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「障害の有無を意識せず、共生できる世の中を目指して」| 日揮パラレルテクノロジーズ社長 阿渡健太

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目次

日揮ホールディングスの特例子会社として2021年1月に誕生した日揮パラレルテクノロジーズは、障害者雇用の考え方を根本から見直し、「IT戦略人財雇用」という新たな軸を定め、まだ歴史の浅い分野であった精神・発達障害者雇用の可能性を大きく拡げました。今回の記事では、JPTの社長でありパラテコンドーの選手としても活躍する阿渡健太氏に、パラアスリートとしての活動やYouTuberとしての活動、仕事とプライベートの両立などについてお話をうかがいました。(インタビュアー:サステナビリティハブ編集部)

JPT設立の経緯から今に至るまでの取り組みや成果、今後の展開についてはこちらの記事をご覧ください。


「目指すのは、誰もが対等に働ける社会」 | 日揮パラレルテクノロジーズ社長 阿渡健太|サステナビリティハブ

日揮パラレルテクノロジーズは障害者雇用の考え方を根本から見直し、「IT戦略人材雇用」という新たな軸を定め、まだ歴史の浅い分野であった精神・発達障害者雇用の可能性を大きく拡げました。今回の記事では、パラアスリートとして活動を続けながら、当時副社長としてJPT設立にかかわり、2024年2月にJPTの社長に就任した阿渡健太氏に、JPT設立の経緯から今に至るまでの取り組みや成果、今後の展開についてお話をうかがいました

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プロフィール

学生時代・入社の経緯

――阿渡さんはどのような学生時代を過ごしていましたか。

小学1年生からサッカーを始め、将来はプロサッカー選手を本気で目指していました。生まれつき両手がないため、フィジカルコンタクトする場面で課題がありましたが、自己分析をして自分の長所であるスピードをいかし、少ないタッチ数で相手を崩すことを意識していました。高校時代は神奈川県の強豪校のレギュラーとして試合に出場していましたが、さすがにプロになるのは無理でしたね(笑)。


――どのような経緯で日揮に入社することになったのでしょうか。

裕福な家庭ではなかったこともあり、高校を卒業したら大学に進学せず働こうと決めていました。高校卒業前に参加したハローワーク主催の障害者向け合同面接会が日揮との最初の出会いでした。障害者の就職は狭き門で、一般的な就職活動のように「○○をしたいからこの会社に就職したい」という考え方ができるほどの選択肢はなく、働く場所を見つけることにとても苦労しました。

入社後の業務・やりがいを感じる瞬間

――入社後はどのような業務に携わってきましたか。

入社後からずっと人事畑を歩んできました。最初は給与系の業務に携わり、途中で福島での現場駐在も経験しました。2017年からは仕事とパラテコンドーの競技生活を両立するようになりましたが、東京パラリンピックの選考会に敗れた際に一旦競技をストップし、キャリアに軸を戻していくことにしました。その時に労務チームから採用チームに異動し、中途採用や障害者採用を担当するようになりました。そこからJPTの立ち上げへとつながっていきました。


――現在、JPTではどのような業務をされていますか。

JPTでは、会社の経営方針の決定と執行というメイン業務のほか、人事・財務・総務などのコーポレート業務全般もおこなっています。


――仕事をしていてやりがいを感じるのはどのような瞬間ですか。

やはり「ありがとう」と感謝された時ですね。皆さんもそうなのではないでしょうか。自分が持っているスキルや経験を活かして、人の役に立てた時が一番嬉しいです。障害者として生まれてきたので、そんな自分だからこそできることで感謝された時は格別に嬉しいですし、やりがいも感じます。

パラテコンドー選手・YouTuberとしての活動

――2017年からパラテコンドー日本代表選手として活躍されているそうですが、パラテコンドーを始めたきっかけは何でしたか。

パラテコンドーを始めたのは、東京パラリンピックでメダルを取ってメダリストパレードに出るという目標を立てたことがきっかけでした。残念ながらそれが叶わなかったので、今は2024年のパリパラリンピックでメダルを取り、メダリストパレードに出ることを目指して日々練習に励んでいます。

競技生活と並行して、次世代のパラテコンドー選手の育成にも取り組んでいます。コロナ禍をきっかけにスタートしたオンラインでのパラテコンドー教室や普及イベントを定期的に開催してきたのですが、今では私が所属しているテコンドー道場にパラの生徒が5人も通ってくれるようになりました。


――パラテコンドーという競技の魅力について教えてください。

パラテコンドーは、他の多くのパラスポーツと違い、特殊な道具を使わずに身一つで戦うのが面白いところだと思います。

蹴り技の多彩さや、障害の違いによって戦術を変えて戦うところが見所です。例えば私のように腕が短い選手は、相手の蹴りを腕でガードすることができないため、ステップを細かくすることで狙いを定めづらくしたりします。

2020年の東京パラリンピックで正式種目になったばかりなので、国内での競技人口はまだ少ないですね。選手層が厚いのはトルコやロシアなどのヨーロッパ勢で、強豪選手がひしめいています。


――YouTuberとしても活動されていますが、どのようなきっかけでスタートしたのでしょうか。視聴者さんからの反響についてもお聞かせいただけますか。

パラテコンドーの日本代表選手として活動し始めてから、ありがたいことに自分の影響力が少しずつ高まってきたのを感じました。この影響力を使えば微力でも社会課題の解決につなげられるのではないかと思ったのがYouTubeの投稿を始めたきっかけです。おもに「パラテコンドーの普及」 と、「障害者目線での情報発信」の2つを目的にコンテンツを作っていますが、反響が大きいのは圧倒的に後者ですね。

特に、「両手がなくてどうやるの?」というシリーズで、「トイレ」「お風呂」「字を書く」「服を着る」「自転車に乗る」というような日常の動作を実際にどのようにおこなっているのかを解説した動画には、たくさんの反響がありました。

障害当事者の方やその親御さんから「勇気をもらいます」「明るく楽しそうな様子を見て、私も頑張ってみようと思いました」「手がなくても工夫すればできることがわかり、とても参考になります」などの温かいメッセージをいただくことも多いですし、健常者の方から「普通に色々なことが出来るんですね。驚きました」というようなコメントをいただくこともあります。もちろん好意的な反応ばかりではありませんが、それもウェルカムです。このような情報発信は私にしかできないことだと思っていますから。


――阿渡さんのポジティブな姿勢の原点はどこにあるのでしょうか。

私は幼少期から高校生の頃までずっと健常者に囲まれて過ごしてきたので、「自分一人で何でも出来るようにならないといけない」「人より努力して、何とか健常者についていかないといけない」という感覚で生きてきました。ポジティブ思考はその過程で養われたような気がします。でも、最近は「健常者と同じようにできなくてもいいんじゃない?」と少し肩の力を抜いて考えられるようにもなりました。パラスポーツを始めたことも影響しているかもしれません。

今でも強く印象に残っているのは、パラテコンドーで海外遠征した際に、障害者の人たちがとても楽しそうにしていたことです。日本のように「必死に頑張っている」という感じではなく、みんな自然体で人生を楽しんでいるんです。街を歩いていても、ジロジロと見るような視線はなく、ニコっと笑ってくれる。もちろん文化の違いもベースにあると思いますが、とても居心地がよかったですね。そうした経験もあって、「もっと楽に生きてもいいのかな」とか、「そもそも健常者と比べる必要なんてないよね」という風に、少しずつ意識が変わってきた気がします。

休日の過ごし方・ワークライフバランス

――仕事とパラテコンドーの両立でお忙しい日々だと思いますが、休日はどのように過ごしていますか。

休日はなるべく予定を入れずに自分の時間をつくるように心がけています。面白みはありませんが、散歩したり、お気に入りのコーヒーを飲んだりする時間が癒しですね。たまに行く銭湯のあとにキンキンに冷えたビールを飲むひとときが最高の時間です!


――ワークライフバランスはどのようにとっていますか。

仕事とプライベートのバランスがとれているのかは、正直なところ自分でもよくわかりません。仕事もプライベートも自分がやりたいことだけしているので、バランスをとる必要性をあまり感じていないのかもしれません。ただ常に意識しているのは、今目の前のことに全集中することです。

実現したい社会とは

――最後に、これから実現していきたい社会や、夢などがありましたら教えてください。

抽象的な表現になってしまいますが、「障害者が街を歩いていても、違和感のない世の中」にしていきたいですね。私はもう慣れましたが、街を歩いているとジロジロと見られたり、「あの人、手がないよ」「気持ち悪い」などと言われたりするのは日常茶飯事です。

ですが、普段から一緒に過ごしている同僚や友人は、例えばジャンケンをする時になって「ああ、そういえば健太(私)は手がなかったね!」と気付くくらい、私の障害を意識せずに受け入れてくれています。これは私が普段から障害を感じさせない振る舞いをしているからではありません。いつも近くにいて見慣れたから、当たり前に受け入れているだけのことなんです。

この「見慣れる」という環境をつくるためには、障害者がどんどん表に出て、自分を表現することが大切になってきます。でも、ジロジロと奇異の目で見られるのが怖くて外に出られない障害者もたくさんいます。だからこそ、障害当事者として表に出て発信していくのが私の存在意義だと確信していますし、YouTubeでの活動もそのひとつの手段だと思っています。

人間は本来、それぞれ違っているのが当たり前で、障害を持つ人はその違いが少し大きく出ているだけのことなんです。健常者・障害者とカテゴリー分けするのではなく、同じ「人間」として、当たり前のように共生する世の中であってほしいと思います。

まとめ

今回の記事では、日揮パラレルテクノロジーズ(JPT)の社長であると同時にパラテコンドーの選手としても活躍する阿渡健太氏に、仕事のやりがいや、パラアスリート・YouTuberとしての活動、実現していきたい社会などについてお伺いしました。

JPT設立の経緯から今に至るまでの取り組みや成果、今後の展開についてはインタビュー前半のこちらの記事をご覧ください。


「目指すのは、誰もが対等に働ける社会」 | 日揮パラレルテクノロジーズ社長 阿渡健太|サステナビリティハブ

日揮パラレルテクノロジーズは障害者雇用の考え方を根本から見直し、「IT戦略人材雇用」という新たな軸を定め、まだ歴史の浅い分野であった精神・発達障害者雇用の可能性を大きく拡げました。今回の記事では、パラアスリートとして活動を続けながら、当時副社長としてJPT設立にかかわり、2024年2月にJPTの社長に就任した阿渡健太氏に、JPT設立の経緯から今に至るまでの取り組みや成果、今後の展開についてお話をうかがいました

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組織の多様性を通してウェルビーイングを向上させる方法については、こちらの記事をご覧ください。


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