地球も救う?宇宙の「資源循環型食料供給システム」

地球も救う?宇宙の「資源循環型食料供給システム」

目次

    現在、米国が主導する「アルテミス計画」を中心として、人類の月面における長期滞在を見据えた動きが官民を問わず広がっています。そんななか、月面において「スマートコミュニティ」の実現を目指す取り組みがあることをご存知でしょうか。

    今回は、宇宙におけるサステナブルで快適な居住設備の実現を目指し農水省が進めている、「月面等における長期滞在を支える高度資源循環型食料供給システムの開発」戦略プロジェクトについてご紹介します。記事の後半では、月面スマートコミュニティと、地球のサステナブルな暮らしとの繋がりについても解説します。月と地球、先にサステナブルな世界を達成するのはどちらでしょうか?

    月の食料供給システムの開発プロジェクトが始動

    宇宙空間

    近年、宇宙開発利用の拡大に向けて国際的に協調・競争の動きが加速する中で、農林水産省は「月面等における長期滞在を支える高度資源循環型食料供給システムの開発」戦略プロジェクトを立ち上げました。

    プロジェクトの委託事業者には、インテグリカルチャー株式会社、株式会社ユーグレナ、千代田化工建設株式会社、日揮グローバル株式会社等を含むコンソーシアム(代表機関:一般社団法人SPACE FOODSPHERE)が選定されています。事業期間は2021年度から5年間で、月や火星の持続的な有人活動において活躍が期待される、高度資源循環型かつQOL重視型の食料供給システムの研究開発と実証設備の設計をおこないます。

    月面の長期滞在を支える「資源循環型食料供給システム」とは

    月は”極めて孤立した地“であり、地球からの物資補給は数・量ともに制約があります。そのような極地で人類が長期滞在するには、食料自給と資源再生による「持続可能な居住インフラ(=資源循環型食料供給システム)」が必要です。

    このシステムでは人の排泄物・野菜の根・排水などを再生し、それらを養分として野菜や微細藻類、培養肉などの食料を生産。同時に、野菜や微細藻類は、人が吐き出した二酸化炭素を酸素に再生します。すべての資源を循環させ、永遠に無補給で運用することを理想としつつ、本事業では「地球からの物資補給量を現実的な量に抑えること」を念頭に、可能な限り循環率を高める研究をしていきます。

    ※事業の詳細はこちら

    ちなみにマクロな視点で考えた場合、地球も宇宙の中で孤立した非常に高度な資源循環型システムといえます。その地球ですらすべての資源を循環再生することはできず、人類活動により、温暖化や資源枯渇が進んでいるのが現状です。完全な資源循環は宇宙と地球の両方で求められている技術なのです。

    将来的には月面スマートコミュニティの実現も?

    スマートコミュニティを説明すると、「主に再生可能エネルギーを利用して家庭や職場などで必要なエネルギーを自給自足。そのうえで余剰エネルギーを地域内で融通し、エネルギーを有効活用する地域共同体」となります。

    地球におけるスマートコミュニティの資源は、主に電力を想定していますが、月面においては酸素や食料はもちろんのこと、二酸化炭素や排泄物も貴重なインフラ資源です。この点を踏まえると、月面スマートコミュニティとは「電力・水素・酸素・二酸化炭素・食料・排泄物などの資源を自給自足・再生し、互いに融通し合うことで資源を有効活用する共同体」だといえるでしょう。

    現在挑戦しているシステムは、単独での資源循環が可能ですが、トラブルが発生した時は他の設備に助けて貰う必要があります。また食料や酸素が余った場合は、他の設備に引き取って貰うことで、無駄を削ることができます。地球からの迅速な物資支援が難しい月面においては、地球以上に資源の循環・共有・最適化が必要になるのです。これが、日揮グローバルが考える月面スマートコミュニティであり、サステナブルな月面世界の一例であると考えています。

    月だけじゃない!地球への応用も可能?

    サステナブルイメージ

    今回開発を始めた宇宙の「資源循環型食料供給システム」は、地球にも応用することができると考えられています。たとえば、「再生設備+植物工場」のパッケージを、衛生面と食料の不安がある難民キャンプに提供することで生活を支援できるかもしれません。また過疎化により大規模なインフラ維持が難しくなった田舎や、ワーケーション用のキャンプ場での活用ができたり、さらには、人の連続居住が難しい砂漠などを居住可能圏とし、都市部の人口爆発に伴う食糧・居住地不足の解決にまで役立つかもしれません。

    本コンソーシアムで培われる技術は、月のみならず、地球人の暮らしを豊かにできる可能性も秘めています。

    サステナブルな世界。先に達成するのは地球?それとも月?

    地球には既にたくさんのインフラ設備と、インフラ設備に合わせて設計された居住環境が整っています。そのため、今からすべてサステナブルなものに置き換えるということは容易ではないでしょう。しかし、まだ何もない月には、新しい技術を持ち込むだけでサステナブルな環境を実現できる可能性があるのです。

    皆さんは地球と月、どちらが先にサステナブルな世界を達成できると思いますか?

    まとめ

    日揮グローバルが考える月面スマートコミュニティ[Lumarnity®: Lunar Smart Community®]の想像図

    月面スマートコミュニティの想像図 日揮グローバル株式会社は、宇宙事業の開拓を進めると同時に、さまざまな知見を活かしてサステナブルな世界の達成に尽力(Enhancing Planetary Health)していきます。

    宇宙事業や、今回ご紹介したシステムに興味がある方は、下記から日揮グループまでお気軽にお問い合わせください。

    お問い合わせフォーム

    こちらの「月面スマートコミュニティ“Lumarnity®”の360°動画」も是非ご参考にしてみてください。
    (※日本科学未来館で開催された「NEO 月でくらす展」で展示されたものです)


    田中 秀林 | Yoshitoki Tanaka

    日揮グローバル株式会社

    田中 秀林 | Yoshitoki Tanaka

    函館市出身。東北大学 大学院 修士課程を卒業。在学中は、土壌中に極僅かに含まれる重金属の定量分析をテーマに繊細な実験を繰り返す。その反動でスケールの大きな仕事をしたくなり、2014年 日揮に新卒入社。プロセスエンジニアリング部門にて石炭ガス化・LNG・リファイナリ等の設計・試運転業務を経験後、月面プラントユニットの立ち上げメンバーとなる。現在は月面開発と育児の両立を目指して奮闘中。