日本は水不足の国だった?バーチャルウォーターから見る課題と今後

日本は水不足の国だった?バーチャルウォーターから見る課題と今後

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    日本は水資源が豊富で、水不足とは無縁の国。そんなふうに思っている人が多いのではないでしょうか。しかし、日本は国内で使用する水量以上の水を「仮想水(バーチャルウォーター)」として輸入することで、日々の生活が成り立っていることはあまり知られていません。 

    つまり、海外の水不足や水質汚染は遠い国の話ではなく、日本に住む私たちの生活に直結するのです。今回は、日本が水不足という現状を踏まえ、その解決策を考察します。食品ロスの削減や衣料品のリサイクル促進など世界の水資源確保に対し私たちが貢献できることを意識してきましょう。  

    日本は水不足の国だった?  

    蛇口

    世界には雨が多い地域(多雨地域)がいくつかありますが、実は日本もその1つに位置し、年平均約1,700mmの降水量があります。これは世界平均の880mmの約2倍に相当するため、「日本は水資源が豊富で水不足とは無縁な国」と思っても不思議ではありませんよね。 

    前述の通り日本は大量の水を輸入しています。それは、外国製のペットボトル入りのミネラルウォーターを大量に輸入しているということではありません。日本が輸入しているのは「仮想水(バーチャルウォーター)」なのです。 

    仮想水(バーチャルウォーター)とは  

    仮想水とは、食料を輸入している国(消費国)が、もしその輸入食料を生産するとした場合に必要な水の量を推定したものです(出典1。 例えば、1kgのトウモロコシを生産するには、灌漑用水として1,800リットルの水が必要です。したがって、1kgのトウモロコシを輸入することは、1,800リットルの仮想水を輸入することを意味しているのです。  

    日本の仮想投入水総輸入量スライド出典:環境省「バーチャルウォーター」

    つまり、食品自給率が低く食料を輸入に頼っている日本では、仮想水の輸入量も必然的に増えてしまうのです。その観点からみると、日本は国内の年間かんがい水量より多い仮想水を輸入していることになりますね。ある意味、日本は水不足の国とも言えるのです。  

    海外の水に依存する降水量の多い日本 

    食料の輸入にともない大量の仮想水を輸入している日本。そのため、日本の食料事情は海外の水資源に大きく左右されてしまうことになります。つまり、ひとたび海外で水不足や水質汚染の問題が生じると、決して日本も無関係ではなく、我々の日々の生活に影響を与えてしまうのです。    

    さらに国内の食品ロスは、焼却処分する際の温室効果ガスにより地球温暖化を促進するだけでなく、生産に使用している水資源をも無駄にします。そのため、食品ロス削減への取り組みは一見すると水資源の確保に貢献していないようで、間接的に世界の水資源の確保に貢献するのです。  

    では、この仮想水は食料だけに限定される話なのでしょうか。実はそうではありません。衣料品の調達にも、大量の水資源が使用されているのです。 

    衣料品の調達にも大量の水を輸入している 

    環境省によると、国内で販売されている衣料品の98%は海外からの輸入で、これは同時に年間83億m3にものぼる仮想水を輸入していることを意味します。年間83億m3というと東京都で年間利用される水の約4倍以上にも及び、そのうち約9割綿の栽培のために使用される相当量です。 

    これだけ多くの仮想水を輸入している日本ですが、現状では輸入した衣料品の68%が可燃ごみ・不燃ごみとして廃棄されています。食品ロスと同じく衣料品の廃棄も、焼却処分の際に温室効果ガスを発生させるだけでなく、大量の水資源を無駄にしているのです。  

    注:綿は、「Thirsty Crop」と呼ばれる作物の一つで、稲作の2倍の水が栽培に必要です。ちなみに、綿の世界3大生産国は、インド、中国、米国です。

    想水(バーチャルウォーター)の課題と解決策 

    会議をする4人のビジネスパーソン

    仮想水を大量に輸入し続けることは、水資源の枯渇を招くことにつながります。とはいえ、食料自給率が低く生活に必要なものの多くを輸入に頼っている日本において、仮想水を減らすために何ができるのでしょうか。

    ここからは、各製品の仮想水量を見ながら、私たち一人ひとりが実現できそうな方法を考えていきましょう。   

    個人でできるバーチャルウォーター削減アイデア  

    食品別仮想水量グラフ

    まずは各製品の仮想水量を比較します。グラフを見ると、ジーンズ、Tシャツなどの衣類、そして食肉の仮想水使用量が突出して多いことがわかりますね。    

    このグラフからも分かる通り、私たちがまず取り組めることとしては、衣類の輸入量を減らすこと(具体的には、安易に衣類をごみに出さない、購入サイクルの見直しなど)や、廃棄量を減らすこと(ごみに出すのではなくリサイクル・寄付などのリユースにまわすことなど)が挙げられます。  

    また、食品についても同様にロスを減らすこと、肉食中心の食事から「地産地消」の野菜中心に変えることなどが考えられます。  

    企業でできるバーチャルウォーター削減アイデア   

    仮想水を削減する主体は、個人だけではありません。むしろ取引単位の大きい企業の対応も求められています。 

    具体的には衣類や繊維のリサイクルへの取り組み(技術開発、啓蒙活動など)を進めることや、日本国内で進められている汚染水の浄化技術や節水型農業技術の海外輸出を促進することなどが挙げられます。  

    企業での取り組みが進めば影響もより大きいものになります。仮想水は単位が大きく、あまり意識しにくい概念ではありますが、私たち一人ひとりが普段の生活から資源について理解を深めることで、中長期的に地球環境の改善が見込めるはずです。 

    まとめ 

    ダム

    日本は水資源が豊富で、水不足には無縁というイメージが強いですが、実際は国内で使用する水量以上の水を「仮想水」として輸入することで私たちの日々の生活が成り立っています。 

    つまり日本は、食物や衣料品の輸入によって、間接的に海外の水資源に依存しているのです。世界の水資源をサステナブルにするために、当事者として何ができるか、小さいことからでも考えてみませんか。 

    サステナビリティハブ編集部

    サステナビリティハブ編集部

    サステナビリティに関する情報を、日本から世界に発信していきます。