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LNGを“よりクリーン”に利用していくために。温室効果ガス排出量の定量化とは

LNG カーボンニュートラル
目次

発電所や家庭用・工業用の都市ガスで主たるエネルギー源の1つとして使用される液化天然ガス=LNG。これは、燃焼時の温室効果ガス(GHG)の排出量が比較的少なく、クリーンなエネルギーと考えられています。

その一方で、採掘、製造、輸送などサプライチェーンの各段階から排出される温室効果ガスの環境負荷は少ないとはいえず、対策が必要です。そこで今回は、我々の生活と経済活動になくてはならないLNGをよりクリーンに利用していくために必要な「温室効果ガスの定量化」についてご紹介します。

LNGとは

LNGは環境負荷の小さなエネルギー

LNGとはLiquefied Natural Gasの略で、液化天然ガスと訳されます。メタンが主成分である気体の天然ガスをマイナス162℃に冷却・液化し、体積を約600分の1に凝縮したものです。日本は天然ガスの埋蔵量が少ないため、そのほとんどを輸入に頼っており、輸送のために天然ガスを液化しLNGとして輸入されます。

また、化石燃料の中では石炭や石油に比べ燃焼時の二酸化炭素や窒素酸化物の排出量が少なく、硫黄酸化物を排出しない環境負荷の小さいエネルギーです。

化石燃料の燃焼生成物の発生量の比較出典:IEA Natural Gas Prospects to 2010

日本の電力の約4割を担うLNG

LNGは、発電所や家庭用・工業用の都市ガスの主たるエネルギー源の一つとして使用されています。日本の電力は約4割をLNGが担っており、新エネルギーの割合が増えているとはいえ、LNG由来の電力は未だ最大の電源であり、生活と経済活動になくてはならない重要なエネルギー源なのです。

エネルギーの構成比率出典:経済産業省・資源エネルギー庁「第4節二次エネルギーの動向」

(※LNGについてもっと知りたい方はこちらもご参考にしてください。)


LNGはなぜクリーンなのか〜LNGプラントの5つの工程と役割〜|サスティナビリティハブ

天然ガスを-162℃で液化したLNG(Liquified Natural Gas)。現在、日本の一次エネルギーの22.4%(2019年)をLNGが占めており輸入されたLNGは約60%が発電、約34%が都市ガス用に使われています。 今回はLNGプラントの役割などをご紹介します。

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LNGは今後も重要なエネルギー

経済産業省による第6次エネルギ―基本計画(2021年10月発表)では、エネルギーの脱炭素化に向けて非化石エネルギーの拡大を進め、現在も主力となっている化石燃料による火力発電の割合を大きく下げる方針が示されています。

そんな中でもLNGは、2030年目標でも依然として20%を占めており、脱炭素を実現する低炭素エネルギーとして重要な役割を担っていくことが予想されています。

2019年と2030年のエネルギー構成比の比較経済産業省「エネルギー基本計画」を参考に自社で制作

LNGに向けられる疑念

 一方で、サプライチェーン上で排出されるメタンには対策が必要です。

 LNGのサプライチェーンは、ガスの採掘、液化設備での製造、船舶輸送等で構成されています。LNGの主成分であるメタンは、サプライチェーンの各設備から意図的または非意図的に漏出されます。

石油・ガスのサプライチェーンイメージ_イラスト

メタンは温室効果ガスの一種であり、地球温暖化係数(温室効果に与える寄与度を二酸化炭素基準で換算した係数)は二酸化炭素よりも高く、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の5次報告書によれば、100年換算で二酸化炭素の28倍、20年換算では84倍もの温室効果をもたらします。ここで100年換算と20年換算で地球温暖化係数が異なるのは、メタンの空気中の滞留年数が約12年と短いためです。

国際エネルギー機関(IEA)によると、産業革命以後の地球の気温上昇の約3割はメタンが原因であり、全体のメタン排出量の中で、エネルギー部門が占める割合は約2割と推定されています。そのうち天然ガス起因の排出は約3割を占めているとされ、これは、多くのメタンが天然ガスのサプライチェーンから排出され、地球の気温上昇に影響を与えている可能性があることを示唆しています。

ただし、同時にメタンの排出量の推定は難しく、このデータの不確実性が高いことも併せて報告されています。 

LNGをよりクリーンに利用していくために

LNGをよりクリーンに利用していくために必要なMRV

生活や経済活動になくてはならないLNGをよりクリーンに利用していくスタートラインとして、まずはサプライチェーンから排出されるGHGを正しく把握していく必要があります。正確な排出量の把握で重要になるのがMRVです。MRVとは、Measurement, Reporting, Verificationの略であり、「単なる推定ではなく、GHGの排出量を計測を含む算定によって求めて報告および検証をすること」を指します。

GHG排出量の計測・報告・検証のフローイメージ

日本でのMRVに関する取り組み

化石燃料のGHG排出量を算定するためのMRV手法は、複数の国などで策定作業が進められており、日本でも独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)がGHG排出量の定量化手法をまとめたガイドライン*を策定・公表しております。

*LNG・水素・アンモニア製造に伴う温室効果ガス算定のためのGHG・CIガイドライン

まとめ

LNGは生活と経済活動になくてはならない重要なエネルギー源です。しかし、サプライチェーンから漏出されるメタンの温室効果の影響は大きなものがあり、脱炭素化に向けた具体的な対策が求められています。

LNGをクリーンに利用していくためには、その第一歩としてMRVによってGHG排出量を正確に把握していくことが不可欠です。

日揮グループでは、LNGプラントなど天然ガス関連施設の豊富なEPC経験および設計技術を活かして、既存の国際的なGHG排出量算定手法の分析、国際的な算定手法と調和したGHG排出量算定手法の検討・策定などに取り組んでおります。

またGHG排出量算定に関わる様々な課題・疑問にお答えするのはもちろん、GHG排出量算定実施や 低炭素・脱炭素化に向けた改善提案をおこなうサービス「HiGHGuard®」も提供しています。

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岡崎 貴浩| Takahiro Okazaki
日揮グローバル株式会社
岡崎 貴浩| Takahiro Okazaki

広島県出身。京都大学大学院工学研究科修了。混相流工学を専門に学んだ後、日揮でガス処理プラント、LNGプラント、製油所等の設計に従事。2020年よりメタン排出量対策事業に立ち上げから関わり、事業の推進に努める。JOGMEC発行のCIガイドラインの策定メンバーの一人。

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