と比べ1日の温度変化が比較的小さいことから、これが過剰な予測値となってしまい、また保温を施行したタンクに対しても、100°F(55.6℃)/hrは過剰な値であるといえます。  

たとえば、国内においてAPIを用いてVOC回収設備容量を決め、設計・建設をすると、実際のVOC排出量に対して「約10倍」も過剰な設備が出来上がる可能性があります。(下記グラフ参照)

最適なVOC回収設備設計のために

これらの課題解決に繋げるべく、日本において最適なVOC回収設備を設計するためにはどのように設備容量を決めると良いのでしょうか。

VOC回収設備が回収できるVOCの容量は、タンク設置場所の緯度・経度、日周変動、日照時間変動、気候変動による大気温度上昇など、さまざまな影響を受けます。日本の環境条件に沿ったシミュレーションを用い、将来起こる地球温暖化の影響も予測したうえで、VOC回収設備設計に反映することができれば、最適な設備設計に近づきます。

日揮グループのシミュレーション技術

日揮グループは、日本の環境条件に合ったVOC回収設備におけるシミュレーション(熱流動解析)技術、 「VOCSIM®」を開発しました。これは天気予報や自然災害の予測など、私たちの身の回りにも使われている「コンピューターシミュレーション」を活用した技術です。 

たとえばガソリンの貯蔵タンクの場合、外気および日射からの入熱でタンク内の貯蔵温度が上昇すると、ガソリンは気化し、VOCが発生します。反対に大気の温度が降下するとVOCは凝縮し、その分だけ窒素が吸引されます。そこでVOCの発生量と窒素の吸引量の経時変化を求めると、回収装置の最適な設計ができるようになります。 

出典:A-PLAT「気候変動による大気温度上昇を考慮した貯蔵設備からのVOC発生量予測 / 動解析シミュレーターVOCSIM®」(最終アクセス 2023/4/11)
また、貯蔵設備所在地の緯度や経度、日周変動や日照時間などだけでなく、気候変動による大気温度の上昇を考えた「動解析手法」は、今まで困難だといわれていたVOCガス排出量の推測を可能にしました。 その結果、VOC回収設備の設計に「未来で起こる地球温暖化の影響」を反映することができ、気候が変化した際の適切な設備の適応が可能となりました。 

この事例は、気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT)*にも取り上げられています。

気候変動による大気温度上昇を考慮した貯蔵設備からのVOC発生量予測 / 動解析シミュレーターVOCSIM®

* 「気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT)」とは:気候変動による悪影響をできるだけ抑制・回避し、また正の影響を活用した社会構築を目指す施策(気候変動適応策、以下「適応策」という)を進めるために参考となる情報を、分かりやすく発信するための情報基盤。 (引用元:A-PLAT「A-PLATについて」

まとめ

今回は、VOC回収設備における「VOC発生量を予測するシミュレーション技術」をご紹介しました。

日揮グループでは50年にわたり、1000件を超えるプラント診断・改善実績を有しており、今回ご紹介した「VOCSIM ®」をはじめとしたプラントの構造診断、設備改善、騒音改善、設備の長寿命化技術があります。 

また、プラントの空冷式熱交換器の効率改善のためのシミュレーションに関しては、以下の記事も公開しています。ぜひご覧ください。 


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サステナビリティハブ編集部
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