風がプラント性能に影響をあたえる

風がプラント性能に影響をあたえる

目次

    プラントや工場を運用するにあたって、天候などの自然現象からの影響を受けることは避けて通れません。

    実際に現場に関わる皆さまにも、天候、とりわけ「風」に悩まされた経験があるのではないでしょうか。この記事では、LNG(液化天然ガス)のプラントで実際に導入されている、「風」から受ける影響とその対策について、事例をご紹介したいと思います。

    空冷式熱交換器と風

    プラントに空冷式熱交換器(Air Cooled Heat Exchangers)という機器があります。外気を吸い込み流体を冷やすための熱交換器です。

    空冷式熱交換器の仕組み図

    その空冷式熱交換器に例えば横風が吹くと、温まった出口の空気を巻き込んでしまい、吸い込む外気温度が上がり、空冷式熱交換器の性能が下がることが分かってきました。

    詳しくは後述しますが、この現象をHot Air Recirculation (HAR)と呼びます。

    HARが起こる仕組み図

    プラントの空冷式熱交換器の性能が出たり、出なかったりした場合は、横風の影響を受けている可能性があります。

    空冷式熱交換器が平行に設置されて、横風が吹いた場合、両方の空冷式熱交換器の性能が下がることがあります。

    私たちはこうした現象をいち早くとらえ解明し、対策を練ってノウハウを蓄積してきました。特に空冷式熱交換器を多用するLNGプラントの場合、風の影響が大きくなるため、LNGプラントのHot Air Recirculation対策パッケージを「AIRLIZE LNG」として準備しています。以下にその内容を紹介します。

    脱炭素社会実現のつなぎ役エネルギーとしてのLNG

    LNGプラント外観出典:LNG Plant | Projects | JGC HOLDINGS CORPORATION(最終アクセス:2022/6/24)

     脱炭素社会の実現に向けて化石燃料に厳しい目が向けられる中、新・再生可能エネルギーの活用に注目が集まっています。しかしそれらが主エネルギーとして活用されるためには、超えるべき経済面での課題があります。

    今後は化石燃料の依存度を下げつつも、一定量は利用せざるを得ないため、脱炭素社会実現のつなぎ役エネルギーとしてLNG(液化天然ガス)の果たす役割は依然重要となります。LNGは石炭や石油などの化石燃料に比べて、燃焼時のCO₂(二酸化炭素)や酸性雨の原因とされるNOx(窒素酸化物)の発生量が少ない特徴があります。またぜん息や酸性雨の原因となるSOx(硫黄酸化物)や大気汚染の問題がある“ばいじん”が発生しないため、環境負荷の低いエネルギーと言えます。

    LNGは液化すると体積が約600分の1になるため、LNGタンカーやタンクローリーで比較的安価で経済的に輸送できるメリットがあります。日本に供給されているLNGのほとんどは、海外から輸入されたものです。

    LNG製造プラントとは

    LNG(Liquefied Natural Gas=液化天然ガス)は、ガス田などから生産された天然ガスから、酸性ガスや水分といった不純物を取り除き、それを-162℃まで冷却し液化させたものです。LNGを製造する設備を「LNG製造プラント」と呼びます。

    LNGは天然ガスを冷媒で冷却して得られますが、その冷媒を冷やす冷却方式は「空冷式」と「水冷式」に大別されており、世界のLNG製造プラントの多くは空気で冷媒を冷やす「空冷式」を採用しています。

    LNG製造プラントで生産効率低下を招くHot Air Recirculation 問題

    空冷式のLNG製造プラントにおいて、外気温度の変化は生産効率に大きな影響を与えます。特に隣接するLNG製造プラントの空冷式熱交換からの高温排気を、自身の空冷式熱交換が吸い込んでしまう「Hot Air Recirculation」と呼ばれる現象が問題視されています。

    Hot Air RecirculationでCO₂の排出量も増える?

    Hot Air Recirculationが発生すると、同じ量のLNGを生産するために必要な投入エネルギー量が多くなり、結果的にCO₂排出量が増えてしまいます。またLNGの生産量が落ちることで、事業収益に大きくダメージを与えてしまう問題もあります。

    HARによるLNG生産量低下 例えばHot Air RecirculationによりLNGの生産量が5%落ちるとすると、その減少した量を補うためにプラントにより多くの燃料を投入し、生産量を維持しに行くとします。この時、LNG製造プラントの燃焼機器(ガスタービンなど)の効率、プラントを構成する諸条件にもよりますが、大よそ3-4%程度のCO₂が増加することになります。

    Hot Air Recirculationを解決する「AIRLIZE LNG®」とは?

    AIRLIZE LNG画像

    日揮グループは、プラント運転員を悩ませるHot Air Recirculation問題に対して、空気の流れを可視化し、どこにHot Air Recirculationが起きているのか特定して解決策を講じるトータルエンジニアリングサービス「AIRLIZE LNG®」を提供しています。

    LNG分野における豊富な実績と知見を活かして(utilize)、プロジェクトの早期実行と安定運転を実現(realize)し、エネルギー資源の長期的確保と地球環境との調和を図ったプラントのライフサイクルの質の向上を目指すことで、LNG製造プラント事業を支援してまいります。

    シミュレーションで予測して解決

    空冷式LNG製造プラントにおける“空気コントロール”は、生産性と稼働率の最大化を達成するために重要なポイントであるといえます。

    日揮グループの「AIRLIZE LNG®」では、プラントの空気をコントロールするために、気象データや運転データ、プラント構造データといったあらゆるデータを収集します。高度な技術知識とノウハウを持つ当社のエンジニアにより、それらの膨大なデータを解析・分析することで、プラント全体のシミュレーションモデルを構築します。

    立地・環境・設備の配置などを統合的に解析し空気の流れを可視化することで、どこにHot Air Recirculationが起きているのか特定して対策を講じることができます。またHot Air Recirculationの緩和策だけでなく、Hot Air Recirculationの影響を最小限にしたコンパクトなプラントの設計・建設、コストの削減の提案も可能です。

    まとめ

    AIRLIZELNGイメージ画像

    日揮グループの独自のイノベーションである”空気コントロール”の技術とノウハウ。「AIRLIZE LNG®」ではこれらを駆使することによって、空冷式LNG製造プラントの生産性と稼働率の最大化のために、当社は最適なソリューションを追求し続けます。なお、このソリューションはLNGプラントだけでなく、空冷式熱交換があればどんなプラントにも適用可能です。

    風によるプラント性能低下にお困りの際は、是非日揮グループにおまかせください。

    AIRLIZE LNG® について詳しくはこちら 


    サステナビリティハブ編集部

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    サステナビリティに関する情報を、日本から世界に発信していきます。