2024.11.05
プロジェクトを円滑に進める「コミュニケーションマネジメント」とは?
目次
プロジェクトを円滑に進めていくためには、メンバー間の適切なコミュニケーションによる情報共有が欠かせません。
今回の記事では、円滑なプロジェクト進行に不可欠な「コミュニケーションマネジメント」についてわかりやすく解説します。コミュニケーションマネジメントに求められるスキルや役立つツール例、コミュニケーションマネジメント計画書の作り方についても紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
コミュニケーションマネジメントとは
プロジェクトマネジメントの世界標準として知られるPMBOK(Project Management Body of Knowledge)では「プロジェクトマネジメントに必要な10の知識エリア」のひとつとして「コミュニケーションマネジメント」を挙げ、「プロジェクト参画者間における情報共有の内容やその方法を管理すること」と定義しています。
多様なワークスタイルが取り入れられつつある現代のビジネス環境においては、同じプロジェクトに参画しているからといって、必ずしも同じオフィス・同じフロアで協働するケースばかりではありません。そのため、状況に応じて適切な方法でコミュニケーションを図っていくことが求められています。特に企業/部門横断型プロジェクトやテレワークなどにおいて適切にコミュニケーションを図るためには、マネジメントが欠かせません。
コミュニケーションマネジメントが必要な理由
ビジネスを円滑に進める上でコミュニケーションが重要なことは、従来広く知られていましたが、なぜ特に近年になってコミュニケーションマネジメントが注目されるようになったのでしょうか。主な要因として、下記の3点が挙げられます。
働き方が多様化している
テクノロジーの進歩と働き方改革の機運の高まりなどに伴い、現代社会における働き方は急速に多様化しています。プロジェクトメンバー全員がオフィスで顔を合わせて働き、いつでも対面で言葉を交わせるとは限らなくなっている今、コミュニケーションの手段やタイミングをマネジメントするという考え方が必要とされるようになってきています。
マネジメントの細分化が進んでいる
マネジメントが果たす役割が細分化していることも要因の1つです。目的や目標ごとに達成する方法を考案し、実践へと落とし込む能力がマネジメント層に求められています。従来は混同されがちだったリーダーシップとマネジメントの機能上の違いが明確になり、目的ごとにマネジメントに取り組むケースが増えているのが実情です。コミュニケーションに関しても、マネジメントすべき対象の1つとして認識されつつあります。
コミュニケーションマネジメントに必要な4つのスキル
コミュニケーションマネジメントには、具体的にどのようなスキルが求められるのでしょうか。特に重要な4つのスキルについて解説します。
1. 利害関係や各人のニーズを把握・分類する力
コミュニケーションを適切に管理するには、【「誰と誰が」「どのような目的で」情報をやり取りするのか】を正確に把握しておく必要があります。組織内外における関係者の利害関係や各人のニーズを把握・分析する能力が不可欠です。こうした能力を備えていると、相手に合わせたコミュニケーションを取りやすくなります。
2. 情報伝達の経路と責任の所在を明確にする力
コミュニケーションでは、情報を誰にどのような経路で伝えればよいか、最終的に何が伝わればよいかを明確にしなければなりません。プロジェクトに関わる人数やチャネル数に応じて経路を設定することに加えて、相手に一方的に情報を伝達するのではなく、正確に伝わったかどうかを確認する仕組みや、情報伝達における責任の所在を明確にする仕組みを構築していくことも重要です。
3. 適切な伝達手段と伝達範囲を可視化する力
伝達する内容に応じた伝え方や伝える範囲を適切に判断し、それらをわかりやすく周囲に示す能力も求められます。伝達手段や伝達範囲が個人任せになっていると、粒度がまちまちになり、混乱を招くおそれがあるからです。特に組織内外をまたぐ場合や、オフィス勤務者とテレワーク従事者のように異なる環境で働くメンバー同士においては、伝達手段と伝達範囲をしっかりと可視化しておく必要があります。
4. 緊急度・重要度を見極める力
日々多くの情報が飛び交うビジネス環境下では、情報の緊急度・重要度を見極める力も求められます。伝えるべきことを迅速かつ正確に共有し、さまつな情報は後回しにするなど、優先順位をつけなくてはなりません。こうした判断は個人に委ねず、情報共有する際のフォーマットやルールを決める、といった工夫も求められるでしょう。不要なやり取りを増やさないためにも、統一されたルールのもとでコミュニケーションを図っていくことが大切です。
【目的別】コミュニケーションを最適化するツール7選
コミュニケーションの活性化は、コミュニケーションマネジメントを成功させる上で重要なポイントの1つです。コミュニケーションの活性化に役立つツール例を紹介します。
情報伝達
情報伝達に役立つツールとして、メールやチャットツールが挙げられます。特にチャットは、リアルタイムでの連絡以外にも、スタンプやリアクション機能を活用してカジュアルにコミュニケーションを図るツールとして有効です。チャットツールの具体例としては、下記のものが挙げられます。
Slack
ビジネス用途に特化したチャットツールです。チーム全体で情報共有が可能なパブリックチャンネル、メンバーのみ閲覧可能な招待制のプライベートチャンネル、1対1での会話に特化したダイレクトメッセージを使い分けることにより、シーンに合ったコミュニケーション方法を選べます。連携可能な外部ツールも豊富にあるため、既存の業務ツールと組み合わせて活用したい事業者様におすすめです。
公式サイト:https://slack.com/intl/ja-jp/
Chatwork
シンプルで直感的な操作が可能なビジネスチャットツールです。複数名で会話ができるグループチャットや1対1での会話に特化したダイレクトチャットの他、ファイル管理やビデオ/音声通話など、多彩なコミュニケーション方法を選べます。API連携により外部ツールと連携させて活用することも可能です。ITツールに不慣れな従業員にも広く利用してもらえるチャットツールを求めている事業者様に適しています。
公式サイト:https://go.chatwork.com/ja/
会議
複数名でのコミュニケーションの場として会議があります。Web会議ツールを使うと、日程調整を簡素化しつつ、離れた場所の人同士がお互いの顔を見て話すことができます。
Zoom
世界で50万社の企業が導入しているWeb会議ツールです。各種カレンダーツールとの連携や画面共有、録音・録画など、Web会議ツールの基本的な機能を一通り備えています。参加人数100名、会議時間40分までであれば無料で利用できる点も大きなメリットです。
公式サイト:https://explore.zoom.us/ja/products/meetings/
Teams
Microsoft社が提供するWeb会議ツールです。Office系アプリとの連携性に優れており、有料プランではTeams上での協働編集にも対応しています。多要素認証やユーザー権限の設定など、企業で求められるセキュリティ対策が施されている点も大きな特徴です。Office系アプリを業務で利用している企業や、セキュリティ面を重視したい企業に適しています。
公式サイト:https://www.microsoft.com/ja-jp/microsoft-teams/group-chat-software/
プロジェクト管理
プロジェクト管理を円滑化するツールを活用し、コミュニケーションの効率を高めていくことも重要な視点の1つです。プロジェクト管理に活用できるツールの例として、スケジュール管理ツールやタスク管理ツールがあります。
Asana
スケジュール管理やタスク管理に役立つ機能のほか、コミュニケーション機能などを備えたプロジェクト管理ツールです。メッセージやミーティングの予定などから自動でタスクを作成するオートメーション機能を備えているため、日々の業務を効率化できます。
公式サイト:https://asana.com/ja
Backlog
シンプルな操作性と親しみやすいUIが特徴のプロジェクト管理ツールです。個人のタスク進捗状況だけでなく、チーム全体の進行状況が一目で確認できます。スペース課金のため、ユーザー数が増えても同じ料金で使い続けられる点が大きな特徴です。
公式サイト:https://backlog.com/ja/
コミュニケーション活性化
コミュニケーション手段の提供にとどまらず、対話を促す仕組みを取り入れていくことも重要です。グループウェアやコミュニケーションツールを活用し、組織内外の自然なコミュニケーションを醸成していきましょう。
アザスオフィス
絶えず新しい人間関係が生まれるプロジェクト型組織に向けて開発されたサービスです。80か国、2万件のプロジェクト遂行で培ったRespect & Careの精神を実現するツールであり、人と人の関係を作り、関係者全てが同じ目線を持ってプロジェクトを遂行することを目的としています。メンバー同士でポイントを送り合うことができ、受け取ったポイントは指定の用途(環境保全のための寄付、デジタルギフトなど)に利用できるほか、定型メッセージとフリーメッセージを組み合わせた交流も可能です。現在、限定範囲で利用しており、今後公開される予定です。
【サンプル紹介】コミュニケーションマネジメント計画書の作り方
コミュニケーションを円滑に進めるためには、コミュニケーションマネジメント計画書を作成し、情報の伝達経路をマネジメントする必要があります。コミュニケーションマネジメント計画書の基本的な作り方を押さえておきましょう。
計画書に記載しておきたい項目
コミュニケーションマネジメント計画書とは、チーム内でのコミュニケーションを構成する要素を項目ごとに挙げ、計画としてまとめた文書のことを指します。計画書に記載しておきたい主な項目は下記のとおりです。
- 関係者
- コミュニケーション要求事項
- 書式、内容、詳細度など伝達すべき情報
- エスカレーション・プロセス
- 伝達が必要なタイミングと頻度
- 情報伝達の責任者
- 情報を受け取る個人または部門・企業
- 情報伝達の手段や技術
- 共有用語集
- 情報の流れ
これらの項目が明確にされていることによって、誰に・何を・どのように伝えるべきかがチーム内で統一しやすくなります。コミュニケーションコストを最小化し、効率よく効果的な情報伝達・情報共有を実現することが、コミュニケーションマネジメント計画書を作成する主な目的です。
計画書サンプル
コミュニケーションマネジメント計画書の一例を紹介します。計画書を作成する際のサンプルとしてご活用ください。
【コミュニケーションマネジメント計画書】
- プロジェクト名:〇〇〇〇
- 関係者:システム開発部・ソリューション営業部・株式会社〇〇
- 伝達すべき情報:システム開発の進捗状況
- エスカレーション・プロセス:日々の遅延→PL、重大な遅延→PLを通じてPMへ
- 伝達が必要なタイミングと頻度:1日2回(午前の業務終了時、退勤時および完了時)
- 情報伝達の責任者:PL
- 情報を受け取る相手:システム開発部・株式会社〇〇
- 情報伝達の手段:チャット、メール、電話(必要に応じてWeb会議ツール)
- 共有用語集:イントラネット上にて随時更新 ⑩ 情報の流れ:各担当者→PL→PM→株式会社〇〇
まとめ
コミュニケーションマネジメントは計画を立てて管理すればよいというものではなく、その意義と目的を十分に理解した上で実践していくことが重要です。多様化する働き方に対応し、情報伝達が適切におこなわれる組織を形成していくためにも、ツールを効果的に活用してコミュニケーションマネジメントに取り組んでいくことをおすすめします。