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【わたしの仕事と日常 #01】廃プラスチックから水素をつくる(仕事編)

インタビュー 企業×サステナビリティ 働き方 日揮グループの紹介 再生可能エネルギー カーボンニュートラル
目次

日揮ホールディングス(以下、日揮HD)では、サステナビリティ関連の新事業の創造を担うため、2019年10月にサステナビリティ協創部(現サステナビリティ協創オフィス)を創設しました。今回の記事では、サステナビリティ関連の新規事業の創出に向けて奮闘する若手社員に、その事業内容や実際の業務、やりがいを感じる瞬間などについて話を聞きました。 (インタビュアー:サステナビリティハブ編集部) 

新事業「廃プラスチックからの水素製造」とは?

――初めに、前川さんの入社後の経歴を簡単に教えていただけますか。 

2020年に入社し、グループ財務部に配属されました。3年間の業務経験ののち、2023年7月にサステナビリティ協創オフィス(以下、SCO)に異動してきました。 


――現在、SCOではどのような業務に携わっているのでしょうか。 

廃棄されたプラスチックを原料にして水素を製造する、「廃プラスチックガス化 水素製造事業」のメンバーとして事業開発に取り組んでいます。 


――なぜ今、廃プラスチックからの水素製造事業への取り組みを進めているのか、事業を取り巻く状況とあわせて、詳しく教えていただけますか。

現在、「2050年カ―ボンニュートラル」という目標に向けて、国を挙げて取り組みを進めていますが、その中でも重要な施策のひとつとされているのが「エネルギーとしての水素利用」です。そのため、多くの企業が化石燃料を水素に置き換える動きを進めており、水素の需要は今後ますます高まっていくことが予想されます。

一方で、日揮グループはかねてから、廃プラスチックをガス化し、化学品や化学製品として利用できるメタノールやアンモニア、プロピレン、オレフィンなどに転換する「ガス化リサイクル」事業を推進してきました。そこで今回、このガス化の技術と経験をいかし、合成ガスから水素を製造しオフテイカー*に販売する新事業の立ち上げを図りました。 (*オフテイカー:プロジェクトカンパニーが生産製品を販売する相手方のこと)

当社の技術では、汚れや不純物が混入した難リサイクル性プラスチックでも、石油由来のバージン品と同等の化学原料にリサイクルが可能です。そのため、「廃プラガス化水素製造」事業を通して、水素社会の実現だけでなく、廃プラスチックのリサイクル率の向上や、高度循環型社会も実現できると考えています。 


――事業を進める中で前川さんは具体的にどのような業務に取り組んでいますか。

原料調達の候補先や事業パートナーとの契約書作成、事業で製造する水素のLCA(ライフサイクルアセスメント)の計算など多岐にわたりますが、業務の中心となるのは、国の値差支援制度*の獲得に向けた取り組みです。(*値差支援制度:水素の消費地価格と既存の化石燃料価格の差分を支援する制度)

事業の推進には値差支援制度の適用を受けることが欠かせませんが、そのためには、国に対して「廃プラスチックから製造される水素が低炭素であること」を証明する必要があります。ですが、すでに製造が開始されている“ブルー水素”や“グリーン水素”とは違い、「廃プラスチックからの水素製造」は、まだ世界でも実現した例がないため、低炭素であることが証明されていませんし、国内では低炭素を証明するためのLCAの計算手法も確立されていません。

そこでまず、水素のLCA計算手法を規定するISO19870*に、我々が提唱している「廃プラスチックからの水素製造におけるGHG排出量の計算手法」を入れ込み、国際規格として確立させたうえで、それを根拠として国内でも低炭素性を証明する、というシナリオで動いています。そのため業務では、ISO規格に入れる文案の作成や行政への説明資料の作成なども担当しました。(*ISO19870:水素の製造・貯蔵・輸送に係るGHG排出量の計算手法を規定)

業務における苦労とやりがい

――業務を進める上で、苦労したことや大変だったことを教えてください。

「低酸素性の証明」に向けて、現在国際的に策定中のISO19870のドラフトや廃プラスチック水素製造の海外規格を読み込む必要がありましたが、その内容をひとつひとつ理解していくのが一番大変でした。私は文系学部出身のため、技術を理解するために必要な知識もなかったですし、水素業界や低炭素性についての前提知識も持ち合わせていなかったので、苦労しました。


――何の下地もないところから技術や業界の知識を積み上げていくのが大変なのは想像がつきます。そのハードルをどのようにして乗り越えたのでしょうか。

沢山の資料を読んでインプットし、チーム内でアウトプットすることを繰り返しました。疑問点がある時は曖昧のままにせず、ひとつひとつクリアにしていくことを意識しました。それでも分からない部分はチーム内だけでなく、部内の関連する知識を持った方々に教えてもらい理解を深めてきました。今も日々学んでいるところです。


――仕事のやりがいを感じるのはどんな時ですか。

廃プラスチックから水素を製造するという新規性のある事業の実現可能性が少しずつ高まっていることを実感したときに、大きなやりがいを感じます。今年の1月には、ISO19870に本事業の水素製造方法を入れ込むための国内審査を突破することができました。「低炭素性の証明」が事業推進の鍵となっている中で、これは大きな一歩です。これまで関連しておこなっていた業務の成果が形となって現れたともいえる出来事だったので、とても嬉しかったですね。

新規事業開発の面白さとは? 

――SCOの前は財務部にいたそうですが、財務部とSCOでの業務を両方経験してみて違いを感じるのはどのようなところですか。

財務部の仕事は、決められた仕事を決められた期限内に正確に提出するというゴールがあります。それに対してSCOでの仕事は新規事業開発という性格上、ゴールまでの正解はひとつではなく、明確にゴールが決められていない業務も少なくありません。この違いに最初のうちは少し戸惑いました。

例えば、低炭素性の証明においても、「国の支援獲得」という大きなゴールはあるものの、そこまでの道のりには色々な方法が考えられます。どれが正解かは決まっていないので、適切なシナリオを設定して取り組んでいく必要があり、それが難しいところでもありますね。 


――SCOでの新規事業開発の仕事の面白さや魅力について教えてください。

財務部は決算期をマイルストーンとして弊社の財務情報を正確に報告するという任務があり、取り組むべき任務、スケジュールが正確に定まっていますが、SCOでの業務は、自ら目標を定め、そこまでのシナリオを一つ一つ考えて進めなくてはいけません。その点では難しさを感じますが、同時にその達成に向けて常に新しいことを学び、挑戦できるところに面白さを感じています。

文系職としてSCOで新規事業に関わるという意味では、事業パートナー、原料調達先、水素のオフテイカーの方など、社内外問わず色々な人と社会に必要とされていることを実現していけるのが魅力ですね。入社4年目というまだ経験の浅い立場で、新規事業開発という幅広いビジネススキルや専門性を必要とする仕事に深く携われているところにも大きなやりがいを感じています。

まとめ

今回の記事では、サステナビリティ関連の新規事業「廃プラスチックからの水素製造」の実現に向けて奔走する日揮HDの若手社員に、仕事の内容ややりがい、新規事業開発の面白さなどについて聞きました。次回の記事では、学生時代や、プライベートの過ごし方などについてのインタビュー後半をお届けします。是非ご覧ください。

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サステナビリティハブ編集部
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