ACTION取組み

日揮グループの太陽光発電への取り組み〜確かな実績と技術力で「脱炭素化」に貢献〜

事例 日揮グループの紹介
目次

脱炭素への取り組みが地球規模での課題となった近年、先進各国は再生可能エネルギー(再エネ)の主力電源化に舵を切っています。日本においては、そのリードタイムの短さとFIT制度*における買取価格の高さから、「太陽光発電」が10年来の再エネ普及を牽引してきました。 

※*FIT制度・FIP制度について知りたい方は以下の記事をご覧ください。


【2022年4月】FIT制度に加えFIP制度も|二つの制度の違いとは|サスティナビリティハブ

今回は、再生可能エネルギー普及の背景にある「FIT制度」について説明するとともに、2022年4月に始まる「FIP制度」の概要や変更点についても解説します。

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日揮グループの太陽光発電普及に関する取り組みは、2000年初頭の建築系プロジェクトにおける省エネ・創エネ提案から始まりましたが、医薬品工場や病院向けの太陽光パネルの屋上設置において実績があります。

そこで今回は、「日揮グループの太陽光発電への取り組み」のこれまでとこれからを詳しくご紹介していきます。

日揮グループの太陽光発電のこれまで

1.太陽光発電 × 蓄電池 =「自立型電源システム」構築への着手

自立型電源システムイメージ図

まずは日揮グループにおける「太陽光発電」のこれまでをご紹介します。

2012~2014年度には、資源エネルギー庁による「次世代エネルギー・社会システム実証事業」に参画し、太陽光発電設備と蓄電池設備を組み合わせた「蓄電池複合化システム」の技術開発にいち早く着手しました。このシステムは、停電時にも自立した電力の供給ができる、自立型の電源システムです。
それに加え、ビル施設内におけるエネルギー管理の最適化を目指す「ビルディングエネルギーマネジメントシステム(BEMS)」や、地域のエネルギー需給バランスを調整する「デマンドレスポンス(DR)」の実証もおこないました。 

2.大型太陽光発電所の建設について

2012年7月に始まったのは、再エネ普及を目的とする「FIT制度(固定価格買取制度)*」。原子力・大型火力に頼る国内電源網の脆弱さが東日本大震災によって露呈したことが1つのトリガーとなりました。

(*FIT制度についてご紹介した記事はこちらからご覧ください。)

この制度により、再エネのなかでも燃料の補給が不要、かつ事業化に要するリードタイムが短い特徴を持つ「太陽光発電」は、買取価格の高さ(¥40/kWh-事業用、¥42/kWh-住宅用)などの観点から注目を受け、爆発的に普及しました。

2012年のFIT制度開始時には「5.6GW(住宅用4.7GW、産業用0.9GW)」であった太陽光発電設備容量は、2020年3月末時点には「55GW*(住宅用11.6GW、産業用43.6GW)」とおよそ10倍に。(*資料によっては56GWとの記述もありますが、「再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法情報公開用ウェブサイト」都道府県別導入量では四捨五入により55GWとなるため、この値を採用。)

国内における全原子力発電所の総設備

容量は53.4GW(19ヶ所/60基の廃炉分も含む)のため、太陽光発電設備は半世紀をかけて建設してきた原子力発電所と同等の設備を、8年程で建設したことになります。(※出力規模において)

 (参照:資源エネルギー庁「FIT制度の抜本見直しと再生可能エネルギー政策の再構築」「2030年度におけるエネルギー需給の見通し(関連資料)」、環境エネルギー政策研究所「データでみる日本の自然エネルギーの現状(2019年度 電力編)」)

太陽光発電設備の画像

日揮グループはこのFIT制度開始を見込み、いち早く大型太陽光発電所建設事業に着手。2013年3月には26.5MWDC/19MWAC の発電量を誇る発電所を立ち上げ、運転を開始しました。

本プロジェクトには事業者として出資し、EPC(設計・調達・工事)とO&M(運転・保守)を一気通貫で遂行しました。事業性評価としては「年間想定発電量 vs 投資コスト」のシミュレーションをおこない、最適な太陽電池容量(DC)と系統連系容量(AC)*の比率を導き出しました。(=過積載率。このプロジェクトでは、26.5MW(DC)/19MW(AC)= 1.4)

*太陽光発電所の容量データは、蓄電池容量(直流)の合計による場合(DC)と、系統に交流連系するPCS容量(AC)の合計による場合があります。日揮グループ実績データに関しては、誤解を招かないようDCベースとACベースを明記。

過積載率の概念は、設備投資費(CAPEX)がかさむ国内において現在は当然のものとなっていますが、制度開始の当初は存在せず、日揮グループがこの過積載率の概念を導入した草分け的存在であったと認識しています。以後、主に容量1MW以上のメガソーラーの受注に注力し、2022年5月現在で799MW DC / 529MW AC(20件合計)のプロジェクトを国内で完成させました。現在は、72MW DC /48MW AC(2件合計)を建設中です。

2020年3月末時点の太陽光発電設備は55GW(住宅用11.6GW、産業用43.6GW)でしたが、再生可能エネルギー 事業計画認定情報の都道府県別導入データより算出すると、2021年度12月末時点には55GWから64GW(住宅用13.0GW、産業用 51.3GW)に増加しています。そのうち1MW以上のメガソーラーは24.0GW あり、これは、日揮グループが国内メガソーラー分野においての2%強を建設したことを表します。

 (参照:経済産業省 資源エネルギー庁「再生可能エネルギー 事業計画認定情報」>都道府県別認定・導入量2021年12月末時点)

国内最大級のメガソーラー建設

日揮グループが手がけたメガソーラー建設実績の1つが、岡山県内に建設した国内最大のメガソーラー(257MW DC /150MW AC)です。

 このプロジェクトは、電力網の連系点から発電所まで20km近い山間部間を特別高圧(77kV)ケーブルによって自営線接続し、また、太陽電池モジュール750,000枚以上を195haに渡る広大な山間部に敷設するものでした。そのため工期には30ヵ月を要し、国内でもあまり例を見ない大がかりな工事でした。

海外拠点におけるプロジェクト遂行

海外での太陽光発電設備建設に向けたトレーニング

さらに、日揮グループの太陽光発電における取り組みは国内だけではありません。海外での取り組みは、2015年にスタートしました。講師は、国内メガソーラー建設プロジェクトの遂行経験者とし、2015年6月にフィリピンのグループ会社(J-Phill)向けに教育を実施。そののち、海外拠点における自立的受注活動を開始しました。

翌年の2016年2月には、ベトナム・シンガポール・インドネシア・アメリカのグループ会社メンバーが横浜に集合し、“To be Top Solution Provider for Solar Photovoltanic Project!!” のスローガンのもと1週間に渡る技術伝承がなされ、ベトナムにおいては2018年の受注(70MW DC)を皮切りに、2022年現在、屋根置き太陽光を含めた「192MW DC」が完成しています。さらに日揮グループの高い技術力・工事遂行能力・コスト競争力をご評価いただき、モンゴル、フィリピンでも複数の案件が建設中です。

 【受注例】

  • モンゴルでのプロジェクト(5.5MW DC):蓄電池(NAS電池-3.6MWh)とのハイブリッドシステムを電力網に連系して電力調整を行う電力制御システムを含めて日揮グループ(JGBL)にて受注。
  • フィリピンでのプロジェクト(94MW DC):中国EPCコントラクターとの競争入札の末に受注。山岳地における工事であり、発電所から電力網連系点までを超高圧(230 kV)の送電鉄塔にて自営線接続する。

 

今後10年を見据えた際の太陽光発電における課題・展望

大規模太陽光発電設備

2050年のカーボンニュートラル実現を視野に入れた今後の10年。これを「勝負の10年」と呼ぶ声は、社内外から聞こえてきています。果たして太陽光発電はこの10年でどうなっていくのか、課題と展望を整理してみましょう。

1.太陽光発電所建設に適した土地の不足

2050年のカーボンニュートラル実現に向け、第6次エネルギー基本計画(2021年10月)では、2030年のCO₂削減目標を46~50%としています。そしてそのために、2030年度の再エネ発電電力量比率を2019年度の19% から、36~38%に倍増しようとしています。

 ※2019年度の電源構成に占める再エネ比率については、18%とするものと19%とするものがある。集計上の差と思われるため、ここでは19%を採用。 

 36~38%のうち、太陽光発電に期待される導入比率は14~16%。設備容量で表すと103.5~117.6GWとなります。つまり過去10年で導入されたものと同規模の設備を、今後10年で建設する必要があるのです。

 (参照:環境エネルギー政策研究所「データでみる日本の自然エネルギーの現状(2019年度 電力編)」「エネルギー基本計画の概要」、資源エネルギー庁「2030年度におけるエネルギー需給の見通し(関連資料)」)

 しかし、国内において大型太陽光発電所向けの開発を伴わない適地はほとんど残っていない状況です。今後は経済産業省、環境省・農林水産省、国土交通省など関係省庁の先導により、次のような施策の実施が見込まれています。 

  • 公共施設・公共所有地への率先導入
  • 空港・港湾・公園・鉄道などのインフラ施設を活用した導入促進
  • 地域と共生する形での適地確保(ポジティブゾーニング)
  • 民間企業による自家消費型太陽光発電導入支援 など

 また農地・用水池の活用も目標達成に向けては不可欠な要素となるでしょう。 

  • 農地の活用
     →国内にある400万haの農地の内、27.6万haが荒廃農地、42.3万haが耕作放棄地と言われる(※)。これら荒廃農地・耕作放棄地の内12万haを転用できれば、今後10年で予定される60GW相当の発電所建設が可能に。 
  • 用水池の活用
     →水上設置型太陽光発電所の建設。

 (参照:農林水産省「荒廃農地の現状と対策について」)

2.安定供給に向けた措置の必要性の高まり

太陽光発電所が林立した九州・東北・四国においては、昼間の電力がだぶつき、好天の際には出力制御が実施されています。天候に依存する「自然変動電源」としての太陽光発電だけでの普及は、ほぼ限界にあるといえそうです。 このような状況下、2022年4月にエネルギー供給強靭化法が施行され、再エネ電力の買取はFIT制度から「FIP(Feed-in Premium)制度」に移行しました。

(参照:資源エネルギー庁「FIP制度について」)

 新しく移行したFIP制度下では、電力の取引価格は市場連動制に。これまで送配電事業者(電力会社)が責を負っていた「電気の需給バランス」に対し、再エネ発電事業者も責任を持つことになったのです。発電事業者は自身の発電量を事前に予測し、電力網における想定電力需要と比較した上で発電計画を立て、予測値と実態にずれが生じた場合は「ペナルティ」を課せられることになります。

 そのペナルティを回避して利益を確保するには、「高度な需給予測」と「蓄電池などを活用した、適切なエネルギー管理」による充放電タイムシフトが重要となります。

 再生可能エネルギー政策は「普及促進」から、市場原理に基づいた「安定供給重視」のフェーズに移行し、今後に事業者として生き残るためには、電力の安定供給に資する高い技術力およびコスト競争力が不可欠になったといえるでしょう。その鍵を握る技術は、蓄電池と電力調整制御技術(Energy Management System-EMS)となります。

課題解決に向けた日揮グループの取り組み

太陽光発電設備を点検する作業員

次に、「発電所の建設適地不足への対応」と「電力の安定供給の実現」のための、日揮グループの主な取り組みを3つご紹介します。

太陽光発電所の水上設置に向けた安全性検証・技術開発

日揮グループは再生可能エネルギー分野のグローバルエキスパート企業と協働で、太陽電池の水上設置における風況シミュレーションを実施。強風下の安全性検証を進めています。さらに用水池を活用した「水上設置型太陽光発電所」建設に向け、バックボーン技術の確立に貢献していきます。

太陽光発電設備の水上設置における風況シミュレーションと風洞実験の画像水上設置における風況シミュレーションと風洞実験

次世代太陽電池の実用化へ

太陽電池には、シリコン系・化合物系・有機系の3種類がありますが、変換効率・コスト競争力の観点から、現在普及している太陽電池の95%以上がシリコン系となっています。

しかしここ数年で、“次世代太陽電池” と目される有機系の「ペロブスカイト太陽電池」が飛躍的成長を遂げ、シリコン系に対抗しうる状況となってきました。

 ペロブスカイト太陽電池は塗布技術をもって、フィルム上に有機系電極を形成する仕組みで「シリコンに対抗しうるゲームチェンジャー」として注目されています。つまり、シリコンの厚みを理由に曲げることができなかった従来の太陽電池とは異なり、軽量で柔軟性のある太陽電池の製造が可能に。 

現在は各国がペロブスカイト太陽電池の実用化に向けてしのぎを削っており、日本政府は、2050年のカーボンニュートラルに向け立ち上げた2兆円の「グリーンイノベーション基金」のうち498億円を、ペロブスカイト型太陽電池の開発と実用化の枠組みとしています。また主要材料であるヨウ素は、日本が世界シェア30%を占めており、数少ない日本の資源を活用した技術ともいえます。

 (参照:資源エネルギー庁「再生可能エネルギー政策の直近の動向」)

 日揮グループは、当イノベーション基金において、スタートアップ企業として唯一採択されたエネコートテクノロジーズに出資しており、ペロブスカイト太陽電池を用いた施工・設置方法や効率的な発電システムの開発に取り組んでいます。

また低照度下でも発電できるこの太陽電池の特徴を生かし、スマート化が進むプラント・工場におけるIoT/センサー向け電源としての利用も目指します。

ペロブスカイト太陽電池画像

ニュースリリース 2022/05/23「CVCファンドを通じて、次世代太陽電池を開発するエネコートテクノロジーズに出資」     

「コスト×CO₂削減量」の最適化をサービスとして提供

さらに日揮グループは、2012年度より蓄電池の活用・EMS技術の重要性を認識した取り組みをおこなってきた実績を活かし、脱炭素化経営支援サービス「DeCaaS(De-Carbonization as a Service)」の一環として「電力インフラDeCaaS」を立ち上げ、これを推進しています。

 【電力インフラDeCaaSの主なサービス】

  1. FIP制度下における発電計画と実発電量のインバランス解消を目的とした「発電バランシングサービス」 
  2. 再エネ・電池・EMSにより、地域における電力の脱炭素化とレジリエンスの強化を目指す「マイクログリッドサービス」
  3. 需要家側の創エネを促し自家消費を目指すとともに、余剰電力を束ね市場取引を行う「調整力サービス」

電力インフラDeCaaSの主なサービスは電力調整技術(EMS)に主眼を置いたサービスですが、その根幹には「大容量で安全性に優れ、かつコンパクトな蓄電池」の存在が欠かせません。また蓄電池の充放電を制御する、パワーコンディショナー(PCS)との組み合わせも重要です。

日揮グループでは、プラント建設にあたり世界中のメーカーデータを集めて技術・コスト評価を行ってきた経験をもとに、エンドユーザーのニーズに応じた最適な蓄電池とPCSの組み合わせをご提案します。 

社会課題となった使用済み蓄電池の増加にも対応

電気自動車(EV)をトリガーとした大容量蓄電池市場は急速に拡大しており、蓄電池の技術開発は日進月歩です。これは「技術の“レガシー化”が目まぐるしい速度で進んでいる」ことと同義ともいえ、使用済み蓄電池の増加も今後は大きな社会的課題となってきます。 

日揮グループは蓄電池開発の最前線をウオッチし、素材開発から組み立てまでをエンジニアリング活動に取り込むため、新型蓄電池の開発している外部パートナーとの連携を模索し中古蓄電池を使った調整力サービスにも取り組んでいます。

お客さまに寄り添うサービスの提供を

山中の太陽光発電設備

日揮グループはこれまで、社員一人ひとりに脈々と受け継がれる進取の精神を大切に、時代の潮流に合わせた大きな変化を生み出そうと取り組んでまいりました。なかでも国内プロジェクトを端緒にスタートした「太陽光発電」への取り組みは、今やグローバルに展開され、技術力・コスト競争力ともにトップランナークラスに足り得ると自負しています。 

 VUCA(ブーカ)とも称される将来の予測が困難な時代ではありますが、日揮グループは「顧客の満足」を社是とし、常にお客さまに寄り添ったサービスを提供できるよう、これからも技術研鑽と体制強化に努めてまいります。  

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