2025.05.29
【15選】バイオ領域の協創事例|注目技術や協業のポイントも紹介

目次
今ある資源や環境を次世代につなげていくためには、地球温暖化や食糧危機といった我々が直面する課題を解決していく必要があります。その糸口として近年注目を集めているのが、バイオ領域における技術革新です。すでに複数の企業が開発を進めていますが、バイオ技術の実用化には高度な技術力と大規模な投資が必要であり、1社単独での取り組みで実現できる範囲には限りがあります。
そこで今回の記事では複数社による協創事例に着目し、バイオ領域における注目技術や、複数社で成果を最大化するポイントを詳しく解説します。
バイオとは

サステナビリティの文脈で語られる「バイオ」には、おもに2つの意味があります。
1つ目は、「バイオテクノロジー」の略称としての「バイオ」で、生物が持つ機能や仕組みを応用して有用な物質を生産することを指します。「バイオテクノロジー」の分野では、ゲノム編集技術の進歩や人工知能(AI)の活用により、より効率的で精密な生物機能の制御が可能になっています。これにより、従来の化学合成では困難だった複雑な物質の生産や環境負荷の大きい製造プロセスの代替など応用範囲が急速に広がっています。
こうした技術革新を背景に、企業はバイオテクノロジーを活用した新規事業の開発を加速させています。特に、環境負荷の低減や持続可能な物質生産を実現する「バイオものづくり」の分野では、異なる強みを持つ企業同士が連携し、技術開発から実用化まで一貫した取り組みを進めています。
2つ目は、「バイオマス(動植物由来の有機物)」の略称としての「バイオ」で、バイオマスを原料としてカーボンニュートラルな製品を創出することを指します。「バイオマス」の分野では間伐材や廃木材、家畜糞尿、食物残渣といったバイオマスを原料にして発電をおこなったり、燃料を製造したりする取り組みも盛んになっています。
今回の記事では、「バイオテクノロジー」と「バイオマス」の2つの「バイオ」について触れていきます。
バイオ領域の注目技術【4分野】
バイオ領域では、持続可能な社会の実現に向けて以下の4つの技術分野が注目を集めています。
- 医薬品
- 燃料
- 食品
- 素材
「バイオ医薬品」は、遺伝子組換え技術や細胞培養技術を活用し、抗体医薬品や細胞治療薬など革新的な治療法として注目されています。
次世代のエネルギー源として期待される「バイオマス燃料」は、微生物発酵や酵素反応を利用したバイオエタノール・バイオディーゼルの生産がおこなわれています。特に非可食バイオマスや藻類を活用した開発が活発です。
食料問題の解決に貢献する「バイオテクノロジー応用食品」は、培養肉や植物由来の代替肉など環境負荷を抑えた代替タンパク質の開発が加速しています。
「バイオマス素材」は、環境配慮型素材として注目を集めており、植物由来のプラスチック代替材料や微生物による生分解性ポリマーの実用化と普及が進んでいます。
複数の企業でバイオ領域に取り組んでいる事例【15選】
バイオ領域では、高度な専門技術の確立や大規模な設備投資が必要となることから、異なる強みを持つ企業が連携して開発に取り組むケースが増えています。本章では、バイオ領域での技術開発に複数の企業で取り組んでいる15の事例を紹介します。
バイオ医薬品

日本精工×サイフューズ
日本精工とサイフューズは、再生・細胞医療、創薬およびヘルスケア分野での製品実用化に向けて協業をおこなっています。代表的な例が、サイフューズが持つバイオ3Dプリンティング技術と日本精工が産業機械事業で培った精密位置決め技術の連携です。この組み合わせによって、3D細胞製品の商業生産技術の開発に成功しました。
さらに、サイフューズのバイオ3Dプリンタ「S-PIKE®」の研究開発用技術を商業生産向けに発展させ、製造工程の自動化も実現しています。この技術を活用することで実現を目指しているのが、再生医療等製品や世界初の機能性細胞デバイスである「ヒト3Dミニ肝臓」などの生産性および品質向上です。「ヒト3Dミニ肝臓」は、生体肝臓に近い構造と機能を持ち、将来的な動物実験代替法としても期待されており、サステナビリティの観点からも注目を集めています。
参考:日本精工株式会社及び株式会社サイフューズ 再生・細胞医療分野における製品製造工程の自動化へ向けた新技術開発に成功|日本精工株式会社
協和キリン×アムジェン
協和キリンとアムジェンは、アトピー性皮膚炎の治療薬である抗体医薬品の共同開発をおこなっています。協和キリンが保有する「完全ヒト抗体作製技術」と抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)を高める「POTELLIGENT®技術」を利用し、アムジェンが主体となって開発・販売を進めています。
この薬は、アトピー性皮膚炎を引き起こす原因となっている抗体を発現した病原性T細胞に直接働きかけて阻害・減少させるもので、中等~重症のアトピー性皮膚炎への高い有効性と安全性を持つ新規治療薬として期待されています。
参考:Rocatinlimab(AMG 451 / KHK4083)に関する日本皮膚科学会総会(JDA2024)での発表のお知らせ
帝人ファーマ×MOLCURE
帝人ファーマとAI創薬スタートアップのMOLCUREは、抗体医薬品の創製を目的とした共同研究契約を締結しました。MOLCUREが独自に開発した抗体専用の大規模言語モデルを中核とするAI創薬プラットフォームシステムを活用して、帝人ファーマがこれまでに見出してきた複数のリード抗体に対する最適化課題に取り組むことが可能になります。
これにより、新薬開発のスピードアップと効率化が期待されています。
参考:帝人ファーマとAI創薬プラットフォーム技術を活用した抗体医薬品の創製に関する共同研究契約を締結 | 株式会社MOLCUREのプレスリリース
バイオ燃料

日本製紙×住友商事×Green Earth Institute
日本製紙らは、2027年度の商用生産開始を目指し、木質バイオマスを原料とする国内初のセルロース系バイオエタノールの製造に向けて協業を開始しました。このプロジェクトでは、日本製紙の工場内で年産数万キロリットル規模のバイオエタノールを生産し、持続可能な航空燃料(SAF)の原料として利用することを目指しています。
日本製紙は紙パルプ製造技術を活かした大量製造技術の確立、住友商事は多角的な事業開発の知見を活かしたグリーンケミカルの展開、Green Earth Instituteはバイオリファイナリー技術による非可食バイオマスからの生産技術を担当しています。さらに、製造過程で副次的に生成されるCO₂の有効活用や発酵残渣の活用など、カーボンリサイクルの取り組みも検討しています。
参考:木質バイオマスを原料とする国内初のセルロース系バイオエタノール商用生産およびバイオケミカル製品への展開に向けた協業に関する基本合意書の締結|日本製紙株式会社
トヨタ自動車×豊田通商×三菱化工機
トヨタ自動車らは、タイでバイオマス由来の水素製造に向けた協業をおこなっています。このプロジェクトでは、三菱化工機が製作する水素製造装置を活用し、鶏糞や廃棄食料由来のバイオガスから水素を製造します。トヨタ自動車と豊田通商は、バイオガスや水素の圧縮、貯蔵、輸送に関わる全体のシステム構築および導入、運用体制の構築を進めています。
タイの現地事情を考慮した設計の適正化については、3社およびそれぞれの現地事業体が連携して検討を進めており、水素を「つくる・はこぶ・ためる・つかう」という一連のバリューチェーンの確立を目指しています。この取り組みを通じて、各国・地域の特性に合わせたクリーンエネルギーの活用を促進し、水素社会とカーボンニュートラル社会の実現に貢献することが目標です。
参考記事:トヨタ、豊田通商と三菱化工機、バイオガスから水素を製造する装置をタイに初めて導入し年内に稼働開始|PR TIMES
大和ハウス工業×ダイキアクシス
大和ハウス工業とダイキアクシスは、マンション向け小型バイオガス発電システムの開発に共同で取り組んでいます。この取り組みは、家庭の生ごみをエネルギーとして有効活用する先進的な事例です。
100戸規模のマンション向けに設計されたこのシステムは、各住戸のディスポーザーで処理された生ごみからバイオガスを生成し、マンション共用部の電力として活用します。新開発の固液分離装置により、従来の1/6程度まで装置の小型化を実現しました。これにより、従来は大型施設向けが主流だったバイオガス発電システムを一般的なマンションでも導入可能にしました。
この発電システムを導入することで、年間の共用部消費電力の約20%を賄うことができ、年間約7.8tものCO2削減効果が見込まれています。
参考:マンション向け小型バイオガス発電システムを開発|共同通信PRワイヤー
パナソニック インダストリー×エア・ウォーター
パナソニック インダストリーとエア・ウォーターは、家畜ふん尿由来のバイオメタンを活用した地産地消型エネルギーモデルの構築に取り組んでいます。2025年度を目途に、パナソニック インダストリーの帯広工場において、エア・ウォーターが製造・供給するバイオメタンの利用を開始する予定です。
エア・ウォーターは帯広市に国内初の液化バイオメタン製造工場を設置し、地域の酪農家から集めた家畜ふん尿からバイオメタンを製造しています。パナソニック インダストリーは、このバイオメタンを工場の発電設備で活用するほか、電気自動車部品の製造工程で使用する水素の原料としても利用します。
この取り組みにより、2027年度には帯広工場のCO2排出量を2022年度比で約5割以上削減する見込みです。両社は、環境負荷低減と地域貢献を両立する持続可能なエネルギー活用モデルの確立を目指しています。
参考:業界初※、家畜由来のバイオメタンを工場電力と製品材料に活用~北海道・帯広で地産地消型エネルギー活用モデルを構築し、27年度CO2排出量半減を実現~|パナソニック インダストリー株式会社
日揮ホールディングス×コスモ石油×レボインターナショナル
日揮ホールディングス、コスモ石油、レボインターナショナルは、持続可能な航空燃料(SAF)の大規模生産・供給のため、合同会社「SAFFAIRE SKY ENERGY」を設立しました。
レボインターナショナルと日揮ホールディングスが原料となる廃食用油の調達、コスモエネルギーグループ(コスモ石油並びにコスモ石油マーケティング株式会社)が SAF製造及び需要家への販売を担い、各社の知見・ノウハウを結集して安全・安定の燃料サプライチェーンの構築を実現しました。2025年度から国内エアライン向けにSAFの供給を開始する予定です。
この事業は、NEDOの「国産廃食用油を原料とするSAF製造サプライチェーンモデルの構築」助成事業として採択され取り組んできたもので、大規模生産されるSAFとしては国内初となります。
参考:国内初の国産SAFの大規模生産の実現に向けた 新会社「合同会社SAFFAIRE SKY ENERGY」の設立について | プレスリリース | コスモエネルギーホールディングス
バイオテクノロジー応用食品

TOPPANホールディングス×ちとせグループ
TOPPANホールディングスとちとせグループは、医療・医薬、食糧、エネルギー領域での事業加速を目指し、戦略的提携を締結しました。本提携では、ちとせグループの品種改良技術やバイオ関連生産技術とTOPPANグループの3D細胞培養技術「invivoid®」を組み合わせ、2つの分野で協業をおこなっています。
1つ目は「3D細胞培養事業」で、個別化医療技術の実現や培養肉などの細胞性食品の製造コスト低減を目標とした取り組みをスタート。2つ目は「藻類由来のバイオプラスチック開発」で、TOPPANグループはちとせグループの「MATSURI」プロジェクトに参画し、環境配慮型パッケージの開発を進めています。
参考:TOPPANホールディングス、バイオエコノミーの構築に向けてちとせグループと協業|PR TIMES
マルハニチロ×インテグリカルチャー
マルハニチロとインテグリカルチャーは、細胞培養魚肉の共同研究をおこなっています。インテグリカルチャーが独自に開発した「食品グレード培養液」と「低コスト細胞培養技術(CulNet System™ )」を活用し、魚肉細胞を培養します。両社はこの協業により、世界で高まる魚の需要に対して、環境リスクを最小限にしながら持続可能な魚タンパクを供給することを目指しています。
参考:細胞培養スタートアップのインテグリカルチャー株式会社、マルハニチロ株式会社と「細胞培養魚肉」の共同研究を開始。培養魚肉の世界最速商業化を目指す。 | インテグリカルチャー株式会社のプレスリリース
バイオ素材

旭化成×三井物産
旭化成と三井物産は、バイオマス由来のメタノールを活用した「エンジニアリングプラスチック」の製造に向けて協業しています。三井物産は、アメリカ合衆国で都市廃棄ごみから生成されるバイオガス由来のRNG(再生可能天然ガス)を調達し、現地の合弁会社でバイオメタノールを生産します。旭化成はこのバイオメタノールを原料として、従来品と比較してカーボンフットプリントの低いエンジニアリングプラスチックを日本で生産します。
両社は国際持続可能性カーボン認証「ISCC PLUS認証」を取得し、バイオマス由来の原料から最終製品までの一貫した生産体制を確立しました。この取り組みを通じて、製品のカーボンフットプリント削減に貢献するとともに、都市廃棄物の有効活用による循環型社会の実現を目指しています。
参考:旭化成と三井物産、バイオメタノールの供給・調達体制構築|三井物産株式会社
DIC×東レ×ダイセル×双日×電力中央研究所×Green Earth Institute
DICらは、NEDOのグリーンイノベーション基金事業において、「水素細菌を活用したバイオものづくり技術の開発」に取り組んでいます。
本プロジェクトは、CO₂とH2を原料として化成品や飼料原料を生産する革新的な技術開発を目標とするもので、化成品を効率よく生産できる水素細菌の開発を進行中です。副生される菌体残渣は飼料の代替タンパク源として活用することもでき、食料問題に対する解決策としても期待されています。
現在、各社はCO₂の資源化やバイオ化学品の生産プロセス開発などに取り組んでおり、2030年までに実用化することを目指しています。
参考:「水素細菌によるCO₂とH₂を原料とする革新的なものづくり技術の開発」を開始~NEDOグリーンイノベーション基金事業で技術開発とオープンイノベーションを加速~|双日株式会社
住友化学×Ginkgo Bioworks
住友化学とGinkgo Bioworksは、バイオものづくりの連携を強化し、合成生物学を活用した機能化学品の開発に取り組んでいます。2021年からライフサイエンス領域での研究開発を進めてきた両社は、2023年7月に機能化学品の量産化に向けた新たな共同研究契約を締結しました。
このプロジェクトでは、Ginkgo Bioworksが発酵用の微生物開発をおこない、住友化学が製造プロセスの開発と開発した微生物をスケールアップさせることで商業化できるよう、検討を進めています。両社は、化石資源を原料とした従来の製造方法を、微生物による発酵生産へと置換することで機能化学品を量産化し、ライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガス排出量を削減することを目指しています。
参考:住友化学とギンコバイオワークス、バイオものづくりの連携を強化~合成生物学を用いた機能化学品の開発に着手~|住友化学株式会社
三井化学×開成
三井化学と開成は、世界初となるバイオポリプロピレン(バイオPP)の実用化に向けて協業しています。現在、ポリプロピレンは自動車部品や食品容器など幅広い用途で活用されていますが、原材料が石油であるため、生成の段階で温室効果ガスが発生しています。
この現状に対して両社は、非可食植物を主原料とするバイオマスから発酵によりイソプロパノール(IPA)を製造し、脱水してプロピレンを得る「IPA法」という世界初の製法を確立しました。この手法により、従来のバイオマス製法と比較して、より低コストでのバイオPP製造を実現しました。
さらに、開成社がバイオマス原料を供給し、その製造過程で発生する廃棄物を回収・有効活用することで、バイオマス発電による電力供給や肥料製造を行う資源循環型モデルを構築しました。これにより、サプライチェーン全体でのCO₂排出量の大幅削減を目指しています。
参考:三井化学グループのバイオポリプロピレン、環境省の委託事業に採択〜 バイオマスプラスチック市場の拡大に必要な世界初の技術。工業レベルでの実証に挑戦 ~|三井化学株式会社
日揮ホールディングス×バッカス・バイオイノベーション×カネカ×島津製作所
日揮ホールディングスらは、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、NEDOグリーンイノベーション基金事業に採択された「CO₂を原料とする生分解性バイオポリマーの開発」に取り組んでいます。2023年度から2030年度までのプロジェクト期間で、各社の強みを活かした役割分担により、持続可能なバイオものづくりの実現を目指しています。
本プロジェクトでは、CO₂を原料とする新たな生産微生物の開発から実証プラントでの生産実証、さらには高効率な発酵プロセスの開発まで一貫した技術開発をおこないます。特徴的なのは、最新のテクノロジーを導入し、デジタル技術を活用した細胞のデザインやAIによる生産性評価などを実施している点です。これにより、微生物育種からプロセス開発までをワンストップかつスピーディーにおこなうことが可能になりました。
このような複数社による統合的なアプローチは、バイオものづくり分野における新たなモデルケースとして注目されています。
参考:「CO₂からの微生物による直接ポリマー合成技術開発」がNEDOグリーンイノベーション基金事業に採択|日揮ホールディングス株式会社
バイオ領域に複数社で取り組む際のポイント

バイオ領域の研究開発は、技術の複雑さや投資規模の大きさから、複数社での協業において意思決定の遅れや技術統合の困難さなどの課題が生じやすい傾向にあります。そこで本記事の締めくくりとして、バイオ領域の取り組みを複数社で行う際のポイントを3つ紹介します。
1.研究開発全体を通じた共通ビジョンと役割分担
バイオ領域の共同研究開発では、取り組みの方向性に関する認識を揃えるためにも、各社が共有できる明確なビジョンを設定し、それに基づいた役割分担を確立することが重要です。例えば、微生物育種技術を持つバイオベンチャー、プロセス開発に強い大手企業、分析技術に長けた専門企業など各社の強みを最大限に活かせる体制を構築します。
また、経営層が積極的にコミットし、予算配分や組織体制の意思決定を迅速におこなうことで、複数社間の調整コストを最小限に抑えることができます。特にバイオ領域では技術の不確実性が高く、状況に応じた柔軟な対応が求められるため、トップの関与は成功の鍵となります。
2.実験室段階からのスケールアップと品質管理
バイオ製品の生産において課題となるのが、微生物の培養条件や原料の品質管理、製造工程の最適化といった技術面です。これらの課題に対して、各社の強みを活かした標準プロトコルを確立することで、品質の安定化と製造コストの低減を同時に実現できます。
また、バイオ製品特有の厳格な安全性試験や品質管理についても、複数社の協業は大きなメリットをもたらします。各社が保有する検査技術や品質基準を統合し、共同で品質保証体制を構築することで、規制当局への対応や市場展開をより円滑に進めることができるでしょう。
3.開発スピードと投資コストの分散
バイオ領域の研究開発には膨大な費用がかかり、単独企業での取り組みは大きなリスクを伴います。そのため、複数社で投資を分担し、リスクを分散させながら成果を共有する仕組みが重要です。
成功のポイントは、研究フェーズごとの明確な評価基準を設定し、追加投資や方針転換を迅速に判断できる体制を整えることです。市場動向や技術革新に応じて各社の役割を柔軟に見直せる枠組みも必要です。TOPPANホールディングスとちとせグループの事例では、3D細胞培養と藻類由来バイオプラスチックという異なる時間軸の開発を並行して進めることで、短期的な成果と長期的な成長機会の両立を図っています。
このように、即効性のある研究と将来の大規模展開を見据えた先端技術開発を組み合わせることで、持続的な共同開発体制を構築できるでしょう。
まとめ
バイオは、環境問題や食糧問題など人類が直面する重要課題の解決に貢献する革新的な技術として注目されています。ですが、その実用化には高度な技術力と大規模な設備投資が必要なため、単独企業での取り組みには限界があります。そこで、微生物育種技術を持つベンチャー企業と、スケールアップのノウハウを持つ大手企業、分析技術を持つ専門企業など異なる強みを持つ企業が連携することで、効率的な技術開発と事業化を実現しています。
このような企業間の協創を成功に導くためには、共通ビジョンと明確な役割分担の設定、実験室段階からの品質管理体制の確立、開発スピードと投資コストの最適な分散が重要です。これらのポイントを押さえた企業間の協業こそが、持続可能な社会の実現に向けた重要な推進力となるでしょう。
サステナビリティハブでは、バイオに関する記事を複数公開中です。是非あわせてご覧ください。