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サーキュラーエコノミー 基礎知識
サステナビリティ推進 企業

2025.05.21

サーキュラーエコノミーの協創事例5選|取り組みのポイントも紹介 0

サーキュラーエコノミーの協創事例5選|取り組みのポイントも紹介

目次

    かつて日本を含む先進国では、大量生産・大量消費・大量廃棄の経済モデルが長く続いていました。しかし、近年の環境問題への意識の高まりと「2050年カーボンニュートラル」の目標達成に向けて、「サーキュラーエコノミー」(循環経済)への転換が世界的な潮流となっています。

    今回の記事では、サーキュラーエコノミーの基礎知識を解説するとともに、複数企業が連携して取り組む最新事例とポイントを紹介します。

    サーキュラーエコノミーとは

    サーキュラーエコノミーとは、廃棄物を出すことなく資源を循環させる経済の仕組みです。

    この概念を具体化するため、サーキュラーエコノミーを推進する国際団体であるエレン・マッカーサー財団が次のような「サーキュラーエコノミーの3原則」を掲げています。

    1. 廃棄物・汚染などを出さない設計
    2. 製品や資源を使い続ける
    3. 自然のシステムを再生する

    サーキュラーエコノミーに取り組む企業は、これらの3原則のうち1つ以上に該当し、他の2項目に逆行しないことが評価基準となります。

    【5選】他社と共同してサーキュラーエコノミーに取り組んでいる事例

    サーキュラーエコノミーでは、複数の企業が互いに補完し合いながら循環システムを構築することで、より大きな成果をあげることができます。そこで本章では、サーキュラーエコノミーの実現に向けて、廃棄物の有効活用や新技術の共同開発に取り組む事例を5つ紹介します。

    トヨタ自動車×豊島×アーバンリサーチ

    トヨタ自動車、豊島、アーバンリサーチは、自動車製造工程で発生する廃棄物のアップサイクルに取り組んでいます。自動車産業は金属・樹脂・繊維といった多様な素材を使用するため、廃棄物の種類・発生量が多く、サーキュラーエコノミーの実現が課題となっているのが現状です。

    具体的には、従来はリユース・リサイクルが難しかった自動車製造工程で発生するシート本革、シートベルト、エアバッグ基布といった廃棄物を新たな商品として生まれ変わらせ、ポップアップストアやオンラインストアで販売する取り組みをおこなっています。エアバッグとシートベルトの端材を活用したトートバッグやシートレザーの端材をアップサイクルしたステーショナリー製品などをラインアップしています。

    このプロジェクトは2021年4月に始動し、将来的には自動車産業に限らず製造業全体の廃棄物も活用しながら、エシカル文化の普及拡大を目指しています。

    参考:株式会社アーバンリサーチ(https://www.urban-research.co.jp/news/shop/2024/09/toyota-upcycle-popupshop/

    積水ハウス×ブリヂストン

    積水ハウスとブリヂストンは、建築業界における資源循環を推進するため、廃棄される「給水給湯樹脂配管」を同製品の素材として再利用する取り組みを開始しました。

    積水ハウスは全国21カ所の「資源循環センター」を通じて、新築施工時に発生する廃棄物を100%リサイクルする「積水ハウスゼロエミッションシステム」を運用し、ブリヂストンは、給水給湯樹脂配管の内管にマテリアルリサイクル可能な熱可塑性樹脂(ポリブテンパイプ)を使用します。

    両社の連携により、積水ハウスが回収したブリヂストン製ポリブテンパイプを再生材メーカーでリサイクルペレット化し、ブリヂストンが給水給湯樹脂配管の製造に再利用する循環の仕組みが実現しました。この取り組みにより、施工時に排出される配管端材の70%以上を同一製品の原料として水平リサイクルできるようになりました。

    参考:積水ハウス(https://www.sekisuihouse.co.jp/company/topics/topics_2024/20241128_1/

    アスエネ×サイクラーズ

    アスエネとサイクラーズは、企業の脱炭素化とサーキュラーエコノミー推進に向けた戦略的パートナーシップを結びました。

    この連携では、サイクラーズが持つ高度なリサイクル技術・知見とアスエネの「CO2排出量見える化サービス」を組み合わせることで、企業のサーキュラーエコノミーへの移行を支援しています。具体的な施策としておこなわれているのは、アスエネのマーケットプレイス「アスエネストア」でのサイクラーズの再生原料などの商材提供による企業の資源循環の促進です。また、共同ウェビナーを通じた情報発信・啓発活動も予定しています。

    さらに、両社は将来的にリサイクル・サーキュラーエコノミーの領域でカーボンクレジットを創出し、循環型ビジネスモデルへ転換することを目指しています。

    参考:GXリーグ(https://gx-league.go.jp/article/2024/10/15/

    ビア・ザ・ファースト×横浜高島屋× REVO BREWING ×横濱ワイナリー

    横浜に拠点を構えるクラフトビール醸造所の「ビア・ザ・ファースト」は、他社と共同しながら、廃棄予定の食材を生かしたクラフトビール製造・販売の取り組みをおこなっています。

    2024年10月には、地元企業の横浜髙島屋、REVO BREWING、横濱ワイナリーと共同で開発したクラフトビール「YOKOHAMA Vineyard Ale」を販売しました。この商品は、横濱ワイナリーが有機栽培で育てたワイン用葡萄のワインパミス(ワイン製造工程でぶどうを搾った後に残る果皮)を原材料の一部として使用したもので、美味しさと食品ロス削減を両立した商品として注目を集めました。

    同社はこのほかにも、自治体や企業と協働し、廃棄間近のパン、ごはん、災害備蓄品などをクラフトビールにアップサイクルする取り組みをおこなっています。

    参考:PRTimes(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000107610.html

    日揮ホールディングス×相鉄グループ×三菱地所×ナカノ

    日揮ホールディングス、相鉄グループ、三菱地所、ナカノは、横浜市泉区のゆめが丘駅前の大規模商業施設「ゆめが丘ソラトス」を拠点に、2つの実証実験を展開しています。

    1つ目は、施設内の飲食店から排出される廃食用油を回収し、SAF(持続可能な航空燃料)として再生する取り組みです。SAFは従来の化石燃料と比較して、ライフサイクル全体での温室効果ガスの排出量を50%削減できます。航空業界の脱炭素化において、SAFの普及は重要課題であり、地域資源の有効活用とともに、持続可能なエネルギー供給のモデルケースとなることが期待されています。

    2つ目は、IoT機能を持つ衣類回収ボックスを施設内に設置し、通常は焼却処分される衣類を回収・再資源化する取り組みです。「するーぷ®」*と呼ばれるこのサービスでは、ポリエステル由来などの衣類について、将来的にケミカルリサイクル技術を活用した再資源化を検討しています。

    *するーぷ®は日揮ホールディングスの登録商標です。

    ゆめが丘ソラトスに設置された衣類回収ボックス

    【3選】サーキュラーエコノミーを協創する際のポイント

    最後に、サーキュラーエコノミーの取り組みを複数社でおこなう際のポイントを3つ紹介します。

    サプライチェーン全体を見た上での役割分担

    1つ目は、「サプライチェーン全体を見据えた企業間の役割分担」です。
    例えば、製品設計を担当する企業は再利用しやすい製品デザインをおこない、リサイクル専門業者は効率的な回収・リサイクルシステムを構築する、さらに物流企業は輸送段階でのCO2削減に取り組むなど、各社の強みを活かした分担が考えられるでしょう。

    役割を明確化することで重複投資を避けられるほか、それぞれの企業がコア事業に集中しながら、得意分野をいかして無理なく協業することができます。

    製品ライフサイクルデータの可視化

    2つ目は、「製品のライフサイクル全体を通じたデータの可視化」です。具体的には、原材料の使用量、廃棄物の排出量、リサイクル率などを数値化し、連携する企業間で同じ基準を持つ必要があります。

    そのためには、各社がNDA(機密保持契約)を締結したうえで、定期的にデータを共有し、オープンな議論の場を設けることが有効でしょう。廃棄ロスや排出量の多い工程を特定しやすくなることで、改善に向けた優先順位を明確化できます。

    また、データの可視化は、各社の取り組み状況の「見える化」にもつながります。企業間での相互理解や信頼関係の構築、さらには継続的な改善活動の推進に貢献するかもしれません。

    実証実験によるリスクとコストの分散

    3つ目は、「複数企業が共同でおこなう実証実験」です。
    「ゆめが丘ソラトス」(横浜市内の商業施設)では、4社が各々の強みを生かしながら連携し、「廃食用油からSAFへの再生技術」と「ポリエステル衣類のケミカルリサイクル技術」の2つの実証実験を実施しました。

    サーキュラーエコノミーへの移行には、新技術や新素材の導入が不可欠ですが、単独企業でスピーディに大規模投資やイノベーションを推進するのは容易ではありません。その場合、投資コストや失敗リスクを分散させる方法のひとつとして、複数企業で共同して実証実験をおこなうことを考えてみても良いかもしれません。

    まとめ

    今回の記事では、企業が協創してサーキュラーエコノミーに取り組んでいる事例をご紹介しました。ご参考にしていただけましたら幸いです。

    日揮ホールディングスのグループ会社であるJGC Digital株式会社では、気軽に実施できるサーキュラーエコノミーのための取り組みとして、衣類回収サービス「するーぷ」を提供しています。不要な衣類を回収ボックスに持ち込んでいただければ、普段の生活で使えるクーポンと引き換え可能なポイントを付与しています。不要な衣類をお持ちの方は、ぜひサービスの利用をご検討ください。

    サステナビリティ実現に向けた企業の協創事例については、こちらの関連記事もあわせてご覧ください。

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