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カーボンニュートラル 再生可能エネルギー

2026.05.19

SAF(持続可能な航空燃料)とは?原料や課題、注目されている理由を徹底解説 0

SAF(持続可能な航空燃料)とは?原料や課題、注目されている理由を徹底解説

目次

    2016年、航空業界は9億3,860 万トンのCO₂を排出し、世界のCO₂排出量の2.6%を占めました。
    参照:経済産業省「次世代航空機に向けた 研究開発・社会実装の方向性」(最終アクセス 2026/5/19)

    航空需要は今後も右肩上がりであり、航空分野における気候変動対策は急務となっています。そこで今回は、次世代燃料として注目されている「SAF(Sustainable Aviation Fuel)」について、定義から仕組み、課題まで分かりやすく解説します。

    SAF とは?

    急務となる、航空業界の脱炭素化の流れ

    世界的な脱炭素化の流れにおいて、カーボンニュートラル(温室効果ガスの排出をネットゼロ* にすること)を目指し、航空業界でもCO₂排出削減が急務となっています。

    2022年7 月に国際民間航空機関(ICAO) のハイレベル会合内で、日本の国際航空分野において2050 年までにカーボンニュートラルを達成することを公式に宣言し、そして2024年11月にICAOが採択した「2050 年までのカーボンニュートラル化」の長期目標に向け、政府は「航空脱炭素化推進基本方針」を策定しました。
    この目標では、以下の3つが主要な方針として定められています。

    1:SAFの導入促進
    2:管制の高度化等による運航の改善
    3:航空機環境

    参照:国土交通省「空のカーボンニュートラル

    下記の図は、ICAOが定めた長期目標(LTAG:エルタグ) をもとに、経済産業省によってまとめられたカーボンニュートラル化への実現シナリオです。
    上記3つの方針の中でも、SAF(持続可能な航空燃料)のカーボンニュートラル化への貢献率は最も高く、重要な位置づけであることが示されています。

    出典:経済産業省「我が国航空機産業の今後の方向性について」(最終アクセス 2026/5/19)

    *ネットゼロ…温室効果ガスが排出される量と吸収・固定される量の差し引きがゼロになること   

    「持続可能な航空燃料(Sustainable Aviation Fuel)」のこと

    SAFとは、「持続可能な航空燃料(Sustainable Aviation Fuel)」のことです。
    従来から使われている化石燃料由来の航空燃料と比べ、CO₂削減に効果があるとされています。
    原料によってCO₂削減効果は異なり、たとえば廃食用油を原料とした場合には80%以上のCO₂削減効果があるといわれています。

    参照:国土交通省「環境×航空=SAF」(最終アクセス 2026/5/19)

    SAFの主な原料と代表的な製造方法

    SAFの主な原料と代表的な製造方法は下記の通りです。 

    分類 具体例 製造方法
    糖類 サトウキビ、トウモロコシなど 発酵してアルコールにし、燃料にする(ATJなど) 
    木質バイオマス 木くず、間伐材など 熱分解やガス化をし、燃料成分にする(FT合成など) 
    植物性油脂 廃食用油、菜種油、大豆油など 油を水素化処理して燃料にする(HEFA) 
    動物性油脂 牛脂、豚油など 油を水素化処理して燃料にする(HEFA) 
    藻類 微細藻類 藻から油分を抽出し、燃料にする(HEFA等) 
    廃棄バイオマス 古紙、食品廃棄物、生ごみなど 発酵や分解をし、燃料成分にする(ATJ、FT合成など) 
    表1: SAFの主な原料と代表的な製造方法 

    上記で示されている主な SAF原料は、国際的な環境政策(例:ICAO のCORSIA 制度、EUの再生可能エネルギー指令〈RED II〉)など)において「生物由来の炭素」として分類されています。
    SAFが持つCO₂削減効果は原料に由来していますが、生物由来の炭素は成長過程において光合成をおこなうため、大気中のCO₂を吸収します(図1)。燃焼時にはCO₂が発生するものの成長時の吸収分と相殺されることから、SAFは持続可能な航空燃料として導入が進められています。

    図1:SAFのCO₂削減の仕組み 

    =============

    SAFの原料のなかでも、昨今多くの人の関心を集めているものは「廃食用油」でしょう。 

    廃食用油(Fry)で空を飛ぶ(Fly)世界を実現するプロジェクト「Fry to Fly Project」は、この活動に賛同する企業・自治体・団体の誰もが参加できるプラットフォームとして2023年4月に日揮ホールディングス株式会社が発起人として立ち上げました。2026年5月8日時点では計317の団体が参加メンバーとして名を連ねており、資源循環による脱炭素に貢献するべく、自治体や飲食店等での廃食用油回収・SAFをテーマとした学校でのSDGs学習など様々な取り組みをおこなっています。 

    航空分野がCO₂削減に取り組む背景

    航空部門におけるCO₂排出量の増加

    国土交通省によると、日本が 2018 年度に排出したCO₂総量のうち、運輸部門(自動車・船舶等)は全体の 18.5%を占め、約 2 億 1,000 万トンの排出量が記録されました。このうち国内航空は 5%を占め、排出されたCO₂は 1,054 万トンだったことが明らかになっています(図2)。 

    参照:国土交通省 航空局「航空分野における CO₂削減の取組状況(令和3年4月)」(最終アクセス 2026/5/19)

    図2:日本の各部門における二酸化炭素排出量  出典:国土交通省「SAF で、地球をクリーンに。」p.3(最終アクセス 2026/5/19)

    また、エネルギー政策や市場の調査をおこなうIEA(国際エネルギー機関)によると、2022年の航空業界から排出されたCO₂は世界のエネルギー関連排出量の約2%を占めています。

    参照:「IEA(International Energy Agency)「CO₂ Emissions in 2022, IEA, Paris. (最終アクセス 2026/5/19)」

    鉄道や道路、海運などそのほかの輸送手段と比べ、航空業界のCO₂排出量は増加しているほか、2025年の航空旅客数は52億人(前年比:6.7%増)に達すると予測されており、航空需要は世界的に増加傾向であるといえるでしょう。

    参照:IATA「Strengthened Profitability Expected in 2025 Even as Supply Chain Issues Persist」(最終アクセス 2026/5/19)

    このような動向から、航空業界における脱炭素化は重要な課題の1つといえます。

    CO₂の排出量が増えた主な理由

    2018 年の航空業界における CO₂排出量は 10 億 4000 万トンであり、世界全体の CO₂排出量の 2.5%を占めました。
    1990 年代から 2019 年頃までは航空分野のCO₂排出量が増加傾向にあり、背景には国際線利用者の増加・航空貨物需要の拡大があると見られています。たとえば、2010年代以降には LCC(格安航空会社)が普及したり、時代の流れと共に観光・ビジネスがグローバル化したことで、航空機利用の増加が後押しされました。

    参照:Our world in data「What share of global CO₂ emissions come from aviation? 」(最終アクセス 2026/5/19)

    さらに IATA(国際航空運送協会)の報告によると、2021 年の航空貨物量は前年から20%ほど増え、これは1990年以降で 2 番目の伸び率であることが明らかになっています。世界的に拡大したネット通販サービスなど、国境を越えた流通の加速が一因といえるでしょう。
    一方で、航空機の燃費効率(同じ量の燃料で運べる人の数や貨物の距離)は改善の兆しを見せています。

    1990年には 1 人を 1 キロ運ぶため約 2.9MJ(メガジュール)のエネルギーが必要でしたが、2019年には約 1.3MJ(メガジュール)まで低下しました。しかし燃費改善による削減を上回るペースで航空需要が増加していることから、航空分野全体でのCO₂排出量は、依然として増加傾向にあります。

    参照: IEA(International Energy Agency)「Energy intensity of passenger aviation in the Net Zero Scenario, 2000–2030 」(最終アクセス 2026/5/19)

    SAFはなぜ次世代航空燃料として注目されている?

    カーボンニュートラルの実現に貢献する

    第 1 章で解説したようにSAFは、従来の航空燃料と比較してCO₂削減効果がある、地球環境にやさしい航空燃料です。
    廃食用油や微細藻類、木質バイオマスといった再生可能資源を原料とすることで、カーボンニュートラルの実現に貢献します。

    既存のインフラを利用することができる

    従来とは異なる新しい燃料が投入されると、既存の設備では受け入れられないケース(例:電気自動車や水素燃料など)が存在するなか、SAFは従来の航空燃料としての品質は同等の為、既存のインフラ設備をそのまま活用することができます。たとえば製造拠点(製油所など)においては、既存のユーティリティ設備等の一部インフラを活用できる場合があります。また輸送網には、従来の航空燃料を運んでいるタンカーやタンクローリーが利用できるため、同様の効果が期待されるでしょう。
    さらに貯蔵には空港に備えられている燃料貯蔵タンクや給油設備が使え、追加の設備投資が限定的になるという特長も持ち合わせています。

    給油においては、ASTM International(米国材料試験協会)の定める国際規格:ASTMD7566に適合することで、従来のジェット燃料と品質的に同等であることが担保されており、既存の機材と運用体制での利用が可能です。

    インフラの段階 利用可能性のある既存設備 メリット 
    製造 水素化装置・貯蔵設備・用役供給設備・出荷設備など 追加投資を抑制できる  
    輸送 タンカー・タンクローリー 
    貯蔵 燃料貯蔵タンク(空港設置) 
    給油(設備) 給油設備(空港設置) 
    給油(航空機) 航空機(ASTM D7566承認) 

    このように製造から輸送、貯蔵、給油に至るまで、既存の仕組みを活かせる点が SAF のメ
    リットであり、次世代燃料として注目される理由といえます。

    参照:経済産業省「持続可能な航空燃料(SAF)」(最終アクセス 2026/5/19),一般財団法人石油エネルギー技術センター 「カーボンニュートラル社会に向けた 製油所転換シナリオ検討 報告書」 (最終アクセス 2026/5/19)

    バイオ燃料の中でも注目が集まるSAF

    第 1 章でも解説したように、SAFの主な原料は生物由来の炭素で、広義の「バイオ燃料」の一部に含まれます。
    では「バイオ燃料」とは何でしょうか。
    まずはその定義を明らかにしておきましょう。

    バイオ燃料とは

    バイオ燃料とは、植物や廃食油、廃棄物などを原料として製造される燃料のことです。これらの原料となる植物等が、成長過程で大気中の CO₂を吸収することから、 カーボンニュートラルな燃料とみなされています。

    運輸部門におけるバイオ燃料の活用

    運輸部門におけるバイオ燃料の導入はこれまで、国内ではバイオエタノール(とうもろこし、さとうきび等から製造されたガソリン代替のバイオ燃料)の利用が中心でした。
    また、軽油代替として用いられるバイオディーゼル燃料は、自治体等が廃食油等を回収・精製し、自治体のバスや清掃車 等の燃料として利用されるなど、地産地消の取組としてこちらも活用が進みつつあります。

    持続可能な航空燃料であるSAF

    そしてバイオ燃料の中で、航空機の安全な運航のための国際規格(ASTM規格など)をクリアしたものが「SAF」と呼ばれます。 つまりSAFとは、「運輸部門における従来のバイオ燃料」に対し「航空分野に特化したバイオ燃料」という位置づけになります。

    参照:経済産業省「バイオ燃料の政策について」(最終アクセス 2026/5/19)

    【2選】SAFの課題

    1.製造コストの高さ

    SAF の製造コストは、従来の航空燃料(化石燃料由来)と比べて高いことが指摘されています。
    背景には、分散している原料(廃食油など)を回収・運搬するためのコスト負担が大きい点や、資材(設備部品・消耗品など)・人件費の高騰、大規模生産に必要なインフラが未整備であることが関係しています。現状では効率的な大量製造が困難であるため、量産効果によるコストダウンが進んでいないのが実情です。
    またICAO(国際民間航空機関)の報告でも、市場流通価格は従来の航空燃料(Jet A-1)の2~5 倍で取引されているとされており、この「化石燃料との価格差(グリーン・プレミアム)」をどう埋めるかが、国際的な共通課題となっています。

    参照:ICAO「 Bridging the Sustainable Aviation Fuel (SAF) Premium」(最終アクセス 2026/5/19)

    SAF の導入・普及拡大に向けては、各国および国際機関において制度設計を通じた取り組みが進められており、普及拡大に向けた基盤づくりの拡充が期待されています。
    たとえば、国際的にはCORSIA(国際民間航空機関による排出削減制度)により、SAFの導入が航空会社が排出したCO₂の削減に充てられる 手段(=排出量オフセット)として位置づけられています。
    また国内では、官民協議会による「SAF の導入促進に向けたロードマップ」 に基づき、政策支援や供給体制の整備が進められています。

    2.主要原料である廃食用油供給量に限りがある

    SAF は、廃食用油・微細藻類・木くず・サトウキビ・古紙など、多種多様な原料から製造されます。
    中でも、現時点で生産コストが最も安いと言われるSAF原料の廃食用油は、確保できる量に限りがあることが課題として挙げられています。
    廃食用油は、家庭や外食産業、食品関連工場等において、調理工程を経て初めて排出される油であり、発生量・回収量共に上限があるためです。

    図3:UC オイルのリサイクルの流れ図(令和3年度版) 出典:全国油脂事業協同組合連合会「 UC オイル(廃食用油) リサイクルの手引き[PDF]」(最終アクセス 2026/5/19)

    環境省の調査によると、回収拠点の設置等を実施している自治体は全国で549あり、全自治体の約3割ほどとなっています。しかし実情としては家庭用廃食用油のほとんどは廃棄され、回収が進んでいない状況です。

    参照:環境省「SAFの国産製造体制の強化に向けた 環境省の取組状況について」(最終アクセス 2026/5/19)

    一方で事業系(外食産業や食品関連工場等)における廃食用油の回収ルートはすでに構築されているものの、集められた廃食用油は飼料原料、工業・化学製品の原料、燃料原料(SAF以外)など多様な競合用途に分散されており、SAF製造に充てられる量には限りがあります(図3)。

    国際的な観点からは、SAF原料の偏りも指摘されています。IATA(国際航空運送協会)は、今後5年間に製造されるSAFの80%が廃食用油や動物性油脂などの原料から作られる見通しを示していますが、量に限りのある特定の原料に需要が集中することは、安定供給の難しさに繋がってしまいます。

    参照:IATA「Disappointingly Slow Growth in SAF Production」(最終アクセス 2026/5/19)

    こうした供給量の不安定さは、大量の燃料を必要とする航空分野にとって検討すべき課題に位置付けられています。
    課題解決には、国土交通省や資源エネルギー庁が中心となり、廃食用油の回収体制の整備や、海外を含めた原料調達ルート確立を検討しているほか、多様な原料を組み合わせることで安定供給を目指す取り組みも議論されています。

    参照:経済産業省 資源エネルギー庁「第2回 SAFの導入促進に向けた官民協議会説明資料」(最終アクセス 2026/5/19) ,「飛行機もクリーンな乗り物に!持続可能なジェット燃料「SAF」とは?

    また民間主導としては、企業や自治体、航空会社が連携する有志団体の「ACT FOR SKY」があり、国産SAFの商用化、普及、拡大に積極的に取り組んでいます。

    【最新動向】EUのSAF規制の動き

    SAFは依然として製造コストが高く、供給量にも限りや偏りがあります。
    EUはこのような制約と温室効果ガス削減目標を踏まえ、2023年に『ReFuelEU Aviation』規制を採択し、2024年1月に発効しました。
    ReFuelEU Aviationは航空燃料に一定割合のSAF混合を義務づけるものです。SAF混合比率は 2025 年に2%、2030年に 6%、2050年に70%まで段階的に引き上げられる方針とされています。

    参照:European Commission「ReFuelEU Aviation」(最終アクセス 2026/5/19)

    まとめ

    今回は、次世代燃料として注目されているSAF(Sustainable Aviation Fuel)の基礎知識について解説しました。

    サステナビリティ ハブ編集部

    サステナビリティ ハブ編集部

    サステナビリティ ハブは、日揮ホールディングス株式会社が運営する、企業のサステナビリティ活動を支援するオウンドメディアです。SDGsの達成に不可欠なソリューション、国内外の先進的な事例、サステナビリティ経営のヒントなど、課題解決に繋がる多様な情報を発信しています。長年、プラントエンジニアリングや社会インフラ構築に携わってきた日揮グループの知見を活かし、専門性を持ったメンバーが信頼性の高いコンテンツをお届けします。

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