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2026.03.26

後編【プラント建設の未来を支える技術者たち #08】計装制御エキスパート

後編【プラント建設の未来を支える技術者たち #08】計装制御エキスパート

目次

    海外におけるプラントの設計・調達・建設を事業の柱とする日揮グローバルでは、幅広い分野の技術エキスパートが事業の根幹を支えています。彼らの持つさまざまな専門技術は、プラント建設だけでなく、サステナブルな社会を実現するうえで欠かせないものです。そこでサステナビリティハブでは、チーフエンジニア*の方々に、専門技術や最新トピックなどを開設してもらうインタビュー記事を連載しています。

    今回は、第8回となる「計装制御」エンジニアへのインタビュー後編です。計装制御は、プラント内のさまざまな機器を、センサーで状態を確認しながら自動でコントロールする技術。計装制御分野のチーフエキスパート(CE)を務める菅沼伝さんに、エンジニアとしてのキャリアや仕事への想いなどについて聞きました。(インタビュアー:サステナビリティハブ編集部)

    *エキスパート制度は、日揮ホールディングス、日揮コーポレートソリューションズ、日揮グローバル、日揮が対象
    **チーフエンジニアは、チーフエキスパートとリーディングエキスパートの総称

    計装制御エンジニアの業務内容や、計装制御技術の最新動向などについて詳しく解説いただいたインタビュー前編はこちらをご覧ください。

    キャリアの原点は「何もない土漠にプラントが建った感動」

    ――菅沼さんは、どのようなきっかけで「計装制御」の分野に進まれたのでしょうか。

    大学の専攻は、電子機器工学で卒論は3D液晶ディスプレイでしたので、「計装制御」分野とのかかわりを持ったのは、入社してからです。

    もともと、「世界中の人々と一緒に何年もかけて巨大なプラントを作り上げる」日揮のビジネススタイルにロマンを感じており、「私もその一員として働きたい!」という思いで入社をしました。そして配属されたのが計装部門だった、というのがキャリアのスタートでした。

    ──これまでのキャリアの中で、特に印象に残っているプロジェクトはありますか?

    私にとって初めての海外プロジェクトとなった、パキスタンの国営石油会社「PARCO(パルコ)」の石油精製プラントの建設プロジェクトです。場所はパキスタン中部のムルタンという都市の近郊で、私が駐在していた1999年から2000年当時は「世界で一番暑い場所」と言われていました。現場はまさに「土漠*」。草が少し生えている程度の荒野で、トラックもあまり走っておらず、25年前でもロバが土を運んでいるような辺鄙な場所でした。

    *土漠:土や粘土に覆われた砂漠のこと

    ──そのような場所で、まさにゼロからプラントを建設したわけですね。

    はい、本当に何もないところからスタートして、プロジェクトが終わってみると、土漠の中に巨大なプラントが建ち上がっている。その光景を見た時は、やはり感動しましたね。
    さらに、プラントができると人が集まり、周囲に「街」ができてくるんです。何もない場所に産業施設が生まれ、人々の生活圏が形成される。その過程を目の当たりに出来たのは、貴重な経験でした。

    ──プラント建設中には、大変なトラブルもあったと聞きました。

    そうですね、最も大きなトラブルは、滞在中に軍事クーデターが起きたことでしょうか。「政権が代わった」というニュースが流れて、現場も一時騒然としました。どうなるか分からないので一時待機となりましたが、現地のパートナーたちと情報交換をしながら、結局2〜3日後には仕事を再開していましたね。「まあ、ここは僻地だし大丈夫だろう」みたいな感覚で。その時は、「なんて会社に入社してしまったんだ」と思いましたが(笑)、振り返ってみればそれも含めて良い思い出です。

    プラント建設における全工程の「ラストランナー」としての重圧と達成感

    ──計装制御エンジニアの仕事は、プラント建設の最終工程だそうですね。

    はい。リレーに例えるなら、計装制御は、プラント建設における最終走者です。配管や機器が据え付けられた後に、それらを繋ぐセンサーやケーブルを設置していくのが、我々の仕事です。つまり、それまでのパートが終わらないと我々の仕事が始められないわけです。常にスケジュールのしわ寄せを受けやすいポジションなので、プレッシャーはかかりますね。

    ──そのプレッシャーを乗り越えた時の達成感は大きそうですね。

    そうですね。大型プロジェクトでは、つなぐべき信号の数(I/O点数)が3万点を超えることもあります。それを一つひとつ現場で接続し、検査していく。なかなか終わらない作業です。
    プロジェクトの最中は、やはり辛いことの方が多いですが、辛いからこそ、プロジェクトを完了した際の充実感は格別です。苦楽を共にした社内の仲間やお客様、メーカーの方々と喜びを分かち合う。これは他の仕事では味わえない醍醐味だと思います。

    「暗黙知」を継承し、次世代を育てる

    ──現在はチーフエキスパートとして、技術の継承や人材育成にも注力されていると伺いました。どのようなことに取り組まれているのでしょうか。

    先ほどお話した通り、技術の標準化やドキュメント化による「暗黙知の形式知化」を進めています。ですが、やはりそれだけでは伝えきれない部分も出てきます。
    そこで最近は、一種のOJTとして、FEED(基本設計)などの初期段階のプロジェクトで若手とチームを組み、一緒に実務をおこなうようにしています。実際に手を動かす中で、若手が成長していく様子を感じられるのは嬉しいですね。

    ――計装制御のエンジニアにとって、大切な資質はありますか。

    計装制御の仕事は、とにかく関わる人が多いため、関係者と対話し、調整しながら進めていく能力は不可欠だと思います。ただ、人の話を聞いているだけでは仕事は前に進みません。時には周りをグイグイと引っ張っていく「牽引力」がないと、リードエンジニアというポジションは務まらないと感じています。

    また、私たちの仕事は「時間」との戦いでもあります。現場に入れば、予期せぬトラブルで予定が押すこともありますが、最終的な納期は決まっています。そんな極限の状態では、迷っている時間はなく、現場で最速の意思決定を下す必要も出てきます。

    週末は筋トレとサウナでリフレッシュ

    ──プライベートは、息抜きの時間にもなると思いますが、休みの日はどんなことをしていますか?

    コロナのステイホームの時期に始めたのですが、「8,000歩以上歩く」ことを目標に妻と散歩・散策する時間を大切にしています。
    1年ほど前からは、会社の若い人たちが朝から筋トレをして出社してくるのに感化され、ジム通いを始めました。まだ週1程度ですが、回数を徐々に増やして細マッチョになれたら嬉しいです。筋トレのあとにサウナに入るのですが、そのリフレッシュ効果は大きいですね。
    日曜の午後や夜は、読書して過ごすことが多く、こちらもまたリフレッシュになっているように思います。

    後輩エンジニアへのメッセージ

    ──最後に、これからエンジニアを目指す学生や、若手技術者へのメッセージをお願いします。

    日本では「計装」という分野自体が、残念ながらあまり知られていません。
    しかし海外では、「Instrumentation & Control」のエンジニアは、プロジェクトの中でも主要な立場としてリスペクトされます。ですから後輩の皆さんには、ぜひ誇りを持ってやっていただきたいと思います。

    また、世界的に見ても、設計だけの会社や建設だけの会社が多い中、日揮グローバルのように、設計から調達、建設、試運転まで全てのフェーズを見ることができる会社は稀有です。現場を知り、モノづくりの苦労と喜びを知ることで得られる力量は、世界中どこへ行っても通用する武器になるはずです。

    まとめ

    今回の記事では、「計装制御」のチーフエキスパートに、キャリアの転機や技術の伝承、趣味のお話などについて幅広く伺いました。計装制御エンジニアの専門性や、最新技術動向などについてお伺いしたインタビュー前編はこちらをご覧ください。

    ▼日揮グループのチーフエンジニアの詳細はこちら

    サステナビリティ ハブ 編集部

    サステナビリティ ハブ 編集部

    サステナビリティ ハブは、日揮ホールディングス株式会社が運営する、企業のサステナビリティ活動を支援するオウンドメディアです。SDGsの達成に不可欠なソリューション、国内外の先進的な事例、サステナビリティ経営のヒントなど、課題解決に繋がる多様な情報を発信しています。長年、プラントエンジニアリングや社会インフラ構築に携わってきた日揮グループの知見を活かし、専門性を持ったメンバーが信頼性の高いコンテンツをお届けします。