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工場へのロボット導入を可能にした「発想の転換と工夫」とは?事例も紹介

事例
目次

人手不足の深刻化やIT活用の遅延が課題とされている、日本の製造業。人口減少や高齢化社会の対策としても、現在さまざまな工場において自動化が進められています。 

今回の記事では「人手不足」に注目し、課題を解消するロボット導入について掘り下げ、さらにロボットの導入において「発想の転換」が功を奏した成功事例もご紹介します。この事例は、令和4年度の公益社団法人 発明協会が開催する地方発明表彰にて「発明奨励賞」を受賞しました。

医薬品製造工場における事例ではありますが、工場の自動化を検討中の方にとってはもちろん、製造業における自動化に行き詰っている方への糸口が見つかるかもしれません。 

工場の人手不足を自動化で解決する

製造業における人手不足問題を解消する手段として今注目を集めているものの1つは、今回のテーマである「ロボットの導入」です。では、ロボットを取り入れることでどのようなメリットがあるのでしょうか。 

工場にロボットを導入するメリット

人手不足の解消

まず第一に誰しもが想像に難くない点として、今までは人間がおこなっていた作業をロボットにあてがうことで、人手不足問題の解消へと近づきます。 

コストの削減 

次に、人手不足の解消と同時に人件費削減も可能でしょう。工場で働く人数が減ることで給与や残業代、また新人教育において発生する費用等もおさえることができます。しかし、ロボットの導入によって、導入費用やメンテナンス等の今まで発生しなかったコストが生まれることも忘れてはいけません。 

生産性の向上や品質の安定

人間の手作業と比較し、効率が良い動きをするロボットを導入することで、生産性の向上も見込めます。また我々人間が携わる以上、製品の出来にムラができてしまう悩みを抱えている担当者もいるのではないでしょうか。そのような場合は、ロボットが得意とする「一定の品質を保ちながらの作業」がメリットとなるはずです。 

従業者の安全確保 

工場内の作業には、一瞬の不注意が大きな怪我に繋がるもの、また高齢化する従業者には負担が重いものもあるかもしれません。そうした作業をロボットに任せたり、機械の力を借りることによって従業者の安全確保に繋がります。 

工場のロボット化に関する課題

もちろん、新技術の導入はメリットだけではありません。工場へのロボット導入における課題としては一体どのようなものがあるのでしょうか。 

ロボットが導入された工場イメージのイラスト

主立って挙げられるのは、導入やメンテナンスで発生するコストの課題、またロボットに精通している人材の確保などです。ロボットは決して安価でないことに加え、ロボットの導入設計には特性をよく知ったエンジニアを雇用したり、外部に依頼する必要があります。 

また一見見落とされがちでありながらも重要な課題があり、それは今までおこなっていた手作業をロボットにそのまま引き継がせようとするとうまくいかない場合もあるということです。 

ここで一例を挙げてみましょう。とある医薬品製造工場において、

 ①気密性が高い容器の蓋の開閉 

 ②容器に使用されている、気密性を叶えるための締め具(クランプバンド*)の把持*と開放 

を自動化しようと、ロボット導入が検討されたことがありました。検討結果は、各箇所において多関節ロボット3台が必要というものでしたが、工場内における蓋の開閉箇所は多く、自動開閉のために各箇所3台はコストが高すぎる点・専有面積が大きくなりすぎる点が大きなデメリットでした。

これは「今までの作業をロボットにそのまま引き継がせることの難しさを表す例」といえ、たとえば容器自体にロボットが扱いやすいような工夫を施すなど、違う角度からのアプローチを試みることも価値のある挑戦かもしれません。 

クランプバンド画像クランプバンド

*把持:しっかりと持つこと。 

*クランプバンド:パッキンを付けた蓋と容器の物理的距離を近づけて気密を実現するために、レバーを動かす事で周長が変わるように作られた、断面が「く」の字型のリング状道具のこと。 (上図参照)

ロボット導入を助ける「発想の転換と工夫」とは

実際にそのような壁に今までとは違う角度からぶつかり、工場の自動化を叶えた事例もあります。ここからはその事例の開発背景や「発想の転換と工夫の方法」をご紹介していきます。 

冒頭にも記したように、この事例は「医薬品製造」におけるものではありますが、自動化への発想や工夫の仕方は、さまざまな製造業界に共通するヒントとなるかもしれません。

【事例】日揮グループ「BLAT®システム」 

「BLAT (BandLess AirTight)®システム」は、日揮グループが開発した製品で、「容器の密封・開放作業の自動化が可能なバンドレス気密容器システムのこと」です。

今までの医薬品製造工場において人間が開閉していた「気密性が必要な容器の蓋(=気密蓋)」を、工場自動化に向けロボットが扱えるように生まれ変わらせた新しい機構であり、これは「発明名称自動化対応小型缶(特許第6375078号)」として「発明奨励賞」を受賞しています。(令和4年度 公益社団法人 発明協会が開催する、地方発明表彰にて)

BLAT蓋容器の外観        BLAT®蓋容器全景                              BLAT®Type-IIの蓋外観 


▼動画はこちらからご覧ください。

 


また、洗浄作業にも人手が要らない最新の「BLAT ® Type-IIシステム 」や、工場での全自動ハンドリングをほぼ可能にした「SMARTカンガルー方式」もあります。 

SMARTカンガルー方式画像

             SMARTカンガルー方式


▼動画はこちらからご覧ください。

 

開発の背景 

これらのシステムはどのような背景のもとに生まれたのでしょうか。 

医薬品業界(特に固形製剤などの薬品業界)では、吸湿性等の変質を防止する観点から生産時に「気密性」が強く求められるため、「気密蓋が付いた容器」の使用が必須となります。  そこでまずは、今後の多品種・少量〜多量の製剤生産に対応した自動化工場の足掛かりとして、製造の要である「気密蓋」を自動で開閉するシステムの開発が始まったのです。 

課題への向き合い方:発想の転換と工夫   

BLAT®システムの開発にあたっての道のりは容易ではなく、様々な課題がありました。 

「ロボット化の課題」でも記したように、従来人間がおこなっていたクランプバンドの開閉作業をそのまま自動化しようとすると非常に複雑な機構が必要となり、開発コストも跳ね上がってしまいます。 そこで「従来の気密蓋の概念」から一旦離れ、「ロボットが扱いやすい気密蓋」を開発することに着目した結果、ロボットが扱いやすい「中空シール」を使うアイデアに辿り着いたのです。

従来の「クランプバンド方式」は気密制御のためレバーを大きく動かさなければならず、さらに蓋の持ち上げには、クランプバンドに加えて”蓋と容器の間のパッキン”も把持しなければいけませんでした。

これに対し「中空シール」は、内部の空気を抜き差しするだけで気密性を制御でき、さらに蓋を持ち上げる際も蓋だけを持ち上げれば良く、ロボットに要求される物理的制約が圧倒的に少ないのです。 しかし通常使用する”チューブシール内を陽圧にして気密する方式”では、いずれ空気が抜け気密性が失われてしまいます。

そこで「陽圧」の反対の「陰圧」で開くという逆転の発想から、新たな機構を生み出すことに成功しました。 これが今回のキーとなる「発想の工夫」の最たる例で、既存の考えに捉われず人間からロボット側に寄って行く視点や、あえて反対側の視点から見つめ直すことは、さまざまな場面において重要だといえるでしょう。

まとめ

ロボットアームが導入された工場のイラスト

発想の転換から生まれた日揮グループのBLAT®システムは、医薬品にとどまらず食品、化粧品、化学製品の工場など、適用分野は多岐にわたります。 

今後ますます注目されるであろう工場の自動化において、今回ご紹介したように「従来は人手でおこなっていた作業」をそのままロボット化しても、行き詰まってしまうこともあるかもしれません。その際は「発想の転換や工夫」を意識し、今までとは異なった角度から試行錯誤してみると今まで以上に広範囲で適応可能なシステムを見いだせるなど、思わぬ良い結果を得ることができる可能性もあるでしょう。 

工場の自動化を検討中の方や、製造業における自動化を考えている方へのヒントになれば幸いです。

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①本記事でご紹介した、「SMARTカンガルー方式」に関する資料、「次世代固形製剤工場・SMART カンガルー方式 ~無人対応を可能とした小型缶による工場~」は以下からダウンロードが可能です。

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②また、本記事でご紹介した、「新開発「BLAT®」とロボットで自動化した固形製剤工場の事例紹介」として、以下の資料(「自動化に対応した気密蓋開発とその応用例」)がダウンロード可能です。

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井戸 真嗣 | Masatsugu Ido
井戸 真嗣 | Masatsugu Ido

仙台出身。大学では機械を専攻し、趣味は物作り。現在は日揮株式会社にて、その両方を活かせるプラント設計の機械を担当している。「世の中に無いものは作る」をモットーとし、メーカーさんの力と知恵を借りながら、アイデアが形になった瞬間を一緒に祝うのが1番の喜び。

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