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2026.06.30

後編【プラント建設の未来を支える技術者たち #09】スケジュールコントロールのエキスパート

後編【プラント建設の未来を支える技術者たち #09】スケジュールコントロールのエキスパート

目次

    海外におけるプラントの設計・調達・建設を事業の柱とする日揮グローバルでは、幅広い分野の技術エキスパートが事業の根幹を支えています。彼らの持つさまざまな専門技術は、プラント建設だけでなく、サステナブルな社会を実現するうえで欠かせないものです。そこでサステナビリティハブでは、チーフエンジニア*の方々に、専門技術や最新トピックなどを開設してもらうインタビュー記事を連載しています。

    今回は、第9回となる「スケジュールコントロール(プランニング)」チーフエンジニアへのインタビュー後編です。建設部の第一線で40年以上にわたり活躍し、数々の海外プロジェクトを牽引してきたスケジュールコントロールのエキスパートである伊達信幸さんに、エンジニアとしてのキャリアや大事にしている仕事の哲学、オフの日の過ごし方などについて聞きました。(インタビュアー:サステナビリティ ハブ編集部)

    *エキスパート制度は、日揮ホールディングス、日揮コーポレートソリューションズ、日揮グローバル、日揮が対象
    **チーフエンジニアは、チーフエキスパートとリーディングエキスパートの総称

    スケジュールコントロールエンジニアの業務内容や、最新動向などについて詳しく解説いただいたインタビュー前編はこちらをご覧ください。

    40年のキャリアの歩みと、転機となったプロジェクト

    ――伊達さんは、どのようなきっかけでスケジュールコントローラーとしてのキャリアをスタートしたのでしょうか?

    大学での専攻は化学系で、しかもマクロではなくミクロの分野を学んでいました。ですから、日揮(当時)に入社した際も、漠然とプロセスエンジニアのような部署に配属されると思っていました。しかし蓋を開けてみると、配属先はまさかの建設部。その後も回転機をはじめ、機械系のことも担当するなど、全く予想していなかったキャリアのスタートでした。

    ──専門外の建設部で、戸惑いも大きかったと思いますが、スムーズに適応できましたか。

    いいえ、最初の10年ぐらいは、言われたことはこなすものの、会社に貢献できているという手ごたえもやりがいもなかなか得られず、「このままやっていけるんだろうか?」と悩むことも度々ありましたね。

    転機となったのは、ちょうど入社10年目くらいの時期――30代前半で担当した香港のプロジェクトでした。ディーゼルオイルやLPガスなどの燃料を扱う港湾設備の建設プロジェクトで、規模としては50億円から100億円未満。日揮が多く手掛ける数千億円規模の大型プラントと比べると比較的小規模な案件でした。そこで初めてプランニングの業務を手掛けたのですが、規模が小さい分、プロジェクト全体に目が届くので「ここをこうすれば、こう上手く動く」という明確な手応えを得ることができ、「これならやっていけそうだ」と光が見えてきました。

    ──その後、特に印象に残っているプロジェクトはありますか?

    35歳頃に担当した、パキスタンのプロジェクトです。ここでは「コントロールマネージャー」を任されました。全体スケジュールの作成から、各エリアの担当者への指示出しや、調達や設計の調整まで、ほぼ全て自ら担当しました。その過程で専門部*や建設のスーパーバイザーとの信頼関係を築くことができ、最終的に完全にオンスケジュールでプロジェクトを完遂できました。

    *専門部とは、各設計部署の総称で、例えば電気、計装、回転機、静機器、火熱、配管などのことを指す

    プロジェクトは、難しい局面をひとつひとつ乗り越えていくと、終盤に近付くにつれてどんどん楽になっていくんです。その感覚を自分の中に蓄積できた、非常に大きな手応えのある仕事でした。

    初めて「サイトマネージャー」を務めた中国のプロジェクトも印象深いですね。サイトマネージャーにとって最も重要なのは、予算の管理です。それに加えて、アドミニストレーション業務として、スタッフが駐在するためのマンションを借り上げるところから生活環境の整備まで全てを担いました。コントロールマネージャーが担当しない部分の経験を積んだことで、建設マネジメントの全貌をつかむことが出来たプロジェクトでした。

    大事にしている仕事の哲学

    ──伊達さんが仕事をする上で、大切にしている姿勢や哲学はありますか?

    私が最も大切にしているのは、「部門間や、それぞれの専門分野の『隙間』を見つけて、そこを埋めに行く」という姿勢です。

    建設工事は、土木の基礎工事→鉄骨工事→建屋の建設→機器の据付→配管工事という流れで進みます。例えば設計部門の中では、土木の基礎工事と鉄骨工事の間の調整はおこなわれます。ですが、スケジュール全体を俯瞰している私たちの目で見ると、「この作業はこういう順番でした方が良い」とか「この作業の間に、どうしても組み込まないといけない工程がある」というように、担当者だけでは埋めきれない「隙間」が必ず見つかります。

    そこにいち早く気づいて、「ここはこういう風にやってほしい」と指示を出したり、サポートしたりして、隙間をきれいに埋めて色々な仕事がスムーズに流れるようにすることがとても大事なんです。

    ──ただスケジュールを引くだけではなく、人と組織を繋ぐのも重要な役割なんですね。

    そうです。どれだけ立派なスケジュールを作っても、プレイヤーがバラバラでは現場は動きません。「なぜうまくいかないのか」を深掘りすると、プロジェクトによっては「経験の少ない若手が担当している」「本来5人必要な作業を2人でやっている」といった、力量不足やリソース不足という弱い部分が見えてきます。

    そんな時は、自分からその部署に入り込んで、「こういうツールを作ったらどう?」と提案したり、「人員が足りないなら、私が上の人間と掛け合ってやる」とサポートしたりします。

    そうすることで両者に「こういう風にやればうまくいくんだ」という自信が生まれ、組織全体がスムーズに機能し始めるんです。

    プロジェクトサイトでセキュリティガードのスタッフと

    ──隙間を埋めに行く姿勢のほかに、この仕事をする上で必要な資質のようなものはありますか?

    最終的には「執念」ですね。言い換えるなら、「プロジェクトを成功させるために何だってやるんだ」という強い気持ちです。これは、個人が無理をして抱え込むという意味ではありません。関係部署やメンバーと連携しながら、必要な調整を粘り続けていく姿勢が大切だということです。

    ノウハウやスキルは経験すればいくらでも身につきます。ですが、良い結果を出せるかどうかは、「これを絶対にうまくいかせる」という気持ちの部分が一番大きいのかなと思いますね。

    オフの日の過ごし方

    ──少し話題を変えまして。プライベートの過ごし方についてお聞きできればと思います。週末など、お仕事がオフの時は何をすることが多いですか?

    健康維持のためにジョギングは続けていますが、元々はそこまで活動的なタイプではなく、本を読んでいることが多いですね。

    ジャンルとしては、学生時代から興味があった分子生物学や進化生物学、歴史の学術書をよく読みます。歴史は、明治維新以降から現代に至るまでの近現代史が好きで、「なぜ今の日本は、あるいは世界は、こういう考え方や構造になっているのか」ということを過去から紐解いて理解していくプロセスが面白いですね。学術書ばかりだと疲れるので小説も読みますが、やはり自分の読書の「幹」になっているのは、こうした学術書で、思考の訓練やリフレッシュにも役立っていると感じます。

    近所でお花見中のオフショット

    若手エンジニアへのメッセージ

    ──最後に、これからを担う若手エンジニアたちへメッセージをお願いします。

    インタビューの前編でもお話ししましたが、細かいデータを追いかけるだけではなく、大枠(全体像)を掴む“BIRD-EYE VIEW”の視点も持って仕事に取り組んでほしいと思います。

    そして、ただ上から言われた作業をこなすのではなく、一歩先を見据えて自ら動くことを意識してほしいなと思います。そうやって能動的に仕事に向きあえば、仕事の「手応え」を掴むことが出来るはずです。

    現場での仕事は本当にしんどいことも多いです。ですが、現場に行けること、そして色々な人と出会えることは、この仕事ならではの魅力だと感じています。建設現場には、設計や調達のスペシャリスト、そしてお客様まで様々な人が集まります。厳しい環境で顔を突き合わせ、苦労を共有しながら、直接対話をしていくなかで、深い部分までお互いを分かり合えるようになる。こうした関係性を築きながら、プラントを作り上げていく醍醐味を、是非味わってほしいなと思います。

    まとめ

    今回の記事では、スケジュールコントロールのチーフエンジニアに、40年のキャリアを振り返っていただきながら、転機となったプロジェクトや、組織を動かすための仕事哲学、趣味のお話などについて幅広くお伺いしました。プラント建設におけるスケジュールコントロールの業務内容や、IT化による業界の変化などについてお伺いしたインタビュー前編はこちらをご覧ください。

    ▼日揮グループのチーフエンジニアの詳細はこちら

    サステナビリティ ハブ 編集部

    サステナビリティ ハブ 編集部

    サステナビリティ ハブは、日揮ホールディングス株式会社が運営する、企業のサステナビリティ活動を支援するオウンドメディアです。SDGsの達成に不可欠なソリューション、国内外の先進的な事例、サステナビリティ経営のヒントなど、課題解決に繋がる多様な情報を発信しています。長年、プラントエンジニアリングや社会インフラ構築に携わってきた日揮グループの知見を活かし、専門性を持ったメンバーが信頼性の高いコンテンツをお届けします。